サービス発想への転換が実現する新ビジネス…米Zipcarなどの事例をもとに

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慶應義塾大学経済学部教授 武山政直氏
慶應義塾大学経済学部教授 武山政直氏 全 2 枚 拡大写真

4月22日、博報堂にてマーケティング・イノベーター研究会が開催された。研究会テーマは「新しい発想を生み出すためのイノベーティブマネージメント 創造的編集と場づくりのノウハウを探る」。

同研究会のセッション3「共創ネットワーク」にて慶應義塾大学経済学部教授武山政直氏が「サービスデザインとリソースネスのイマジネーション」と題して講演を行った。

◆“価値ある非連続的なシフト”をサービス発想で捉える

サービスデザイン、というキーワードのもとで教育研究と実務のコンサルティングの双方で活動してきたという武山氏。研究教育で開発したメソッドを実務に応用し、実務で取り組んだケースから共通の課題や共通の方法論を模索しているのだという。同日の講演では、サービス発想イノベーションへ転換が起きていること、そして実際に武山氏が産学共同で進めた事例、オープンイノベーションにむけての取り組みが紹介された。以下、サービス発想のイノベーションについて抜粋、レポートする。

武山氏はそもそもイノベーションをどういうものと理解しているかについて「イノベーションの定義は様々ですが、“価値のある非連続的なシフト”が直観的な理解として間違いないのではないか」と述べた上で、“サービス発想”への転換について説明するために3つのイノベーションの例を挙げた。

共通しているのは、顧客が最終的にしたいことから考えること

1. スターバックス

スターバックスが世の中に最初に出てきた時、コーヒービジネスに対して新しいスタイルを生み出したことが盛んにいわれたのも記憶に新しい。美味しいコーヒーを提供するお店はそれまでにもあったが、スターバックスはコーヒーを提供するだけではなく、ほかの様々な要素(どういう環境で味わってもらうか、その時の時間の過ごし方、空間の居心地、あるいは自分自身がそこにリソースを持ち込んで自分なりの過ごし方ができるという自由度の高さ)を含めながら価値を創出した。コーヒーはあくまでその空間や時間を楽しむ一つのリソース、手段として位置づけられたことにひとつのシフトがあったと武山氏は見ている。

2. ナイキとアップル

ナイキとアップルとのコラボレーションは、ナイキからすると、これまでの“靴を売ってさよなら”ではなく、靴を売った後も、顧客とネットワークを保ちながら靴を有意義に活かしていく仕掛けをつくったことが革新的といえる。「靴の中にセンサーを入れることで、靴の持ち主が、日々ジョギングに出かけてどんなルートをどんなスピードでどれぐらい走ったかというのがわかり、靴をより活かしていくプロセスを提供した」(武山氏)。

3. Zipcar

カーシェアを提供するジップカーは「それまでは自分が運転して行きたいところにいくためには基本的にはマイカーを所有するのが当然のスタイルだったが、マイカーの所有に伴ういろいろな(駐車、洗車、ガソリンといった)面倒なことを取っ払ってクルマの運転へのアクセスのよさに対価をつけたこと」にシフトが起きているといえる。(武山氏)

これら3つの事例に共通するのは、ユーザが最終的にやりたいこと(アウトカム)を捉えていること。「企業が提供するサービスやプロダクトはそのアウトカム達成のための手段と位置付けている。これに加えてお客さん自身がもっている知識だとか技能、あるいは他社、公共ルートを通じて調達されるリソースをも組み合わせてより高い満足度を達成していることに共通項がある」と述べた。

このような顧客のしたいことからサービスを発想するという姿勢は、昨今のネットワーク化やデジタル化に後押しされてさらに促進される、という。これまでのような「企業がプロダクトやサービスをとにかくいいものを創り込んで提供するところにフォーカスしていたのに対して、その先に何があるのかという点を考えて」いく傾向はますます強まる(武山氏)。

したがって、そのような流れのなかで生きる私たちは、いろんな人が自分のやりたいことを達成するために他の人のリソースを借りてきたり、必要なものを交換したりしているという世界観をもつことが必要となる。こういった世界観をもつことで様々に可能性が開かれると考えられる(武山氏)。

《北原 梨津子》

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