国立天文台は、三鷹4D2U(4次元デジタル宇宙)ドームシアターの上映システム更新作業が完了し、4月から公開を再開すると発表した。
4D2Uドームシアターは、2007年春に完成し、スーパーコンピューターによるシミュレーション結果を可視化したムービーコンテンツや、4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」を使用した立体視映像を上映してきたが、上映用コンピューターの老朽化に伴って2014年秋から公開上映を停止していた。
新しいシステムでは、より高輝度・高画質・高コントラストの映像を投映できるプロジェクタを導入した。これまで全天を8分割で投映していたものを6分割に変更、個々のプロジェクタによる投映像の繋ぎ目を減らした。
また、立体視映像の投映方法を、これまで採用していた分光方式からアクティブ・シャッタ方式(時分割方式)に変更した。この方式では、1台のプロジェクタから1秒間に、120フレームの割合で投射した左目映像と右目映像の信号を、同期させた立体メガネで受信する。これによって、分光方式の短所であった光のロスをなくし、より明るく鮮明な色の映像を提供できるとしている。
従来のドームシステムでは、後方の立体視ができなかったが、新システムでは全方位で立体視が可能になった。
ドームシアター内の座席数は20席から40席に増設するとともに、4月から、これまで月2回だった定例公開を月3回に増やす。加えて1日あたりの上映回数を4回にすることで、1回あたりの募集定員も、これまでの100人から160人に増やす。
上映システムの更新に伴って、天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)は、新作映像「ダークマターハローの形成・進化(II. 大規模構造の形成)」を制作した。作品は、CfCAが運用するスーパーコンピューター「アテルイ」で計算された、宇宙初期から現在に至るまでのダークマターハローの進化を映像化したもの。
高解像度となった新システムでは、9000万体の粒子がこれまでよりも鮮明に描き出されるほか、新システムを活かすために映像の作り方も変え、新たな試みとしてほぼ全方位で立体視が可能な映像を制作した。
CfCAの4D2Uコンテンツ制作チームは、シミュレーションデータを科学的に忠実に可視化したムービーコンテンツを随時制作し、ドームシアターや4D2Uウェブサイトで公開してきた。新作映像も同様に、4D2Uウェブサイトで公開する予定。