【Interop Tokyo 15】鉄道サイネージ市場、新車投入で右肩上がり

鉄道 テクノロジー
セミナー「鉄道サイネージの専門家が語る、サイネージ広告事業の秘訣」
セミナー「鉄道サイネージの専門家が語る、サイネージ広告事業の秘訣」 全 19 枚 拡大写真

 幕張メッセで開催されている「Interop Tokyo 2015」の併設イベントに「デジタルサイネージジャパン」がある。1つの展示ホールでは、複数社が最新のサイネージ技術のデモを行っていた。会場内で開催されているセミナーも盛況で立ち見がでるほど。ここでは、そのひとつ「鉄道サイネージの専門家が語る、サイネージ広告事業の秘訣」をレポートしよう。

 ディスカッションに登場したのは、司会進行にオリコムの吉田勝広氏、そしてジェイアール東日本企画の山本孝氏、西武鉄道の手老善氏、JR西日本コミュニケーションズの土屋樹一氏の4名だ。

●右肩上がりのサイネージ売上げ……JR東日本

 まず各社の現状とトピックスが紹介された。総じて従来のサインボード(看板)に比べて、サイネージの売上げは好調のようだ。ジェイアール東日本企画の山本孝氏によると、電車内サイネージの商品「トレインチャンネル」は約3,100両で24,500面を展開中。最終的に常磐線も入ると27,000面となり、単一のネットワークとしては日本最大規模となる。売上げについては右肩上がりに伸びており、サイネージの販売を開始した13年前は8,200万円の年間売上であったが、昨年度は71億円強となっているとしている。駅構内も2008年から開始し、6月現在では54駅に434面を設置。17億円まで伸びているという。

 サイネージはベンダーによって全部システムが違うため、統合配信システムを3年前に立ち上げ、異なるベンダーに対してデータを入稿する仕様にしているという。

 現在ではサイネージを地方に展開中。「J・ADビジョン」に加えて「J-スポットビジョン」を作り約100面が稼働している。また、今年は東京駅の中央通路に70インチの4Kビジョンを設置。65インチのフルHDビジョンをリプレイスした。

 今年の秋には山手線にE235系が運転開始となるが、広告媒体のデジタルサイネージ化がますます進むことになる。同車両では、網棚の上にサイネージがつき、連結部ドア上部に21.5インチのサイネージが登場する。

●新車両投入でまだまだ伸びる

 西武鉄道では30000系(Smileトレイン)と6000系で展開。池袋線のSmileトレイン11編成106両(848面)、新宿線のSmileトレイン9編成74両(592面)、6000系地下鉄・東横線直通車18編成180両(1440面)でサイネージを稼働している。なお、駅では西武秩父駅で52インチ1面、所沢駅で縦1面、田無駅で47インチ縦3面、西武新宿駅で縦3面、高田馬場駅で65インチ縦11面を設置。注目は池袋駅で、改修によりデジタルサイネージを地下1階に84インチの4K24面、70インチHD40面導入した。1階は秋ごろには84インチ4K15面、70インチフルHD33面を設置予定だ。

 同社の手老善氏によると地下は1週間のワンクライアント販売で9月末まで満稿となっているとのことだ。

 JR西日本コミュニケーションズの土屋樹一氏もデジタルサイネージによる売上げの伸びを指摘する。同社ではサインボード(看板)の減収をカバーする形となっており、平成26年で約7億円の売上げがあがっている。ちなみに、商品となっている「J・ADビジョンWEST」は三ノ宮駅西口22面、大阪駅御堂筋口42面など4月現在5駅で206面を販売。広告だけでなくJRの業務情報と広告をタイムシェアしながら色々な情報を表示することで、広告の価値を上げているという。車内ビジョン「WESTビジョン」は499両2,994面で販売し、今現在約6億の売上げがあるという。今後は大阪環状線に323系新型車両導入予定となっており、まだ伸びるとのこと。ここでは同社ではじめてドア上と車両貫通路上に案内ビジョンを設置する。

 さらに、JR西日本では北陸新幹線の開通もトピックだった。新幹線5駅にデジタルサイネージを設置していた。「当初は無謀だとかいろんな話をいただいた」というが、ふたをあけてみると完売。金沢駅などは駅空間全体をデジタルサイネージを置く駅としてデザインをしていたため、効果的な販売ができているのではないかと分析する。

●適正投資規模を考える

 このように伸びの見込めるデジタルサイネージだが、課題もある。ジェイアール東日本企画の山本孝氏は次のように話す。「そもそもサイネージとサインボード(看板)は違う。サイネージはタイムシェアをしてしまうため、接触時間をかせぐために、並べるなど工夫が必要」と指摘する。また適正投資規模を考えることも重要だという。5面と10面のサイネージがあった場合、必ずしも10面のサイネージで5面の倍の売上げが保証できるわけではない。クライアントの投資規模を考えると適正規模は6面や8面にするなど絞り込みを行ったり、画面サイズも変更するなど、いくつかの要素を組み合わせて最終的に固めていくことが必要だとしている。

 また、サイネージの設置については、北陸新幹線の駅のように改修時からデザイン検討に入りこんでいくことが効果的だが、そうではない場合は工事費もばかにならない。「終電から始発までの間に工事を行い、4日間かけるなどの工期が必要になる。そうするとイニシャルコストは高くなる」。耐用年数は5年と言われているデジタルサイネージに対して早目に投資回収を行うことも重要だ。

 現在では液晶ディスプレイはかなり性能も安定してきた。ハードウェアを見た場合には。最後はコストになると話している。

【Interop 2015 Vol.44】鉄道サイネージは右肩上がりの市場!JR東日本で71億円を販売

《編集部@RBB TODAY》

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