【ジープ チェロキー マンゴータンゴ 試乗】夕陽色のジープで西へ、「アメ車」イメージくつがえす心強さ実感…鈴木ケンイチ

試乗記 輸入車
ジープ チェロキー マンゴータンゴ
ジープ チェロキー マンゴータンゴ 全 45 枚 拡大写真

西へ、西へ。ただただ走り続ける。

シックなオレンジ色のボディカラーは「マンゴータンゴ」。その呼び名は、そのまま『チェロキー マンゴータンゴ』という5月末に発売された50台限定モデルの名称となった。4輪駆動モデル『チェロキー トレイルホーク』をベースに、マンゴータンゴのボディカラーとブラックのボンネットデカール、17インチのブラックのアルミホイール、コマンドビューデュアルペインパノラミックサンルーフ、セーフティパッケージ2などの特別装備を追加したモデルだ。

そのオレンジ色のボディカラーはきっと夕焼けに似合うはず。ほとんど思いつきのまま、クルマを走らせた。向かうは西。夕陽の沈む西だ。

コンクリートと鋼鉄で構築された首都高速の殺風景さを少しばかり我慢すれば、すぐに広々とした東名高速道路に辿り着く。3.2リットルのV6エンジンに、最新の9速ATを組み合わせた加速はスムーズそのもの。時速100kmで巡航中のメーターに目をむければ1400rpmほど。エンジン音は遠い。レザーシートに身をゆだねた室内には、ゆったりとした空気が漂う。

「アメリカ車はローテクだ」と言う人がたまにいるが、それはあまりにも時代錯誤だ。よく考えてほしい。インターネットもiPhoneもWindowsも、最新のIT系アイテムはすべてアメリカ発祥。ジープ チェロキーは、そんな土地からやってきたのだ。

当然のようにスマートフォンとBluetoothで連携可能な8.4インチのタッチスクリーンディスプレイが用意されている。USBのジャックも運転席まわりに2つあり、他に12V/DCと100V/ACの電源口まである。乗員4人が4人ともスマートフォンやPCを充電しながら乗車することが可能なのだ。また、カーナビも日本での使用を考えた日本語表示版を用意した。ただし、使い勝手や精度に関して日本製に軍配を上げたい。使えないわけではないが、日本製に慣れている人だと、とまどうようにも思う。

広々とした東名自動車道は、厚木を過ぎると箱根に向かって、上りのワインディングになる。オフローダーとして知られるジープであるが、最新型のチェロキーはオンロードが苦手なわけではない。まるでセダンのようなシャキッとしたフィールで、右へ左へとうねる道をきれいにトレースしてゆく。3.2リットルのパワートレインを搭載する2.2トンという大柄なクルマであるが、燃費をチェックしてみれば、高速中心ながら約12km/リットルで走る。サイズを考えれば、なかなか健闘した数字と言えるだろう。

箱根を超えれば、流れの速い新東名へ。右手に富士山、左手に駿河湾という雄大な景色は、東名高速道路の最大の見どころだ。景色を楽しみながら新東名をクリアすると、名古屋までは少し窮屈な東名高速へ逆戻り。ほんの少しの我慢で名古屋圏へ辿り着く。

ハンドルをむけたのは海上の数十メートルの高さを走る伊勢湾岸道だ。眼下に続く巨大なフェリーや向上、遊園地などが、中京圏の繁栄を強く印象づける。伊勢湾岸道を駆けぬけて亀山JCT経由で新名神へ。伊賀や甲賀など忍者で有名な地域ならではの深い山に、線を引いたような直線的な道が特徴的だ。

新名神を過ぎれば名神高速だ。琵琶湖を眺めながら一服。すでに400kmほどを走っているが、疲れはミニマム。前走者を追従するACCだけでなく、車線からはみ出そうになるとステアリング制御も行うレーンセンス車線逸脱警報プラスがあるのも疲労の少ない理由だ。こういうロングドライブこそ、最新の運転支援システムのありがたみが実感できる。

大阪圏の高速道路は、複数の路線が絡み合う。そんな複雑さに、歴史の長さを見て取ることができる。また、阪神高速では、若干の渋滞を体験。チェロキーのACCは、完全停止しても2秒以内ならば再発進も自動でやってくれる。これは、かなり嬉しい機能であった。ちなみに大阪の楽しみのひとつは、路線沿いにある岡本太郎氏の太陽の塔。あの巨大な姿を眺めることで、大阪に来たという実感が得られるのだ。

都市圏を抜けた先は山陽道。濃い緑の山々の中を駆けぬける、ゆるいワインディングだ。ここまで来たところで、夕暮れが近づいてきた。

旅の目的は夕陽である。どうせならば美しい瀬戸内で眺めようということで、広島の直前で高速を降りる。向かったのは呉市だ。撮影ポイントを探して、呉市の街中を流す。駐車スペースを探して、裏道にもクルマを乗り入れる。すると、さすがに全幅1905mmの大柄さに気を遣う。バックモニターやドライバーの死角にある障害物を検知してくれるソナーの存在は、本当に心強いものであった。

見つけたのは国道から瀬戸内海へ付き出た駐車スペースだ。道から瀬戸内の船に、荷を受け渡すためのものだろうか。狭い入口を抜けて、チェロキーを駐めた。ちょうど時間は19時。美しい瀬戸内の彼方に太陽が沈むところ。夕陽が海をオレンジ色に染めている。長駆の疲れも忘れる美しい一瞬だ。

夕陽を眺めるためだけのドライブ。言ってしまえば、ただひたすらに走るだけだ。それでも十分に旅を楽しめた。クルマと対話しながら、刻々と変化する道路と景色を味わう。目的地だけでなく、その過程も楽しいのがクルマでの旅だろう。それを再確認することのできたドライブであった。

鈴木ケンイチ|モータージャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材、ドライブ企画まで幅広く行う。いわば全方位的に好奇心のおもむくまま。プライベートでは草レースなどモータースポーツを楽しむ。現在の愛車はマツダ・ロードスター(NB6)。過去にNAやNB NR-Aなどロードスターを乗り継いできた。ロードスター・パーティレースにも参戦経験あり。

《鈴木ケンイチ》

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