【マツダ アテンザ 試乗】形を変えないフルチェンジの姿…中村孝仁

試乗記 国産車
マツダ アテンザ
マツダ アテンザ 全 12 枚 拡大写真
マツダ『アテンザ』がマイナーチェンジされた。現行モデルに乗っているユーザーには大変申し訳ないが、そして姿もエンジンも変わっていないが、その内容はフルチェンジに近い大変わり。これからアテンザにしようと思っている人は大いに得をすると思う。

試乗車はセダンのXDツーリング Lパッケージ。どこをどう変えてきたのか。外観の変更は僅か。とはいっても結構大胆な追加項目がある。見た目にはフロントエンドの意匠変更。クロームの使用が多くなって少しアップグレードされた印象だが、問題はヘッドライトにある。これは後述する。インテリアでは『デミオ』でやったのと同じ、白いレザー内装を新たに加え、併せてダッシュ周りのデザインを変更、大幅にグレードアップした質感を誇っている。とまあ、ここまでなら普通のマイチェンである。

ところが、装備を見るとこれが大きく変わっている。まず、マツダコネクトが付いた。これが採用されたことによって、携帯電話はブルートゥースで自動的にコネクト出来るから、仮に電話がかかってきても、いちいちポケットから携帯を取り出して通話開始の必要はなく、ステアリングに付く通話開始ボタンを押せばそれで済む。『アクセラ』以来導入されているこのメカニズムは、ナビをSDカードだけで済ますことが出来るが、そのナビの地図が今回から日本製に変わり、大幅に使い勝手が向上している。さらにHDDも従来の4GBから16GBへと大幅アップ。それだけでもユーザーが得る有り難さは大きなものなのに、ここから先はさらに凄い。

安全装備のi-ACTIVSENSEの進化である。従来からこれは装備されていたものだが、今回はブラインドスポットモニタリング、リア・クロストラフィック・アラート、ドライバー・アテンション・アラート、車速対応型のクルーズコントロール、そしてレーン・キープアシスト・システムに車線を認識してステアリングを切るシステムまで追加している。そして前述したヘッドライト。ついにアダプティブLEDヘッドライトが採用された。これはドライバーは常にハイビームにした状態を保っても、クルマの方で前方車や対向車を幻惑しないようその部分だけを減光するLEDアレイ方式グレアフリーハイビームを備えた。簡単にいうといくつかのLEDを部分的に消したり点けたりして、幻惑しないようにするシステムで、最新のメルセデスベンツ『CLSクラス』がこれを採用している。勿論日本車としては初のシステムだ。

とまあ、これだけ充実した装備を満載してきたことに加えて、走りの味も大きく進化しているのだ。具体的に何をやったかというと少々小難しい話になるが、フロントロワーアームのブッシュを車重がかかった状態で(すなわち1G状態)、アームがブッシュの中心に来るようにブッシュ自体の形状をやや偏心したものにしたこと。これによってフリクションが減らされてスムーズなダンパーの動きを可能にしている。やろうとしたことは、従来刺々しく入力されていたショックをマイルドにしてスムーズな乗り心地を実現しようというものだ。

人間は絶対に相対評価しかできないというのが持論の僕としては、新車に乗ったすぐ後に現行車に乗ることでその違いを確認した。ものの50mも走れば違いが分かるというご同輩がいて、そんなことあるものかとこれまでは思っていたが、今回の場合は本当にものの50mとは言わないが、走り出しの100mでその違いが実感できた。具体的にいうと、とがった棘のようなショックが入力されていた従来のクルマに対し、今回のモデルではそれがボクシングのグローブで軽くたたくような入力に変わっていたこと。つまりとがったところがひとつもない。これが高速になるとその違いは顕著で、実にスムーズな乗り味を実現している。

騒音の低減と振動の低減も大きい。とりわけ、ペダル付近とトーボードからの騒音の入力が減らされていると感じられた。エンジンに関しては基本的に大きな変更はなく、相変わらずモリモリとトルクが沸き上がる力強いディーゼルは、一度この太いトルクに慣らされてしまうと後戻りできない独特な乗り味を持っている。

レーンキープアシストに関しては、とりあえず装備しました的印象が強く、あまり明確には介入してこない。それが良いという人もいれば、もっと積極的に…と思う人もいるだろう。基本的にoffがデフォルトなのだから、ドライバーがそれを必要とする場合は敢えてonにする必要があるので、個人的にはもっとわかり易く強い介入の方がベターな気がする。

とまあ、外観こそ大きな変化はないものの、その内容的変化はあまりに大きく、ほぼフルチェンジと呼べる代物だった。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★


中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

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