まずは、『マスタング』のいちファンとして、デザイナーが本当に素晴らしい仕事をしてくれたと思う。長い伝統があり、熱狂的なファンが大勢いるこのクルマを新しくするにあたっては、彼らの期待に応えることが何よりも大事だったと思うが、マスタングのアイコンを随所に残しながらも新しい要素を巧みに採り入れたスタイリングには、個人的にもホレボレさせられている。
インテリアは質感にかなり気を配ったことが見て取れる。快適装備が充実したことも歓迎だ。
4輪独立懸架の採用も効いて、フットワークがずいぶん現代的に洗練されたことも特筆できる。総じて、伝統の話を抜きにしても、1台のクーペとして非常に魅力的なクルマに仕上がっていると思う。
エコブーストエンジンは、実のところ期待したほど燃費がよろしくないのだが、予想以上にパワフルで、サウンドも悪くなく、なにより新しい感覚がある。生誕50年を節目に、これからグローバルカーとして羽ばたいていく上で、マスタングにもこうした設定は欠かせないと思う。
では筆者がもしマスタングを買うとしたら、エコブーストを選ぶかというと、そうではない。今後予定されているV8の導入を待ちたい。理由は単純に好みの問題で、大排気量のマルチシリンダーエンジンが好きだからだ。ましてやマスタングならなおのこと、多少は燃費が悪くても、価格が高くても、やっぱりV8で乗りたいというのがホンネだ。V8は筆者のような人のために存在するということで…。
ちなみに、2.3リットルの4気筒エンジンというのはマスタング初ではなく、過去に1980年代にも採用例があることをお伝えしておこう。
なにはともあれ、465万円の価格でこのクルマが買えるというのはとても魅力的であることには違いない。500万円級のクーペで、これほど見栄えしてコストパフォーマンスの高いクルマはほかにない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級サルーンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに鋭意執筆中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。