【ホンダ N-BOXスラッシュ 発表】“ファンキーチョップトップ”がいかにして生まれたのか…開発物語

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開発責任者の浅木泰昭氏
開発責任者の浅木泰昭氏 全 16 枚 拡大写真

意外に女性に受けたことで、量産化を真剣に考え出した

2011年の『N-BOX』のデビューからホンダの「Nシリーズ」は好調に販売を伸ばしてきた。

「そうなると当然、競合メーカーさんが、そのまま見ていてくれるとも思えない。N-BOXを抑えにくるであろうという予測の元に、新しいクルマをもう一台用意したいと悩んでおりました。既存のNシリーズの中で喰いあうようなクルマではしょうがない。新しい価値がないかというのを模索していました」と浅木泰昭氏は新型車『N-BOXスラッシュ』誕生のバックボーンを説明する。浅木氏は、N-BOXに引き続きN-BOXスラッシュでも開発責任者を務める人物だ。

そんな浅木氏に、長谷川と山口という二人のデザイナーが「N-BOXのルーフを低くカット(チョップトップと呼ぶ手法)してクーペスタイルにする」というアイデアを提案した。

「私は、それを見て、たぶんこのクルマは量産まで辿り着かないだろうなと思っておりました。ところが、そのモデルを鈴鹿などに持っていって、従業員に見せたところ、若い女性に熱狂的な支持者がいたんですね。だいたい私くらいの、アメリカをテレビドラマで親しんだ年代には、このクルマは受けるであろうと想像できたのですが、“こんなに若い女性にも受けるのか”ということで。ショーモデルみたいなクルマだけど、これをなんとか世に出せたら、新しい価値が開けるのではとチームを発足しました」と浅木氏。

◆本場アメリカでの調査を実施

プロジェクトチームが発足するものの、提案者の一人であった長谷川氏は欧州へ赴任。代わりにエクステリア担当に根本知幸氏、カラー担当の半澤小百合さんの二人がチームに加わった。

「アメリカン・カスタムなのに、二人ともアメリカに行ったことがないと。道理で、なかなか話が通じない。これはマズイ!ということで、アメリカに出張に行きました」

アメリカで待ち構えていたのは現地の研究所のデザインのトップであった。彼は「アメリカ人も知らないようなディープな世界を見せてやる」と、T型フォードをチョップルーフにしてV8エンジンを載せるようなカスタムショップに案内してくれたのだ。そこでのモノ作りにこだわるアメリカ人の姿に二人のデザイナーは大いに感銘を受けたという。

「帰ってきたら、ぜんぜん違う世界観を提案してくれるようになった。本当に良かった」と浅木氏。デザイナーをアメリカに連れて行くという狙いは見事に当たったのだ。

帰国後、プロジェクトチームは「ファンキーチョップトップ」というコンセプトを決めた。

「そういうコンセプトにするのは、チームが迷ったときは、この言葉に従うということ。会議でも“お前のその意見は、ファンキーじゃないだろう”というような攻められ方をするんですね。たぶん、チームのみんなも入社以来、初めての攻められ方じゃないかと思います」と浅木氏。

ターゲットカスタマーに定められたのは、「小さな子供のいない世代」。つまり、スライドドアも自転車搭載も必要ない。その中で、特にファッションやサウンドに興味を持つ層を狙ったという。

N-BOXスラッシュは綿密なマーケットリサーチの結果から生まれたクルマではない。もちろん前例もない。ある意味、浅木氏の勘と度胸が誕生させたクルマと言っていいだろう。

「みんなが“ない”と思っているところに踏み出すのがホンダだし、それをやらなきゃホンダの価値がないと思っているので。そうすると絶対大丈夫はないですよね(笑)。みんなの気づいていない価値を提供するのですからね」と浅木氏。

新しい価値を提案するのが「ホンダらしさ」といえば、確かにN-BOXスラッシュほどホンダらしいクルマは、なかなかないだろう。

《鈴木ケンイチ》

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