【人とくるまのテクノロジー展15】日本の自動車産業が競争力を維持するために必要な要件とは

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左から、早稲田大学理工学術院の大聖泰弘氏、ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏、テクノバの中田雅彦氏、本田技術研究所の前田義男氏。
左から、早稲田大学理工学術院の大聖泰弘氏、ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏、テクノバの中田雅彦氏、本田技術研究所の前田義男氏。 全 1 枚 拡大写真

5月20日パシフィコ横浜にて開催された『人とくるまのテクノロジー展2015』では「2050年の社会情勢を見通した交通システムと自動車用動力の方向性―将来の自動車社会にどのように備えたらよいか―」と題した春季大会フォーラムが開催された。

フォーラムでは「2050年に向けて悲観的な要素が多いが、どのように対応したらよいか?2050年には自動車の価値観はどのように変化するだろうか?」という問いのもと、パネルディスカッションが開催された。

登壇者は早稲田大学理工学術院の大聖泰弘氏、ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏、テクノバの中田雅彦氏、本田技術研究所の前田義男氏。

◆「海外マーケット、都市化に新たな可能性」…ホンダ前田氏

冒頭、自動車産業への悲観的な見方についてコメントを求められた本田技術研究所の前田氏は、「日本の場合、高齢化などの影響があると思うが、世界でみるとまだまだマーケットは大きく広がっているし、そこでメガシティが出来てきたりすると、また新たな交通ニーズが増えてくると思う。自動車会社にとってはまたそこにビジネスチャンスがありえる」と述べ、好材料を見いだす。

続けて前田氏は、都市化に伴う影響について「人の移動は都市が発達すると減るかもしれない一方で、物流は増えると予測する。都市外の貨物などの形で車のニーズがまだまだあり、いずれの場合も新しい技術とサステナブルな乗り物のニーズが増えるため、自動車への期待はいっぱいあるのではないかと思う」と前向きに回答した。

◆日本の自動車の未来は明るいか?

テクノバの中田氏は、「現実の話に目を向ける、認識をもつことから始めるべき」と前置きした上で、石油エネルギー供給におきる変化を中心に据えながら回答した。

「これまで通りには安い石油供給がされなくなることは様々なデータからわかってきています。したがって今後はどのようにエネルギーを、どのように石油をつかうべきかを考えて、その上でより広い視野で新しいビジネスモデルを構築しなければならないのではないでしょうか」。

いっぽう中西氏は、産業としての自動車について「25年から30年目線でみれば構造は変わらず、日本の自動車産業が持っている競争力は通用する」という見立てを述べる。しかし、「その成功体験にしがみつきすぎると、重大な構造の変化に出遅れるリスクがあるという危機意識は持つべきだと思います。2025年から2050年への、情報化をはじめとするシフトが起きた時、戦略が非常に重要となってくる。その点、私も含めてですが、長期的に戦略を立てることを意識して考えていかなければならない」。

続けて中西氏は「マーケットという目からみると、トヨタがこれだけ稼いでいると言われていても、その時価総額は世界で20位にも入っていない。企業のもっている価値に(世界と日本とで)差がある。いまGoogleやAppleが種をまき続けている投資にもすさまじい規模であり、資本力において日本の企業が劣っているという現実がある」と指摘した。

◆キーワードは“三つのI” 情報にまつわる価値に注視せよ

早稲田大学の大聖氏は“三つのI”を考えなければならないと指摘。「“ITS、IT、ICT”で表されるような情報通信分野において、中西氏が言われたようにMicrosoftやAppleに持っていかれてしまう可能性があることに日本の自動車メーカーの方々は危機感をもっている。車の付加価値は何かという点を、情報にまつわる価値に注目していきながら考えていくことが重要」とコメントした。

続いて、モデレータを務めた早稲田大学の石太郎氏が、中西氏に質問し同氏がデトロイトが見てきた海外企業での知見を共有する。

「差があると思うのは柔軟性ですね。日本は器用過ぎて、何があっても対応できてしまってきた。結果としてある程度アバウトに進んでいても何かが見えたときに現地現物で対応してしまう学習能力が高かったのが、その結果戦略的になれなかった。逆にドイツもアメリカも、モノづくりのところで柔軟性はないし国の制約も大きかったが、だからこそ長期的な戦略を描くことと実行することが身についてきたのではないか。そして今、海外では国家と自動車産業との一元化や、戦略的な変化が現れる中で、日本はこの流れに出遅れてしまったことは否めない」とコメント。

◆産学官の連携が求められる今「大学の価値を考え直す」早稲田大学 大聖氏

最後に同日のフォーラムで良く話題に出た「産学官の連携」への期待に関連して。モデレータの石氏は早稲田大学の大聖氏へ、「若い世代との関わりの多い大学にいる立場から」のコメントを求めた。

大聖氏は「2050年にかけて様々な課題とそこで動くファクターを考えければならない。その中で私が最も危惧しなければならないのは大学の存在価値だと考える。いま、卒業した学生が戦力として使えるようになっていない、という認識を持っている」と述べ、改めて大学の存在価値を問う。

「大学が産学官のひとつとなるためには“学”の役割を再考し、大学の研究テーマをきちんと設定していかなければならないと思う。そしてさらに、全国津々浦々には自動車産業にとっても非常に面白い、そして高いポテンシャルをもつ大学や研究が行われていて、そういう可能性のある研究機関の価値にも目を向けてもらえるようにしたいと思っている」(大聖氏)と語り、ディスカッションを締めくくった。

《北原 梨津子》

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