ZFが開発する未来の都市型スマートカーは、一体何ができるのか?…アドバンストアーバンビークル

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スマート・パーキング・アシスト
スマート・パーキング・アシスト 全 12 枚 拡大写真

2014年に、TRWオートモーティブの買収が両社間で合意に達したことを発表したZFは、5月15日にこの買収を正式に完了。創業100周年という記念すべき年に、システムサプライヤーとして、まさに歴史的な規模と機能の拡大を実現することになった。

そのZFが、出展を予定するIAA=フランクフルトモーターショー15に先立って、一部メディア向けに最新技術と製品を公開するイベントを開催した。効率=Efficiency、安全=Safety、そして自動運転=Automated Drivingと、さまざまな方向性から、自動車メーカー各社へと最新技術を提案しているZFだが、その象徴的な存在として今回のイベントに姿を現したのが、近未来の都市交通を想定した、エレクトリックドライブのコンセプトカー、『アドバンストアーバンビークル』だった。

◆都市部に適した機能

すでに市場にあるコンパクトハッチバック車のボディを使用するアドバンストアーバンビークルだが、そのメカニズムはもちろんZFによって開発されている。3基のモジュールに格納された2次バッテリーの蓄電容量は16kWh。特徴的なのは、半独立式のリアサスペンションの左右ホイール直近に、最高出力で40kWを発揮するエレクトリックモーターを一体化して搭載していること。

ZFはこれを「eTB」=エレクトリック・ツイストビームと呼び、それはキャビンスペース設計に、大きな自由度を生み出すことにも貢献する。最高速は150km/hと発表されているが、これは都市部での使用に特化したコンセプトカーであることを考えれば必要十分な性能だ。

フロントアクスルに新構造を採用し、操舵角を75度にまで増加させている点も見逃せない。それによって最小回転直径は7m未満となり、一般的な2車線道路でのUターン、また約4mという狭いスペースにも、一度の動きで駐車することを可能としている。後輪左右のエレクトリックモーターによるトルクベクタリング機能との協調制御も興味深い。

このフロントアクスル構造は、これもZFによる運転支援システム、「スマート・パーキング・アシスト」との組み合わせで、さらにドライバーに大きな利便性を提供する。このシステムは、駐車スペースの認識を支援するだけではなく、並列、縦列のいずれの方向にも完全自動での駐車を可能とするもの。

車体の前方、側方、後方に搭載された12基の超音波センサーと2基の赤外線センサーによって周囲の情報を取得し、それをもとにステアリングやトルクベクタリング、ブレーキといった駐車に関連するすべての系統を自動制御する。その制御はドライバーが降車した後でも可能で、この場合にはスマートフォンやスマートウオッチなどのモバイルデバイスを使用して、駐車機能を起動する。アドバンストアーバンビークルは、その指示によって歩行速度で自動的に駐車スペースを探し、その後にやはり自動で駐車プロセスを実行するのだ。

◆クラウド活用で進化する利便性

アドバンストアーバンビークルには、ほかにもさまざまなZFの新技術が搭載されている。ドライバーがステアリングホイールを握っているかどうかを、静電容量式のタッチセンサーによって検知するシステムは、完全自動運転の実現に向けてのベース機能として、今後のさらなる拡張性に大きな期待が持てる。

「PreVisionクラウド・アシスト」と呼ばれる、クラウドベースの運転支援機能は、従来までのGPSデータのみに頼るシステムとは異なり、すべての走行において車両位置や走行速度、経緯度に関するデータをクラウドに保存する。ドライバーが同じルートを再度走行した場合には、クラウドに保存されているデータと実際の車両走行データの差異から、例えばコーナー進入に最適な速度を計算。ブレーキ操作を行う前の段階で、エレクトリックモーターの出力を抑制する。これは安全性の向上はもちろんのこと、バッテリーの節約やブレーキシステムの保護にも貢献する。

ZFはさらに、このクラウドシステムを共用する、ローカル相互接続ネットワークの構築にも、積極的に取り組む方針を明らかにした。それによってクラウドからの渋滞情報等は、さらに有効的にそれを活用することが可能になる。ZFの考える近未来の都市型スマートカーは、結果として多くのドライバーを、運転のストレスから解放してくれるだろう。

《山崎 元裕》

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