【ベントレー コンチネンタルGT スピード 試乗】まさに大船、味わい深いW12のパフォーマンス…中村孝仁

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ベントレー コンチネンタルGT スピード
ベントレー コンチネンタルGT スピード 全 14 枚 拡大写真

『フライングスパー』を唯一の例外に、ベントレーには「スピード」と名付けられたモデルが存在する。スピードが意味するのは、ハイパフォーマンス。これぞベントレーをドライバーズカーたらしめた大きな原動力であった。

今更“釈迦に説法”かもしれないが、ベントレーはドライバーズカーである。長くロールスロイス傘下にあって、すっかりそのスポーツ性を削がれた感のあったベントレーだが、VW傘下で蘇ったベントレーには、再びそのスポーツ性とドライバーズカーとしてのドライビングプレジャーが蘇った気がする。

そもそもベントレーにスピードと名付けられたモデルが登場するのは、ベントレーが誕生して間もない1920年代のこと。ベントレーはその会社発足時からレースに手を染めて、幾多の輝かしい記録と共に人々の記憶に残る。まさにスピードはベントレーモータースポーツの礎を築いたクルマであり、ルマン優勝という輝かしい歴史に名を残したモデルでもあるのだ。

最新の『コンチネンタルGTスピード』は、VW傘下で生み出されたW12気筒という、狭角のV6エンジンを二つ組み合わせた構造を持つ。幅は広くなるがエンジン全長は短くなり、コンパクトにエンジンルームに収めることが出来る。当然ながら前後長が詰められるので、運動性能に寄与する。

このエンジン、VW傘下のメーカーで幅広く用いられ、チューンは異なるが、ブガッティ『ヴェイロン』、アウディ『A8』、それにVW『トゥアレグ』や日本には導入されていない『フェートン』などに用いられているのは広く知られているところだ。しかもヴェイロンは既に生産を終了し、トゥアレグのW12は日本には導入されていない。というわけでそれが味わえるのはアウディとベントレーだけである。

コンパクトと言っても、コンチネンタルGTスピードのサイズは4820×1945×1400mmと十分すぎるほど大型だが、エンジン長が短く、それによって全長が短いことは、縦横比からも十分に想像できると思う。

実は現行のこのエンジン、正直を言えば今、ファイナルステージを迎えたものだ。新しいエンジンはこれに可変気筒システムが装備されて、間もなくデビューすることになっている。だから、これは最新モデルの試乗というわけではない。しかし、W12はそう簡単に味わえるエンジンではないので、そのフィーリングをじっくりとお伝えしたい。

かつてVWが作り上げた狭角V6エンジン、VR6は、車種によっても世代によっても異なるが、V型のバンク角を最大でも15度という極端に狭い狭角で作り上げた。各シリンダーは若干ジグザグする程度でほぼ直列に近い。W12はこのVR6を二つ組み合わせたものと考えればよい。性格的にもVR6は限りなく直6エンジンに近く、それゆえに振動の無い理想的なエンジン回転を得られる。その良さをW12も見事に受け継いでいるので、エンジンをかけた瞬間から驚くほどスムーズに回る。

エンジンサウンドは通常のV12とはまるで異なる。やはり性格的にもVR6に近いからか、直6的なサウンドを持っていると言えばわかり易い。そしてドライバーズカーとはいえ、ベントレーはやはり超がつくハイエンドのパーソナルクーペだから、フェラーリやランボルギーニのV12のような派手なサウンドは持たないし、エンジンサウンドでユーザーを魅了しようとも思っていないから、ごくごく控えめなサウンドである。

ただし、その気になって飛ばすとトップスピードは331km/hに達する途方もない性能を持つ。0-100km/hだってたった4.2秒でこなす。今回も高速で一度だけフルスロットルの加速を体験したが、あまりに巨大なマスがすっ飛んでいく様は、これでブレーキ大丈夫?と、一瞬不安になるほど。しかし、そのブレーキ性能もまた見事だから、まさに大船に乗った気持ちでいて良いわけだ。

820Nmという巨大なトルクも2000~4500rpmという広い範囲で発揮される。だから乗りにくさなど微塵もなく、唯一それがあるとしたらその価格ゆえにドライバーがビビッて慎重になり過ぎたがゆえの乗りにくさである。やはり分不相応だということだ。

ダイヤモンドステッチが施された快適なシートはベントレーの定番デザイン。どこを見ても決して過度な豪華さを持たないが、スポーティーさとラグジュアリーが見事に調和した空間を醸し出している。

たまにこうした異空間でドライブするのもいいものだ。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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