新フィアット・クライスラー、個性派ブランドで「ドイツ勢を越える」…FCAの戦略とは

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FCAジャパン ラインアップ
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アルファロメオ、クライスラー、フィアット、ジープ、アバルトという個性的な5ブランドを展開するFCAジャパン。「フィアット グループ・オートモーティブ・ジャパン」と「クライスラー日本」が統合され、2015年1月1日から新たに誕生した新会社だが、日本の輸入車マーケットはドイツ勢が圧倒的な地位を築いている。付け入る隙はあるか、FCAの今後の展開に迫る。

◆個性を全面に押し出したラインアップ

2014年の販売台数を見ると、1位から順に、VWグループ(VW+ベントレー)、BMWグループ(BMW+MINI)、メルセデス・ベンツ・グループ(メルセデス・ベンツ+スマート)、アウディグループ(アウディ+ランボルギーニ)が占め、非ドイツ系であるFCAは、5番目というポジションに位置する。

5番目といっても依然上位とは3万台近いギャップがあり、その差を埋めるのは容易ではない。FCAジャパン広報の黒岩真治氏は「我々はジープのような個性の強いSUVや、エモーショナルなデザインのイタリアン・コンパクトをラインアップに持っており、個性で差別化できると考えている」と、ドイツ勢との違いを述べる。

FCAの顧客は、国産車からの乗り換え組に加え、若者や女性が多いのが特徴だ。しかし、ブランドごとの共通項はあまり多くはない。ブランド間のシナジーは産み出せるのか。黒岩氏は「インポーターとしてある程度規模が出てくるので、カスタマーサポートやノウハウの共有など、スケールメリットを生かした強い体制で動くことができる。ただ、ブランド毎に個性が異なるので、ブランド間のミックスはすべきではないと考えてえている」と述べ、提携効果よりもブランド同士の個性を尊重する戦略をとる。

◆歴史や背景を断ち切ることなく、グローバルカンパニーへ

FCAは現在、日本で5番目、世界で7番目の自動車グループとなったが、「FCA」という名称ははあまり認知されていない。フィアットの設立は1899年、クライスラーの創設は1925年と、両社ともに長い歴史を持つグローバルカンパニーであるにもかかわらず、歴史ある名を廃してまで、FCAを社名とした理由はどこにあるのだろうか。黒岩氏は言う。

「もちろんFはフィアット、Cはクライスラーだが、FCAは、歴史や背景を断ち切ることなく未来を見据え、グローバルなビジネス展開をしていくという意味が込められている。ロゴはイタリアで1番と言われている最大手の広告代理店の、最高のクリエイターがデザインをしており、Fは正方形、Cは円、Aは三角をモチーフにしている。それぞれが具体性と堅実さ、調和と継続、エネルギーと絶え間ない進化を表現している。まずは、FCAという3文字が、5つの個性的なブランドを有しているというのを知ってもらいたい」(黒岩氏)

◆グローバルで700万台、ジープブランドから真のプレミアムSUVも登場

FCAは、2018年までに700万台を売る自動車メーカーへ成長すると、世界に向けて宣言している。この数値には、マセラティやフェラーリなどが該当する「ラグジュアリー・パフォーマンスブランド」の成長も含まれているが、中でも重要になってくるのはジープ・ブランドである。

ジープの販売台数は、一昨年70万台だったのに対し昨年は100万台まで成長した。これは、元々の主戦場だったアメリカ・ヨーロッパに加え、アジアでの急成長が要因である。FCAは700万台達成のために、ジープの世界販売をほぼ倍の190万台まで引き上げる計画だ。黒岩氏は「マーケットとしては、アジア・パシフィック地域をさらに注力し、日本でも非ドイツ系の1番ではなく、ドイツメーカーを凌駕する存在になりたい」と述べる。

190万台達成のために、FCAは昨年小型SUV『レネゲード』をグローバルに投入した。日本にも今年の夏から秋にかけて導入予定で、世界的に小型SUVの需要が高まっている中、フィアットが販売する小型SUV『500X』とともに両ブランドの販売台数に大きく寄与するだろう。ちなみに両車共通のプラットフォームを使用しており、こういったところに合併のシナジーが表れている。

さらにFCAは次の一手も準備中だ。現在のラインアップには存在しない『グランドチェロキー』よりさらに上級の、真のプレミアムSUVも出す計画があるという。マセラティは現在、『レバンテ』と呼ばれるプレミアムSUVを開発中であるが、同車との関係は明らかにされていない。しかしながら、フィアットとクライスラー、両社の提携の効果はなんらかの形で現れると推測される。

《橋本 隆志》

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