【注目軽&コンパクト】自在のパッケージングがもたらす自由…室内スペース、使い勝手を検証

自動車 ビジネス 国内マーケット
軽自動車&コンパクトカーのパッケージング、デザイン、スペース、使い勝手を検証
軽自動車&コンパクトカーのパッケージング、デザイン、スペース、使い勝手を検証 全 48 枚 拡大写真

日本の環境で向き合い易いスモールカーの価値が見直されている。白ナンバーのコンパクトカーか、はたまた軽自動車か。実際の使い勝手に違いがあるとすれば、各車がどんな場面でメリットが得られるのか、その実力が気になるところだ。

今回は実際に購入を考えている皆さんに代わって、デザインの特徴や実際の使い勝手について検証してみたい。

◆規格の違いを活かしたスタイリングの特徴

先ずは、スタイルと走行性能のバランスを重視するユーザーに人気が高いトヨタ『ヴィッツ』とスズキ『ワゴンR』のスタイリングに注目。

ルーフの高さを1500mm程度に抑えたヴィッツは、1550mmの高さまで入庫可能な機械式駐車場にすんなりと収まる。都市部でサッと停められるので、駐車場探しにヤキモキせずに済みそうだ。一方で、ボディの長さと車幅は軽規格の範囲に留まるワゴンRは、ヴィッツよりも車幅は狭いが全高は1640mm。室内高を稼ぐことで居住スペースを確保している。軽自動車は定員が4名だが、後席に大人2人が座ることを想定すると、5人乗りのヴィッツの後席の方が実質的に個々に振り分けられる面積は広い。

横方向の広さは不利だが、軽自動車は室内の前後方向にゆとりを得やすいメリットがある。軽のエンジンルームは大きめのエンジンを積む小型車よりもコンパクトに設計し易く、その分、室内長を長く確保できるのだ。ワゴンRの場合、後席は左右独立式のスライド機構を備え、荷室スペースと後席のヒザ周りの空間を使い方に応じて広さを調節することもできる。

続いて、両者のデザインを見てみよう。トヨタのグローバルモデルに展開される「キーンルック」を採り入れたヴィッツは、エンブレムからヘッドライトへV字に切れ上がる表情にはシャープさがあり、女性に限らず男性でも乗りこなしやすいデザインだ。一方で、実用性を軽の規格に納めたワゴンRの場合、ボディパネルは比較的フラットな形状。シンプルなデザインは車両感覚が捉えやすく、運転に不慣れな人でも扱いやすい。

◆後席の快適性高いヴィッツ、シンプルで使いやすいワゴンR

乗用車として後席の快適性を求めるなら、ヴィッツの居心地の良さは特筆すべきポイントだ。ヴィッツは日常使いで乗りこなしやすい取り回し性を発揮するが、スペース系の軽と比べて頭上空間は狭く、低めのシートに腰を落とすと、身体の収まりが良くて気持ちが落ち着く。

一見するとリヤが絞り込まれてワゴンRよりも狭く見える荷室だが、2段式でアレンジできる床下のボードを下段にすると、機内持ち込み用のキャリーケースが縦置きに4~5個積める実力を発揮してみせた。また、ワゴンRのユーティリティには誰もが迷わずに使いこなせる明快さがある。後席はレバー一つの操作でシートがアレンジできるシンプルな構造となっているし、低燃費の走りと加速性能に貢献するエネチャージ用のバッテリーは助手席下に納められ、その上にはスズキ車のトレードマークともいえるバケツ型の収納も備えられていた。

総評すると、室内空間を状況に応じて使い分けられるのはワゴンRだが、コンパクトカーとして十分な積載性と後席の快適性を意識するとヴィッツのバランスの良さが魅力的に映る。

◆低めの着座位置に利点ありのラクティス、タントはガラス面積の広さが光る

今度は、小型車に空間的なゆとりを与えたトヨタ『ラクティス』と超スペース系の軽自動車のダイハツ『タント』を比較してみる。

全高が1585mmのラクティスは、ヴィッツよりも上下方向に広い室内空間を備えながらも生活感をさらけ出さない。フロントフェイスにはグリル周りのメッキとライト周りのLEDを効果的にあしらうことで、洗練されたイメージとなっているが、スポーティで軽やか、それでいてどこか親しみやすい印象を与えている。ルーフの位置が高めのモデルの場合、見晴らしを良くするために乗員のアイポイントが高めに設定されることが多いが、ラクティスは比較的低め。ヴィッツクラスから+αの空間を求めて乗り換えても違和感が少なくて済む。

それとは対照的に、広大なガラス面積が自慢のタントは、窓枠のスクリーンに映し出させるパノラミックな景色に冒険心がくすぐられる。こうして、毎日の移動をワクワクした気分に変えるエンターテイメント性もタントならではの世界だろう。

長距離を高速移動する時に落ち着いた気分でドライブしやすかったのはラクティスの方だった。昨今人気の軽ハイトワゴンの傾向ではあるが、タントは横風が強く吹き晒した瞬間に煽られてハンドルがとられやすい場面があった。一方、ラクティスは軽快な中にも安定感が得られる走りとクルマに包み込まれているように感じる低い着座位置があいまって、高速移動中に必要以上のスピード感を感じにくい。

◆パッケージングを比較…容量、積み込み易さは?

ラクティスの室内はタントのように四隅を押し出したような形状とは異なり、乗用車的な空間の頭上部分と荷室を拡げているが、室内高の高さと荷室空間の奥行きはしっかりと確保されている。また、5人がフル乗車しても乗員全員分の旅行の荷物や趣味の荷物をしっかりと積みこめるパッケージングも魅力的だ。荷室側から大きな荷物を積む時は、開口部の間口が低めで広く、さらに、壁面に設置されたハンドルを軽く引くと、力を必要とすることなく簡単に後席が倒せる。大きな容積の荷物やペットのケージのような重い荷物は、軽い力で滑りこませて載せられる。

対して、収納力を誇るタントの最大の魅力は、小さな軽自動車を最大限に広く使う発想を採り入れたウルトラスペース。助手席のスイングドアと後席用のスライドドアを開くと、中央に柱を持たない大開口部が現れる。柱がないことで、本来はクルマに積みにくい長くて大きな荷物を簡単に呑み込んでみせるほか、助手席の背を水平に倒すとテーブルとして使えるため、出先でクルマを部屋に見立てて使うことまでできる。もちろん、スライドドアはミニバンと同様に子供が急にドアを開けても駐車場で隣のクルマにドアをぶつける心配もない。

タントのスタイリングは実用性の高さを連想させるボクシーな形だが、甘すぎない雰囲気は“子育て層のためのクルマ”というイメージが薄まり、老若男女がニュートラルに受け容れやすいモデルに進化してきたことも幅広い世代のユーザーに支持されやすいことに繋がった。エポックメイキングなタントは、使って楽しい魅力を身体いっぱいで表現してみせたモデル。「どう使おうか?」と妄想が膨らむことでドライブライフを楽しく過ごせる。

その点、颯爽とした雰囲気をもつラクティスは、親しみやすさの中にヴィッツ+αのスペースと使い易さを実現し、走りやすさと積載性、居住スペースをスポーティなクルマに上乗せした、欲張りながら爽快な走りを楽しませてくれるモデルに仕立てられている。

デザイン、実用性、走行性能。クルマ作りのベクトルは様々だが、各車それぞれにクルマを所有した時のイメージが異なる。家電と違い、クルマは実用性にプラスしてどんな付加価値がもたらされているかに注目すると、そのクルマを手にした後にどんな幸せが待っているのかイメージできるのではないだろうか?

《藤島知子》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. トヨタ カムリ 新型、全車ハイブリッドに…今春米国発売
  2. マツダ、新型3列シートSUV『CX-80』をついに世界初公開 日本導入時期は
  3. シトロエンの新デザイン採用、『C3エアクロス』新型を欧州発表
  4. ジムニー愛好者必見! ベルサスVV25MXが切り拓く新たなカスタムトレンドPR
  5. トヨタ『ランドクルーザー250』発売、520万円から…特別仕様車も
  6. レクサス『GX』通常販売は今秋に、先行して100台を抽選販売へ 価格は1235万円
  7. 日産はなぜ全固体電池にこだわるのか? 8月にも横浜工場でパイロットプラントを稼働
  8. トヨタ堤工場、2週間生産停止の真相、『プリウス』後席ドア不具合で13万台超リコール[新聞ウォッチ]
  9. トヨタ ランドクルーザー250 をモデリスタがカスタム…都会派もアウトドア派も
  10. 80年代GPマシンを現代に、ヤマハ『XSR900 GP』が143万円で5月20日に発売決定!
ランキングをもっと見る