【ホンダ ステップワゴン 試乗】“ターボ感”がまったくない、扱いやすいエンジン…家村浩明

試乗記 国産車
ホンダ ステップワゴン G
ホンダ ステップワゴン G 全 8 枚 拡大写真
6月のはじめに、発売後1ヵ月の受注状況がメーカーから発表された。5月末日現在で台数は1万5000を超えていて、これは国内の販売計画台数(5000台/月)の3倍以上ということ。新型車として、まずは順調に立ち上がったようだ。

試乗してみての新型ステップワゴンは、メインゲートとサブゲートを同時に持つ斬新な仕組みのリヤゲートが装着されていることが、キーワードその1だと思っていた。(メーカーはこれを「わくわくゲート」と名付けている)そして、キーワードその2として、1500cc+ターボという新発想のエンジンがあると思っていたが、実際にクルマを買ったユーザーも、「購入ポイント」としてこの2つを上位に挙げているという。

この「わくわくゲート」は、発想としてスゴいものがあると思う。リヤ・ゲートは跳ね上げ式にするか、あるいはヒンジを左右どちらかに設けて、ドアのように開けるか。普通はどちらを選択するかで、開発陣はアタマを絞る。そして、悩んだ挙げ句にどちらかに決めるはずだが、もし、それぞれにメリットがあるのなら?じゃ、どっちも付けてしまえばいいじゃないか!こんな柔らか~い発想から、ジョーダンみたいなハナシが現実になっているのが新型のステップワゴンなのだ。超・柔軟なこうした発想と、それを具現化するエンジニアリングは、ホンダの面目躍如というところか。

ただ開発陣によれば、「動くもの・その1」の上に、もうひとつの「動くもの・その2」を重ねる(設定する)のは、エンジニアリング的には、けっこうむずかしいことなのだという。この場合、「その1」が跳ね上げ式で開く車幅いっぱいのゲート。そして、そのゲートの一部に、横開きの人が1人通れるくらいのドアを設定。このクルマは、こういう組み合わせを成り立たせたということ。

…なるほど、たしかにクルマの部品で、「動くもの」が2つ以上重なっているシステムはあまり思いつけない。もしかしたら、多くのメーカーは、動くものの上には、もうひとつの動くものは載せないとして、こうした“デュアル稼働”の部品は作らないのかもしれない。

また、この「好発想」の“2つドア”リヤ・ゲートは、発想としても、また使い勝手としてもおもしろいのだが、ひとつ問題があるとすれば、それはゲート全体の重量が重くなることではないか。今回も、跳ね上げ式のリヤ・ゲートを開こうとすると、私が非力なせいか(笑)けっこう「エイヤッ!」と動かす感じになっている。

聞けば、横開きの小さいドアを持たないタイプのリヤ・ゲートと較べると、重量として9kgのプラスであるという。加えられた“もうひとつのドア”がどのくらい必要で、そして、どの程度便利か。これはユーザーそれぞれの判断ということになろう。

そして、このリヤ・ゲートのような「好発想」では、このクルマはもうひとつある。それは、カップホルダーが車内の至るところにあること。その数、何と「16」。やると決めたらやるんだ!…という徹底ぶりには圧倒されてしまう。ついでに、いわゆるコンビニ・フックも車室内に10ヵ所(!)あるのだそうだ。

そんな「徹底性」では、エンジンにもそれがある。プラス・ターボであれ、エンジンを1500ccでまとめると税制で有利になるが、しかしミニバンに搭載するならフラット・トルクであった方がいいはず。おそらく、こうした判断のもとに、ターボ付きエンジンであることをほとんど感じさせない、パワー&トルクの“山”が一切ないエンジンができあがった。

正確には1540回転だそうだが、このエンジンはスペックで、1600回転で最大トルクを発し、それが回転が上がっても維持される。メーカーでは「2400ccエンジン並み」としているが、十分なトルクを広範囲の回転域で発し、たとえば山岳路を走っても何のストレスもないエンジンになっている。ダウンサイジング+ターボというエンジンのひとつの使い方として、このステップワゴンは重要な提案をした。

では「スパーダ」の足が“活きる”場所は? 新ステップワゴンには、基準車というべきシリーズと、スポーティにキャラを振った「スパーダ」の二つの仕様がある。この両車はサスペンションの仕様も異なり、スパーダの方は、その外観に見合うような強化サスが付いている。

試みにワインディング路を走ってみると、その違いは明らかだ。スパーダの足は、ドライバーからの「入力」をガシッと受け止め、ムダなロールをさせずにコーナーに突入していく。対して基準車の方は、むしろロールはさせてしまって、ロールとともにコーナリングしようというコンセプトである。

…というように書くと、“コーナリング・マシン”としてはスパーダの方がいいと思いがちだが、ただ、このスパーダの足を本当に活かすためには、相当に速く走れる道が必要だとも感じた。たとえば、小さなコーナーの連続というよくあるワインディング路では、コーナーの「R」の小ささと、スパーダの足の“踏ん張り”の「リズム」がどうも合わないのだ。このスパーダで豪快にワインディング路を攻めるためには、相当な高速で“曲がれる”道が、まず必要。同時に、そんな高速コーナリングを可能にするドライバーの高度なスキルも要る。

市販開始後の1ヵ月では、スパーダ仕様が販売の70%ほどを占めているそうで、迫力あるスタイリングでもあり、その選択もわかる気がするが、ただ、基準車の足の“まとまり”もなかなか捨てがたいものがあることを、ここで記しておく。なお、市街地を流して走る時の乗り味については、この2つの仕様には大きな差はなく、スパーダの乗り心地が市街地で硬すぎるということはない。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★ 
オススメ度:★★★★


家村浩明|ライター&自動車ジャーナリスト
1947年、長崎生まれ。クルマは“時代を映す鏡”として興味深いというのが持論で、歴史や新型車、モータースポーツとその関心は広い。市販車では、近年の「パッケージング」の変化に大いに注目。日本メーカーが日常使用のための自動車について、そのカタチ、人とクルマの関わりや“接触面”を新しくして、世界に提案していると捉えている。著書に『最速GT-R物語』『プリウスという夢』『ル・マンへ……』など。

《家村浩明》

この記事の写真

/

ピックアップ

Response.TV