【池原照雄の単眼複眼】要望が高いのは高圧水素タンク? トヨタのFCV特許提供

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トヨタ MIRAI
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「グローバルに水素の時代を推進」と、同業他社も高く評価

トヨタ自動車が1月6日に発表した燃料電池車(FCV)に関する特許権の無償提供は、自動車産業の新年の話題をさらった。同日都内で開かれた業界の賀詞交歓会でも、記者団の取材はもっぱらこれに集中した。特許権の提供がどのように展開するかは未知数だが、重要コンポーネントでありながら共通化も図りやすい「高圧水素タンク」への要望が高いのではと推測している。

「グローバルに水素の時代を進めようということであり、さすがトヨタさんと、懐の深さを感じる」。トヨタのハイブリッド車(HV)技術を導入しているマツダの小飼雅道社長は、賀詞交歓会の会場でこう話した。自動車メーカー各社のトップは同様にトヨタの決断を歓迎していた。もっとも自社の対応となると、すでに外国メーカーと提携してFCVの共同開発に乗り出しているところもあり、各社とも現時点では「白紙」としか答えようがない。

◆『MIRAI』のコピー版が早期にできる

トヨタが開放するFCVの特許は約5610件(このほか水素ステーション関係が70件)にのぼり、無償提供の期間は同社が「市場導入初期」と見込む2020年末くらいまでと想定している。供与の要請があれば、トヨタはその範囲や無償後の費用などを個別に協議していくという。全体のうち、心臓部の燃料電池スタックに関するものが約1970件、高圧水素タンクが約290件、さらに燃料電池システム制御関係が約3350件となっている。

FCV技術のほぼ一式が揃うので、電気自動車(EV)やHVなど電動車を手掛けた自動車メーカーなら「MIRAI(ミライ)」のコピー版を早期に造ることができるようになるだろう。ただ、燃料電池スタックについては、内外の大手メーカーが研究開発に相当な年月と資金を費やし、蓄積があるところが少なくない。スタックは競争力の源泉ともなるテクノロジーなので、多くが自前主義を貫く分野となろう。

◆水素タンクでは日本大手による提携の模索も

これに対し、安全に直結する重要コンポーネントでありながら、比較的共通化が図りやすいのが高圧水素タンクだ。トヨタはこの分野でも生産技術を含め、先頭を走っている。14年8月には、自社でタンクの検査が可能な製造者認証を経済産業大臣から得ている。それまでは外部機関による検査が必要で、生産性向上の足かせにもなっていた。

FCVをめぐっては、約2年前に日本の大手メーカー同士による提携交渉の情報に接したことがある。予定稿も書いて備えていたのだが、このうちの一方が外国メーカーとの提携に踏み切ったため、「幻」と消えた。この当時、一方の担当役員から聞いた提携の関心事のひとつが高圧水素タンクだった。炭素繊維強化樹脂などの素材、さらに生産技術面でも「非常なコストがかかる」ため、まず素材の共通化や共同調達などができれば、と話していた。

このような経緯からも、幅広い特許案件のうち、こと高圧水素タンクでの協力が進むのではないかと推測する。単独の自動車メーカーのみならず、FCVで手を組んだ世界の大手連合からトヨタにオファーがあってもおかしくはないと見ているが、果たして…。

《池原照雄》

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