マレーシア・アンワル元副首相の有罪判決が確定…連邦裁が禁固5年の控訴審判決を支持

エマージング・マーケット 東南アジア
マレーシアの首都クアラルンプール(イメージ)
マレーシアの首都クアラルンプール(イメージ) 全 1 枚 拡大写真

野党連合・人民同盟(PR)を率いる、アンワル・イブラヒム元副首相の2度目の同性愛事件に関する裁判の連邦裁判所判決が10日にあった。

連邦裁は昨年3月の控訴審判断を支持する判断を下した。これによってアンワル氏の禁固5年の有罪判決が確定する。

アンワル氏は最初の同性愛事件でも6年間収監されており、これが二度目の収監となる。1年以上の実刑であるため、下院ペナン州ペルマタン・パウ選挙区の議席を喪失する。

68歳という年齢からみてアンワル氏の政治生命はほぼ潰えることを意味する。一方で野党連合は、寄せ集めの所帯を繋ぎ止める強力なリーダーシップをもつ後継者選びが求められる。

アンワル氏は裁判所前に集った2000人あまりの支持者に対し「我々の未来のために自重しなければならない」「これが法の自由のために私が払った代償だ」「私の時間は終わった。お別れだ」などと事実上の引退宣言を行なった。

判決を受けて人権団体、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は「与党政府はアンワル氏が収監されれば野党連合が分裂すると考えている」と指摘。こうした裁判の茶番劇を許すことは、マレーシアの権利や民主主義に対する尊重を傷つけることにほかならないと批判した。

一方、首相府は「判決がすべての証拠に基づいてバランスをとって行なわれたものだ。マレーシアには法の独立性がある」と判決を評価する声明を発表した。

同事件は2008年6月にアンワル氏が助手のサイフル・ブカリ氏に同性愛を強要したと刑事告発されていたもので、2012年1月の第1審の高裁判決は唯一の物的証拠であるサイフル氏から検出された精液のDNA鑑定能力に疑問を呈してアンワル氏を無罪としたが、2014年3月の控訴審判決は証拠能力を認めて禁固5年の逆転有罪を言い渡していた。

控訴裁判決に不服のアンワル氏弁護団による連邦裁での審問は同年10月28日に開始され、延長に次ぐ延長で11月7日にようやく結審したが、連邦裁はさらなる検討が必要だとの理由で判決を保留していた。

アンワル氏は、マハティール内閣で副首相を務めていた1998年にも同性愛容疑で逮捕され失職。捜査を妨害したとして職権濫用に問われた裁判では2002年にアンワル氏の有罪が確定、同性愛裁判については2004年に連邦裁が無罪判決を言い渡していた。

伊藤 祐介

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. 新型アウディ『Q3』のインテリアを公開、「コラム式シフト」と新デジタルコックピットが目玉に
  2. 「強烈な需要がありそう」スバルの3列シートSUV『アセント』が今、SNSで話題に
  3. 「泥が似合うグレードを!」三菱『パジェロ』がPHEVで復活!? スクープ情報にSNS沸く
  4. 2.5Lエンジンを搭載する『インプレッサ』登場、米2026年モデルに「RS」
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
  6. もしも「タイプ992」が初代911をオマージュした世界線だったら…? ウクライナのデザイナーが再解釈
  7. 21車種・64万台超、トヨタ自動車の大規模リコールに注目集まる…7月掲載のリコール記事ランキング
  8. シボレー『コルベット』がニュルブルクリンクで「米国メーカー最速ラップ」樹立
  9. 燃えるエアフィルターに有害なブレーキも…メルセデスベンツの粗悪偽造品、2024年は150万点超を押収
  10. マツダ、トランプ関税直撃、通期予想純利益8割減、毛籠社長「あらゆる手段を講じても黒字を確保」【新聞ウオッチ】
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
  4. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  5. 湘南から走り出した車、フェアレディZやエルグランド…日産車体が量産終了へ
ランキングをもっと見る