【メルセデス CLS 試乗】驚異的燃費に唖然。ディーゼル人気ますます上昇か…中村孝仁

試乗記 輸入車
メルセデスベンツ CLS220 ブルーテック
メルセデスベンツ CLS220 ブルーテック 全 17 枚 拡大写真

決してエコカーだからと言ってクルマを買うことを良しとしない僕だけど、このレベルのクルマを買った(としての)時、走って燃料を入れてこれほど幸せな感覚になるクルマはない。

メルセデスベンツ『CLS220ブルーテック』はそんなクルマだった。CLSクラスは元を質せばW212、即ち現行『Eクラス』がベースのクーペ風4ドアモデルだ。初代よりデザイン的にも質的にも洗練された現行モデルが登場したのは2011年のこと。そして今年、フェイスリフトを受けて同社として初のマルチビームヘッドライトを採用した。CLS220はこれまた日本では初お目見えとなる、4気筒のターボディーゼルエンジンを搭載したモデルである。しかもピエゾインジェクターを持つ直噴ターボユニットで、これによって大幅な減税を引き出している。因みに減税総額は25万5000円と大きい。

それはともかくとして、特徴は大きく3つ。一つはブルーテックターボディーゼルによる走り。二つ目はマルチビームのヘッドライトが作り出す独特な世界。そして3つ目は新たにわかったことだが、ディストロニックと呼ばれるいわゆる全車速対応クルーズコントロールの目覚ましい進化である。

まずは新しい4気筒のディーゼルターボだ。車両重量は1880kgと決して軽くない(試乗車はガラスサンルーフ付きAMGライン装着車のため)。したがって、強力な加速を求めようという向きには、少々物足りないというのが偽らざる事実。因みに最高出力及び最大トルクは177ps/3200~3800rpm、400Nm/1400~2800rpm。今や最高出力までテーブルトップで、ピンポイントパワーではない。1400rpmといえば本当に踏み込んですぐ。そこからもう最大トルクが発揮されているから、常用域はおろか低速走行でも最大トルクが使えてしまう状況が出る。

こうなると一番感じられなくなるのが、いわゆるドラマチックな加速感だ。実際クルマはあっという間にかなりのスピードに引き上げられてしまうのに、速いと感じることがない。また、メルセデスには、トランスミッションのシフトプログラムや、アクセルレスポンスを変える変換モードがあって、これでSを選べば、それなりの変化が現れるものなのだが、元々素晴らしいレスポンスを持っているせいか、Sを選ぼうがEを選ぼうが大差はない。

ダッシュのエコモードをセレクトするとアイドリングストップをし、それを切るとアイドリングストップをしなくなる。エコモードは通常出力を抑えるなどの措置をとっているはずだが、そんな感覚は皆無だった。静粛性やアイドリングストップ時のエンジンの揺れなどもほとんど気になるものではなく、スッと止まり、スッとかかる。

冒頭幸せな感覚にしてくれた、としたのは、3日ほどで570km弱走り、その上でまだ走行可能距離が750kmもあったこと。最終的には850kmほど走り、燃料は56リットルほど使用。つまり1リットルあたり15.2km弱走った計算。1880kgの車重を考えれば本当に立派なものである。何より我が家の近くは軽油が安く、値上がりしてもなお、1リットル101円だから、燃料代は850km走って僅か5600円強という計算だ。これだといつまでも走っていたくなる。というか、走って燃料代を気にすることは皆無だろう。

次に、マルチビームヘッドライトだ。現状ではメルセデスはCLSのみ、このシステムを装備している。実に24個のLEDライトを点けたり消したり、さらには減光したりという制御を毎秒100連続調整して常に最適な配光を与えてくれるというもの、たとえばコーナリングライト。これ自体は珍しいものではないが、従来はそれをステアリングに連動させていた。しかしCLSの場合、カメラでコーナーを事前に見極め、コーナー手前からすでにライトをコーナーの先を照らすように設定している。

そしてアクティブビームを設定するのは常にハイビーム状態。したがって必要があるときだけロービームとなり、通常はハイビームで走行することが可能だ。もっともそれは非常に暗い夜道でのみ実現でき、東京のような都市圏では、滅多なことではハイビームとはならない。ただ、ハイビームになった時は、まるで目の前にパッと花が咲くように美しい光景が見られ、ちょっと感動を覚える。さらに先行車が出現するとその部分だけを減光すると言われたので、何度かトライしてみたが、残念ながらそのような状況を作ることはできなかった。しかし、このヘッドライト、極めて先進的である。

3つ目の嬉しい驚きはディストロニックの進化である。いわゆる「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」だが、全車速対応でその対応度合いが凄かった。というのも、渋滞時のノロノロ走行への対応が非常に優れていて、滅多なことでは車を止めない。まさしく牛歩のごとく、止まりそうになっては少し加速するというのを繰り返す。完全停止してもアクセルに少し足を載せれば再起動する。さらに高速上では一旦本線に入ればほとんどアクセルもブレーキもいらない。それにステアリングだって車線維持機能を使ってほとんど切るという動作をしないで済む。だから、長距離の移動は極めて楽だ。人間こうした快適デバイスを使うと退歩すると言われるが、まさにその印象を強く受けるが、快適であるという点においては圧倒的。疲労度は半分以下ではないかと思う。

とまあ、いいことずくめのモデル。ハイブリッドとどちらを選ぶと聞かれたら、個人的には同じ車種に設定されているのなら僕はディーゼルを選ぶ。その豪快なトルク感のある走りはハイブリッドでは実現できないし、燃料代だったもしかしたらディーゼルの方が日本では安いからだ。やっぱりエコカーを選ぶのか…。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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