【アウディ A1スポーツバック 試乗】上質コンパクトとはこういうクルマを指すのだ…中村孝仁

試乗記 輸入車
アウディ A1スポーツバック 1.0 TFSI
アウディ A1スポーツバック 1.0 TFSI 全 13 枚 拡大写真

アウディのエントリーモデル『A1』に新たなグレードが追加された。アウディとしては史上初となる1リットル直噴3気筒ターボを搭載したモデルである。今回試乗したのはその4ドア版のスポーツバック。

因みに3ドアのA1は250万円を切る。タイトルにあるように上質コンパクトとはこういうクルマを指すと言ったのは、日本のプレミアムコンパクトを目指したマツダ『デミオ』のXDツーリングLパッケージにあれやこれやとオプションを装備すると、このA1と変わらない価格帯になる。しかし、その乗り味を比べてみるとやはりA1に1日どころか、1週間、否それ以上の差を感じてしまうのである。

具体的に最も顕著に違いを感じるのは、大きな入力を受けた時のリアサスペンションのいなし具合だ。デミオの場合、日本車として相当によくできていると思うのだが、同じ日に同じような条件下でこの2台を乗り比べると、やはりアウディの方がはるかにスムーズに走る。一方で安全ならびに快適装備の類はデミオの方がはるかに充実していて、この点に関してアウディの仕様設定には疑問を呈さざるを得ない。

肝心の史上初の1リットル3気筒ターボエンジンである。エンジン自体はVW『up!』に搭載されているものがベース。しかしターボ付きとなるとこれが初めてとなる。机上のスペックはピークパワー95hp、ピークトルク160Nmと、まあ大したことはない。そもそも1リットルターボなのだから、このくらいで当たり前なのだが、実は乗ってみるととんでもない…というか侮り難い。

この日は他に『Q3』の試乗会も兼ねていて、その2台を同時に借り出して走らせた。そして箱根の登りでQ3を担当した仲間のジャーナリストがかなりの勢いで駆け上がって行ったのだが、驚いたことにA1は涼しい顔でそれについていける。精々離されるとしたら高速コーナーだけ。タイトコーナーは向こうが重心が高く絶対的なコーナリングスピードを落とさなければならないからか、むしろこちらの方が速い。

トランスミッショは7速のSトロニック。パドルはつかないがシフトレバーをマニュアル操作すると、面白いように連続するコーナーをこなし、Q3を追い詰めるほどの実力の持ち主なのだ。やはり、走る、曲がる、止まるという走りの基本骨格の素晴らしさはまだまだ実力的に日本メーカーよりも上であることを痛感させられる。

その一方で、今や軽自動車にも付いているような安全デバイスは何故かアウディは全く装備していない。ライバルのメルセデスやBMW、果ては同じ系列のVWですら付けているブレーキサポートのようなデバイスすら選ぶことが出来ない。これは少々「?」がつく。因みに試乗車はオプションが82万円も乗って合計351万円に膨れ上がっていた。これだけの価格のモデルにこれといった流行りの安全デバイスがつかないのは一体何故?ということになる。しかしそうしたネガを差し引いて、走りの実力となるとこのコンパクトは上質であり、そしてとてつもない実力を持つ。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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