【ダイハツ ムーブ 試乗】ベンチマークはVW ポロ、乗り心地はしっかり…青山尚暉

試乗記 国産車
ダイハツ ムーブ X SA
ダイハツ ムーブ X SA 全 9 枚 拡大写真

軽自動車の走りの質感という意味で歴代がハイトワゴンクラスをリードしてきた『ムーブ』が6代目に進化した。

エッジとボディーサイドの抑揚の効いた空力にも優れる(CD値は先代の0.334から0.305で『ミライース』と同等)上級感あるエクステリアは今回、カスタムからデザイン。バックドアが横開き式から一般的な縦開き式になったのは、ユーザーの要望からだ。当然、軽量化も徹底し、志高く、小型車に迫る走りを目指したという。開発のベンチマークは何と欧州コンパクトの代表格であるVW『ポロ』と宣言する。

ラインアップは標準車、カスタムに加え、カスタムをさらに先鋭化したハイパーを用意するのも新型の特徴だ。

ここではムーブXに試乗した。運転席に乗り込み、まず感動できるのは先代の不満点だったステアリングとペダルの位置関係が改善されたこと。先代はドラポジをステアリングに合わせるとペダルが近すぎる…といった不自然さがあったのだ。つぎにシートの掛け心地。先代はシートバック低めで、体形によっては肩がまったくホールドされなかった。しかし一新された新型のシートは大型のフレームを用い、背中、肩が包み込まれるような上質な掛け心地、サポート感が得られるようになった。

Aピラーは太めに見えるが、斜め前方の死角が気になるほどでなく、むしろ強固なボディーを思わせ、安心感に直結するはずだ。

後席頭上スペースは先代同等。膝回りスペースはやや狭くなった印象だ(ひざ回り方向なら『ワゴンR』のほうが広い)。とはいえシートクッション長は先代より長く、掛け心地を優先したパッケージングとなっている。さらにシートクッション外側が柔らかく、腰を滑らせやすく、とくに降車性は抜群と言っていい。

走りだせば先代に対してダンパー、ブッシュを見直したという前後スタビライザー付きの(2WD)足回りがもたらす乗り心地は、ムーブらしく適度にしっかりした快適かつ上質なタッチを示す。開発陣によれば「30km/h以下の頭部のふらつきを低減した」とのことだが、実際、路面、速度を問わずフラットに徹(てっ)した乗り味が特徴的。視線の動きが少なく、長時間のドライブでも疲れにくくなるわけだ。

31.0km/リットルを発揮するNAエンジン、CVTともに先代からのキャリーオーバーだが、しっかり改良が施され、トルクは必要十分。エンジンを回せばそれなりの3気筒感あるノイズを発生させるものの、巡行中は想定外に静か。軽自動車らしからぬ上質なクルージングを可能にしてくれる。静粛性に関してはキャビン回りの穴を徹底的にふさいだことが功を奏したとのことだ。

パワステは標準車だけに終始軽めの扱いやすさ優先の設定だが、操舵(そうだ)フィールは軽自動車とは思えないほどスムーズで上質なタッチ。ちょっと気になったのはCVTセレクターの操作に節度がないことだろうか。

実用面ではすでに報告したようにバックドアの開閉方向を変更したことで、バックドアを開け雨宿りができるようになった!? ほか、エアコンがスズキのエコクール同様、蓄冷式になってアイドリング中でも一定時間、冷風が出てくるようになり、夏場の快適度が大きくUP。また、タント用フレームを使った後席が5:5分割で240mmスライドできるようになったのもポイントだ(先代は一体式)。3人乗車時に荷室に大きな荷物を載せやすくなるなど使い勝手は劇的に向上する。

さらにSAグレードの「スマアシ」もさらに進化。低速域衝突回避支援ブレーキ機能はもちろん、前方誤発進抑制制御に加え、後方の障害物を検知する、軽自動車初の後退誤発進抑制制御まで加わっている。

つまり、全方位で着実に進化したのが新型ムーブなのである。

ちなみに「スマアシ」の価格は5万4000円。安心安全のためにSAグレードを選ぶのもはや常識だろう。そして標準車+ターボという組み合わせも面白い。動力性能の余裕と乗り心地の良さ、最小半径4.4mの小回り性の良さ、そして派手すぎないルックスが同時に手に入るからだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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