【ホンダ ジェイド 試乗】 低全高6シーターパッケージの真実…青山尚暉

試乗記 国産車
ホンダ ジェイド X
ホンダ ジェイド X 全 17 枚 拡大写真

ミニバンとワゴンを融合させた、『ステップワゴン』などとは違う独身や子離れ層に向けた3列、6シーターの3ナンバーモデルが『ジェイド』である。試乗したのはXグレード。ここではそのパッケージングを中心にリポートしたい。

プラットフォームはノーズ部分が現行欧州『シビック』。その後ろが3-4代目『オデッセイ』のものを採用する。

日本より先に中国で1.8リットルガソリンモデルとして販売されていたが、国内仕様は1.5リットルエンジンに1モーターのスポーツハイブリッド i-DCDを組み合わせる。システム出力は2リットルガソリンエンジンに匹敵する152ps。JC08モード燃費は24.2~25.0km/リットルを誇る。

また、先進安全装備のホンダセンシングを上級のXグレードに標準装備したのも大きなニュース。ホンダセンシングとは衝突軽減ブレーキ、アダプティブクルーズコントロール、車線維持支援システム、路外逸脱抑制機能、誤発進抑制機能、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能を統合したものだ。なお、ベースグレードにもOP装備可能である。

ところで、ジェイドは3-4代目の低全高オデッセイ、今では生産されていない5ナンバーミニバンの『ストリーム』の代わりになるミニバンか? と言えば、そのパッケージング、車格の違いから明らかにノーである。後述するが、緊急席そのものの3列目席の仕立てから、むしろこれまた今はなき『アコードワゴン』ユーザーの代替えに向く1台と言えるかもしれない。全高は1530mmとカタログに記載されているが、アンテナを除くと1500mm。実に低く、低重心でもある。

スタイリングはとても美しい。特に真横から見たときのスリークな佇まいにはほれぼれさせられる(Bピラーが立っているのがそう見える理由のひとつ)。インテリアも同様だ。フルデジタルメーターの先進感もさることながら、アイボリー内装のベージュの木目調パネル、ドイツの超高級車、マイバッハの後席をイメージしたという!? プライムスムーズコンビの2列目キャプテンシートのデザインはこのクラスの乗用車としてかつてない高級感、品格がある。

航空機のアッパークラスを思わせるひじ掛けが内側に付いた2列目席にはホンダならではのアイデアがある。エスティマやアルファードのようにロングスライドするのだが、リヤホイールハウスを避けるため、V字に下がるのだ(最後端まで下げると2脚のシートはくっつく)。

身長172cmのドライバーのドライビングポジション基準で2列目席を最後端位置までスライドさせると、頭上に120mm、ひざ回りに最大300mmものスペースが確保される。そしてかけ心地、居心地もぜいたくで心地良い。シートのサイズはクッション長480mm、クッション幅550mm、シートバック高610mmと、幅方向にゆとりがあるのが特徴だ。ボディーサイド面を立たせることで、横方向の広々感も申し分なし。後席エアコン吹き出し口も完備しているから1年中、快適である。

ちなみにその状態で3列目席に着座すると、3列目席乗員専用のガラスルーフ部分がえぐられているため頭上方向に110mmのスペースがあるものの、ひざ回りスペースはゼロ。が、2列目席をひざ回りスペース120mmになるまで前方スライドさせれば80mmの空間が生まれる。

とはいえ大人が快適に座れる空間、シートではない。3列目席はクッション長440mm、クッション幅855mm、シートバック高580mmと小さく幅方向はかなり狭い。例えばかつてのストリームの3列目席はクッション長440mm、シートバック高570mmとほぼ同等だが、クッション幅は990mmもあったのだ。

ここで注意したいのは、2-3列目席スルーはできないと思ったほうがいい、ということ。スルー幅は最大10cmしかなく、無理してスルーしようとすると靴が引っ掛かり、危ない。

そんなわけで独身、子離れ層が使う場合、3列目席を格納し、きっぱり贅沢に4座サルーンとして使うのが正解だ(5人乗れないのか!? という議論は別にして)。すると荷室部分は開口部高670mm(開口部段差60mm。ワゴンとしては高めだが)、フロア幅995~1340mm、フロア奥行き850mmという中型ワゴンに匹敵する広大なスペースが出現する。こうすれば、使い勝手はもはやスタイリッシュワゴンそのもの。キャプテンタイプの2列目席をフォールダウンさせ、荷室長をさらに拡大することだってできるのだから、やっぱりワゴンのキャラクターが強いというわけだ。

ただ、多くのワゴンのように、例えば荷室側から大型犬を無理なく乗せられるかと言えば、そうでもない。開口部地上高が670mmと高めなのと、開口部に60mmの段差があるのがその理由。もちろん、小型犬でもジャックラッセルのようにとんでもないジャンプ力を持つ犬ならOKではある。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
ペットフレンドリー度:★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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