【ホンダ ヴェゼルハイブリッド 1700km 試乗前編】リコール前後で乗り味は変わったのか…井元康一郎

試乗記 国産車
ホンダ ヴェゼルハイブリッド 1700km 試乗
ホンダ ヴェゼルハイブリッド 1700km 試乗 全 13 枚 拡大写真

ホンダのコンパクトSUV『ヴェゼルハイブリッド』を1700kmにわたってテストドライブする機会があったのでリポートする。

ヴェゼルは同社のコンパクトカー『フィット』をベースに作られたSUVで、1.5リットルガソリン+CVTと1.5リットルガソリン+DCT(デュアルクラッチ式自動変速機)ハイブリッドの2種類のパワートレインがある。エンジンはCVT版で131馬力、ハイブリッド版で132馬力と、排気量1リットルあたり80馬力台後半を発生する高出力型。ハイブリッドの場合、バッテリー出力とエンジン出力を合算した最大値は152馬力に達する。試乗したのはリコール前後とも、お洒落な2トーンカラーのインテリアを特徴とする「Z」グレード。走行抵抗の大きなスポーツタイヤを履いているため、JC08モード燃費は24.2km/リットルと、ベーシックグレードに対して1割ほど落ちる。

◆リコール前後で乗り味は変わったのか

まずは度重なるリコールで話題になったハイブリッドシステムについて。昨年のゴールデンウィークに1100kmほどドライブしたときには1回リコールを経ていたが、埼玉、群馬から長野に至る国道299号線の急勾配区間で発進しようとしてもクルマが前に進まなかったり片輪をホイールスピンさせながらスタートしたりといった症状がいとも簡単に出現し、クルマのインプレッションをする段階になかった。

さらに追加リコールを経た晩秋にふたたびヴェゼルを600kmほど走らせたところ、制御の未成熟さは大きく改善されていることが確認できた。以前はリコール症状が出ていないときでも、低いギア段で必要以上に高回転まで引っ張ったり、逆にスロットルを踏んでも一呼吸遅れて加速したりと、良い動きをしなかった。変速そのものも節度感に欠け、レスポンスのよさと節度感の良いシフトフィールが身上のDCTを使う意味がさっぱりわからないというのが率直な感想だった。

最新のリコール対策済み車両は、少なくとも600km走った限りにおいては、以前のような異常な動きは顔を出さず、クラッチ式変速機に宿命的について回るスナッチ(ガクガクした動き)も最小限に抑えられていた。大幅に良くなった点として特筆すべきはシフトフィールで、速度が上がる中で“クン、クン”と、DCTならではの明確で気持ちの良い変速インフォメーションを伝えてくる。

モーターアシストも以前とはやや異なるフィーリング。初期型はモーター1個のパラレルハイブリッド方式でありながら、トヨタの2モーター式シリーズパラレルハイブリッドのようなフィーリングを与えようという意図があったのか、エンジンとモーターのパワーの出方が不明瞭で、ドライバビリティはあまり良くなかった。

それに対してリコール対策済みユニットは一転、エンジンを基本にモーターがアシストするというパラレルハイブリッドらしい素直で気持ちの良い動作になった。最初からこのレベルまで煮詰めてリリースすれば、ここまで評判を落とすことはなかったろう。ちなみにこのチューニングはヴェゼルの1.5リットル直噴+DCTハイブリッドの組み合わせ特有のもので、高効率をうたう1.5リットルアトキンソンサイクルエンジン+DCTハイブリッドの『グレイス』は今も昔の動きに近い。

リコール後に試乗したときの燃費は計測区間575kmで燃費計表示19.5km/リットル、実測19.2km/リットル。混雑が少なかった半面、EV走行状態を積極活用するようなエコランはほとんどやらなかったわりにはそこそこ数字が伸びたという印象だった。エコカーとしては不満が残るが、SUVとして見れば満足度が高いといったところだろう。

ちなみにゴールデンウィークの1100km試乗のさいには埼玉・本庄-東京・葛飾の93kmでマイルドにエコランをやってみた。後続車に迷惑をかけるような発進、クルーズは避けつつ、クルマのエネルギーコントロールに注意しながら走ったところ、燃費計表示24.6km/リットル、実測24.1km/リットルというスコアであった。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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