【土井正己のMove the World】ギリシャ危機、ドイツ車を買うなら今?

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ギリシャ市内の様子(30日)
ギリシャ市内の様子(30日) 全 8 枚 拡大写真

ギリシャの債務問題が、再び危機状態にある。6月末から7月に迫るIMFや欧州中央銀行への借金返済ができない状況にあるからだ。ギリシャの通貨危機は、2009年に政府の財政収支に計算ミスが発覚したことに端を発している。

ギリシャは、もともと社会主義政党が強く、公務員の数や給与が西欧国に比べて異常に高かった。米国のリーマンショックで世界経済が落ち込んだことがきっかけで、財政赤字が巨大化し国債が暴落。ギリシャ国債を保有していた欧州の金融機関も大きな被害を受けたが、ここまで、何とか欧州中央銀行などが中心となって融資を繋いできた。しかし、繋いだ融資の返済もできない状況となったのが、今回の危機だ。

国民は、もう歳出カットだらけの政策には嫌気がさしており、さらなる緊縮をせまるドイツなどに強い反感がある。国民は、7月5日に「国民投票」でEUが押し付ける緊縮案を選ぶか、ユーロから離脱しても、緊縮をせず独自の道を行くかの選択をしなければならない。

◆ドイツ車メーカーにとっての「ギリシャ問題」

一方、ドイツ車メーカーにとっては、ギリシャ問題はプラスに作用している。ギリシャ問題のお陰で、欧州統一通貨であるユーロが価値を下げ、ドイツ車メーカーは、ユーロ安により価格競争力を高めているからだ。事実、ここ数年のドイツ車の日本での価格には、強い競争力がる。VWが世界1位の座を狙えるのも「ギリシャ問題のお蔭」という部分は大いにある。

ギリシャは、国民投票で方針を決めるようだが、これは以前からの手法だ。政権が判断せず国民にゆだねる。ギリシャ時代の直接民主制を見るようだ。もし、その結果、欧州からの財政支援を断り、ユーロから離脱するという選択を取るとどうなるか。しばらくは混乱するかもしれないが、ユーロは「ギリシャ問題という重し」が取れたように上昇する。そうすると、一番困るのは、欧州域外への輸出が多いドイツ、しかも自動車メーカーである。

実は、ドイツ車メーカーは、ギリシャ以外でも問題を抱えている。それは、中国だ。VWの中国での販売は世界販売の4割近い。これまで、VWは中国の将来を見込んで多大な投資をしてきた。その中国が、今年に入って経済が停滞、自動車市場も伸びてこない。5月は市場全体が前年比マイナス0.4%と微減の中、ドイツ車の前年比はマイナス10%と大きく落ち込んでいる。

そこに、このギリシャ危機だ。ユーロが跳ねあげると、一挙にドイツ車メーカーの競争力は失われていく。収益も大きく損なわれることになる。そうなると、日本など海外でのドイツ車価格は、当然値上がりが予想される。ドイツ車を検討されている方がいるのであれば、今のうちに予約しておくことをお勧めする。

◆日本車への影響は?

では、日本車への影響はどうか。トヨタ、ホンダ、日産などは欧州では、現地生産が中心になっており、為替の影響は限定的だが、マツダのように日本からの輸出販売を中心に行っているところはユーロ高により、現地での競争力が高まる。マツダのスカイアクティブ技術は、中国でも好評なので、益々元気になりそうだ。

◆「ギリシャ問題」はどうなるのか

さて、今回のギリシャ危機が、今後どうなるかを少し考えてみたい。今回の危機がこれまでと違う点としては、

(1)2010年当時に比べ、ギリシャ国債を保有している機関は限定的となっており、仮にギリシャが破たんしても、影響も限定的かつ短期的と見られている。
(2)2010年当時は、ギリシャの他、スペイン、イタリアなど南欧各国が債務問題を抱えていたが、これらの国は危機から脱出しており、今回の問題はギリシャに限られている。

こうしたことから、仮にギリシャがユーロを離脱しても、ショックは限定的であろうし、また、2010年当時言われていた「南欧各国の連鎖離脱からユーロ崩壊へ」というシナリオは、ほぼ考え難くなっている。

よって、私の見方としては、まず5日に行われるギリシャの国民投票では「ユーロ圏に残る」ということを国民は選ぶと思う。しかし、ギリシャの財務状況が急激に改善することはなく、前述した(1)、(2)の状況がさらに進み、2年後あたりにギリシャは「ユーロから離脱(切り離し)」するのではないかと思う。つまり、「時間の問題」ではないかということだ。

そうなれば、ユーロはどんどん値を上げて行くので、日本でドイツ車は買いにくくなる。「今がお買い時ではないか」と申し上げる理由である。

<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームである「クレアブ」副社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事

《土井 正己》

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