【ボルボ V40クロスカントリー 試乗】姿かたちはそのまま、だからこそ乗って初めて分かる良さ…中村孝仁

試乗記 輸入車
ボルボ V40クロスカントリー
ボルボ V40クロスカントリー 全 9 枚 拡大写真

姿かたちをほとんど変えずに、大幅なブラッシュアップを図る。これ、ヨーロッパメーカーが良くやる手法だが、新しいボルボ『V40クロスカントリー』は 、まさにそれを地で行った生まれ変わりを果たしている。だからその良さは乗らないと分からない。

日本に登場してほぼ丸2年が経過したモデルだが、細かくは変わっているものの、外観上の変更点は軽微。しかしこの間に変更されたメカニカルな点は数多い。クロスカントリーは言うまでもなく、V40シリーズで唯一となるAWDの駆動方式を持ち、その名からも想像できるように、僅かながら地上高を上げてオフロード風に仕立てたモデルである。ただし、あくまでもオフロード風であって、このクルマがオフロードを走ることはほとんど想定していない。それはあくまでもイメージに過ぎず、通常のV40に対し、よりアクティブにライフスタイルを楽しみたいユーザーに向けて発信されるモデルと理解したほうが良い。

2015年でどこが変わったか。昨年までのクロスカントリーは、Rデザインと同じ直列5気筒ターボユニットを搭載し、トランスミッションもこのエンジンとの組み合わせはトルコンを使った6ATだった。因みに直4、1.6 リットルと組み合わされるトランスミッションはツインクラッチのDCTである。その組み合わせが2015年モデルになると、直列4気筒2リットルターボエンジンと8速ATの組み合わせに変わった。Drive-Eと名付けられた新たな4気筒は、ボルボが開発した最新鋭の直噴ターボユニットで、まさに次世代のボルボを背負って立つ新エンジンである。

同時にトルコンATも6速から8速に進化して、こちらも競合モデルの中では最先端に位置するものになった。5気筒から4気筒となって、中には物足りなさを覚えるユーザーもいるかもしれない。しかし性能的には5気筒時代よりも32ps、50Nmのアップを果たしており、燃費もJC08モードでおよそ19%向上しているというから、これを進化と呼ばずに何というのだろう。

進化はこれだけでは終わらない。ボルボはすべての2015年モデルで、「インテリセーフ10」と名付けた10種類の安全装備や運転支援機能を標準装備した。車種によって内容は異なるそうで、このクルマの場合、歩行者・サイクリスト検知機能付きフルオートブレーキシステム、全車速対応のACC、ドライバーアラートコントロール、レーンキーピングエイド、ブラインドスポットインフォメーション、レーンチェンジマージエイド、クロストラフィックアラート、ロードサインインフォメーション、アクティブハイビームおよびリアビューカメラである。

実はまだある。新たにLEDのドライビングランプを装備したことと、ナビゲーションおよびインフォテイメントシステムが、ミツビシ製に変更されたことなどだ。これによって音声認識で車載装備をコントロールできるようになった。

とまあこれだけてんこ盛りで変わると、形は変わらないし、操作系も一緒だがクルマとしてはほとんど別物に近い大変わりである。

新たな2リットル直4ユニットと8ATを組み合わせたドライブトレーンは、1.6リットルとDCTの組み合わせを持つ標準のV40とは顕著な乗り味の違いを見せる。特にシャシーセッティングが昨年までのダイナミックシャシーからツーリングシャシーに変わり、ソフトな乗り心地となったV40に対し、クロスカントリーは明らかにダンパー、スプリングのセッティングがハードで、路面の凹凸をしっかりと把握できる足回りを持つ。

乗り始めは随分と硬いなぁ…と感じるものだったが、そのパフォーマンスを味わうにつれて、この足でなければダメ…という思いに変わっていく。4気筒と5気筒の最も大きな違いは、吹け上がりのシャープさにある。新しい4気筒はかなり直観的なレスポンスを持っていて、素早いアクセル操作をするとエンジンは一気にトップエンドまで吹け上がる。5気筒はどちらかといえば回転マスの大きさを感じさせて、この直4ほど鋭いレスポンスは持っていなかった。

もう一つ感じたことは、サスペンションの伸び側のダンピングが5気筒時代よりもキッチリと働いていて、路面に対する追従度が高く、ハードではあるけれど、伸びていく速度も速く感じられるので、常に路面に張り付いている印象を受けることだ。

レーンキープアシストの介入も従来よりも明確で顕著になった。意図してレーンを逸脱しようとすると、ステアリングにブルッと振動が伝わって警告をだし、次いでグイグイっとステアリングを引き戻す。2014年までのモデルはこれが実に穏やかで、車線に引き戻すほどの効果は持っていなかったが、今回はそれを明確に行ってくれる。

今回試乗したモデル、実は限定モデルでナビパッケージやレザーパッケージ、さらに歩行者エアバックにモダンウッドパネルなどをさらに追加してお値段439万円。正直、この安全装備と充実したそれ以外の装備を考慮すると、費用対効果という点ではライバルを圧倒的に凌駕している印象を受けた。その良さはやはり乗ってみないと分からない。

パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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