【クラウドカーナビ最前線】提携で自動車ビッグデータビジネスの鉱脈探る…パイオニアとトレジャーデータ

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パイオニア カーエレクトロニクス事業統括部 ティレマティクス事業部 事業企画部 岩堀耕史氏
パイオニア カーエレクトロニクス事業統括部 ティレマティクス事業部 事業企画部 岩堀耕史氏 全 4 枚 拡大写真

2014年9月、車載器大手のパイオニアと米国シリコンバレーに本拠を構えるトレジャーデータは、自動車業界向けのビッグデータ関連事業において業務提携を行うことに合意した。

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発表時のプレスリリースによれば、「パイオニアが展開している自動車向けクラウド基盤上のビッグデータ活用において、クラウド型データマネージメントにおける高い実績と優位性を持つトレジャーデータの技術を採用し、新しいテレマティクスサービスの提供を目指す」とある。

両社はそのコラボレーションにより、どのような“データ”を蓄積し、どのような“新しいテレマティクスサービス”の提供を目指すのか。両社の協業において主担当を務めるパイオニア ティレマティクス事業部岩堀耕史氏と、トレジャーデータのマーケティング担当ディレクター 堀内健后氏の両名に話を聞いた。

◆自動車ビッグデータサービスプラットフォームの構築めざす

----:トレジャーデータの設立経緯と業務内容について、まずはご説明ください。

堀内:当社は、2011年12月にカリフォルニアで日本人3人が立ち上げたベンチャー企業です。「トレジャーデータサービス(Treasure Data Service)」と呼ぶデータ蓄積に特化したクラウド型サービスを提供しており、米国で40人あまり、日本では20名あまりの従業員が籍を置いています。当社は、データの蓄積と収集、そしてデータを分析するための計算リソースを提供しています。それらの分析結果を可視化する、いわゆるBI(Business Intelligence)ツールはさまざまな会社でご用意されているので、私どもでは敢えて作らず、柔軟性が高くデータの保存方法に制約がない自社開発のデータベース「Plasma(プラズマ)」を利用して、データ収集・保存の即時性を高めています。

----:今回の提携の経緯は。

岩堀:当社では2006年より、「サイバーナビ」などを搭載するクルマからアップロードされた走行情報から交通情報を生成してプローブの交通情報を提供する「スマートループ」をサービスしています。今回の提携は、これまでのスマートループの延長線上とは異なる視点からアプローチして、新しいテレマティクスサービスの提供を目指すものです。そのために、まずは情報を蓄積するための基盤が必要でして、大量のデータを貯めて分析できるような場とダイレクトにつなげる必要が出てきましたので、トレジャーデータさんと連携できないかという話に至りました。今後自動車の周辺技術は大きく変わっていくので、トレジャーデータサービスを活用していくという短期的な話というよりも、トレジャーデータさんの強みである拡張性を自動車のビジネスでも活かしていけるだろうというところで「中長期的に取り組んで行きましょう」という話になりました。

堀内:当社は、これまでデータを蓄積することに特化していた分、業務だったりお客様の業界に特化した提案をする力は弱かったというのが正直なところでした。IoT(Intenet of Things)への進出を強化していくにあたり、今回の協業でパイオニアさんに当社の強みを理解していただいた上で中長期的な取り組みを行えるということは非常に嬉しいですね。この協業をいかに成功させるかが重要なミッションになっています。

◆今後は新たなパートナーやコラボレーションの発表も

----:「スマートループの延長線上とは異なる視点からアプローチ」とのことですが、どのようなデータの収集を考えているのでしょうか。

岩堀:今回の協業で重要なのは、「プラットフォームをともに作っていく」ということです。データの中身については成約はありません。それはクルマの情報だったり、スマートフォンの情報だったりするかもしれません。取得するデータを垂直型にクローズしたくなかったので、柔軟性のあるトレジャーさんとの協業を選択したのです。あくまでもカーライフをベースにしていますので、サービスの核心はクルマに置きますが、情報を活用した利用シーンのニーズがクルマの外にあるのであれば、対応する可能性もあります。

振り返れば、天気とか渋滞とか、あるいは駐車場の満車空車情報が得られるとか、自動車メーカーを中心とした“垂直型テレマティクス”がだいぶ前に流行しました。しかしそれは自動車あるいはナビという、商品の価値を高めるために通信を使うという目的があり、そこで得られるユーザーの体験価値は“利便”の面にとどまっていました。私たちが今からやろうとしているのは、自動車のライフタイム全体においてデータを収集し、そのデータを用いて自動車のライフタイムバリュー全体を向上させることを最終的な形態にしたいと考えています。ただ、パイオニア単独でそういったサービス全てを提供していくのは困難です。たとえば保険なのかも知れないし、整備業者かも知れませんが、各社さんが持っているサービスやコンテンツをユーザーに遠隔で24時間365日提供できるように、この基盤に集めていこうという狙いです。

----:これまでのテレマティクスの範疇を超える大きな構想ですね。

岩堀:今回の発表だけでなく、今後は新たなパートナーやコラボレーションの発表をしていきます。こちらからお話しを伺うこともありますし、興味関心をいただいたところからはぜひお声を掛けていただきたいと思います。

◆IT視点で自動車業界を見る

----:トレジャーデータの顧客はこれまでWebやITなどが多く、製造業の事例は少ないとのことですが、これまでと勝手が違う感覚はありますか。

堀内:おっしゃる通り、これまで当社の実績はWebやスマートフォンアプリのログなどが大多数でした。というのは、Webオンリーだとお客様と直接対峙して反応を見るということができませんので、データを大事にします。ログでしか分かりませんから。しかし私どもとしては、こうしたデータドリブンの発想は、実社会でも活用できるものだと思っていて、パイオニアさんのような理解ある製造業の企業と組ませていただくことで、われわれのポテンシャルをより引き出していただけるのではと考えています。

----:昨今IoTの話題が盛んですが、御社にとってみても製造業とITには隔たりがあったと。

岩堀:トレジャーさんのように、ITの視点から自動車業界を見ている方と話をしていると、ITの力で解決できることはもっとあるのではないかと思えてきます。とくに自動車は、クルマというモノがまずあって、そこに付帯するものが非常に多い。実際にカー用品に行かなければ、ディーラーに行かなければ自分の付けたいパーツが付くか分からないといったアナログなところがありますから。

----:先ほど「プラットフォームを作っていく」とのことでしたが、アフター業界でのビジネスとなると自動車メーカーやディーラーとも競合になりえませんか。

岩堀:私どもとしては、このプラットフォームを活用して、ゆくゆくはエンターテインメントの分野に活用していきたいのです。クルマから離れている時でもバリューを自動車メーカーさんとは違うアプローチでやっていければ。

----:究極的には自動運転のプラットフォームになるようなビッグデータの収集も視野に入れているということでしょうか。

岩堀:活用先はアイディア次第だと思います。自動運転も想定にはありますが、それに行き着くまでには経なければいけない段階がいくつもあります。運転支援そして、路車間・車車間協調、さらに自動運転という流れになると思いますが、さまざまなドライバーの過去の運転履歴情報がクラウドにあった場合に、これらのデータベースを参照・協調することによっていまのドライバーの運転を支援するといった方法も考えられます。また、自動運転が実用化されるとドライバーはドライブ中の運転のストレスから解放されていくでしょう。ドライブ中の移動を楽しむ時間がもっと増えていく。そういう時間をマーケーティングしていく、という発想もありますね。

十分なポテンシャルを秘めた協業先

----:業務提携の発表で触れられていたクラウドテレマティクスプラットフォームの「モバイルテレマティクスセンター」は、すでに稼働しているのでしょうか。

岩堀:すでに稼働してます。ただ、現状はフレームを作っている状況で、センターに集積・集約したデータを使って市場に出て行くタイミングは、活用いただく事業者と一緒に発表していきます。お客様のご要望に合わせて様々なソリューションを提案します。

----:モバイルテレマティクスセンターで扱うデータは、すでにパイオニアで運用しているスマートループとは別の扱いと言うことでしょうか。

岩堀:スマートループのデータは、クローズな環境において弊社で活用していますので、モバイルテレマティクスセンターとは別のものと考えていただいて結構です。

----:提携先をトレジャーデータを選んだことによるパイオニア側のメリットはどの部分にあるとお考えでしょうか。

堀内:われわれは業務アプリケーションのレイヤーには行き切れていない、というかその方向には行きません。世には数多くのITベンダーがPaaS(Platform as a Service)やSaaS(Software as a Service)を提供していますが、クラウドの世界でも、安価かつ高いパフォーマスを発揮させるためにニッチで高スペックのものを組み合わせるキュレーションというか編集力の重要性が注目されています。当社はログやテレマティクスのような時系列データについては、項目が増えても量が大量になっても高いパフォーマンスを維持できるという強みがあります。

岩堀:今回の提携の大前提は、いま世にあるテレマティクスのソリューションやサービスに囚われることなく、さまざまな事業者がやりたいことを柔軟にサービス設計していくプラットフォームを構築することにあります。当社はハードウェアを作れるノウハウと設備を持っていますが、クライアントに合わせてサービスをスクラッチで作っていくのはコストも時間もかかってしまいます。様々なハードウェアやデバイスから、様々な種類の新しい情報が入っていますが、そのデータをため込む場が必要になってきます。そこで、柔軟に後からデータベースを再設計せずとも項目を容易に追加でき、新しい分野の対応にフルパッケージで対応できる柔軟性をもつトレジャーデータを選んだのです。その意味で(トレジャーデータは)十分なポテンシャルを秘めた協業先だと思います。

堀内:そう言っていただけると心強いです(笑)。

《まとめ・構成 北島友和》

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