【アウディ R8 海外試乗】最初の驚きは、一瞬で訪れた…山崎元裕

試乗記 輸入車
アウディ R8
アウディ R8 全 16 枚 拡大写真

アウディのモデルラインナップにおいて、『A8』とともにその頂点を極める存在なのが、2シーターミッドシップスポーツの『R8』だ。

そのR8がセカンド・ジェネレーションへと進化。前作では、まずV型8気筒エンジン搭載モデルが登場し、後に当時のランボルギーニ『ガヤルド』と共通のV型10気筒エンジンを追加設定してきたのに対して、新型はV型10気筒モデルからの市場投入となった。当然のことながらメカニズムの多くは、ランボルギーニ『ウラカンLP610-4』に共通する。

現在の段階では、同じV型10気筒モデルで、スタンダードモデルと、Plus=プラスと呼ばれる高性能仕様の2タイプをラインナップする新型R8。まずステアリングを握ったのは、もちろんより刺激的な走りが期待できるプラスの方だった。ちなみにこのプラスが最大の特長とするのは、スタンダードな仕様と比較して、最高出力では70ps、最大トルクでは20Nmのエクストラを得た、610ps&560Nm仕様の5.2リットル・V型10気筒自然吸気エンジン。

ここ最近、世界の自動車メーカーは動力性能と環境性能をさらに高水準で両立させるための策として、過給システムを採用したダウンサイジングエンジンの開発に積極的だが、アウディがこのV型10気筒エンジンを、前作から継続してR8に搭載してきたことには特別な、そして好意的な感情を抱かずにはいられない。

もちろんさらなる高効率化を実現するために、アウディはシリンダー・オン・デマンドやコースティングといった機能など、さまざまな新技術を導入している。ミッションはデュアルクラッチ式の7速=Sトロニック。駆動方式はもちろんフルタイム4WDで、これまでビスカスカップリング方式だったセンターデフは、電子制御多板クラッチ式へと進化している。基本構造体となるスペースフレームは、軽量性と高剛性を考慮して、アルミニウムとカーボンのハイブリッド構造を持つ。

モーターショーでは、すでに何回もそのフィニッシュを見る機会があった、新型R8のエクステリアとインテリアのデザインだが、今回のテストドライブでもまず、ここにアウディ流の演出、言葉を変えるのならばランボルギーニとのキャラクターの違いが表現されていることが印象的だった。

新型R8のデザインは、基本的には前作のコンセプトを継承しつつ、同時にフロントセクションのデザインに象徴されるように、アウディの最新デザイン言語を採り入れたもの。前作が特徴としていたサイドブレードは、新型では上下に二分割されるデザインとなった。さらに試乗車のプラスには、オプションの20インチ径ホイールも装着されており、強靭なフットワークへの期待は、ここからも大きく高まる。

さらに好印象が得られたのはインテリアのデザインだ。メーターパネルにはバーチャルコクピットが採用され、ほぼ全面にナビ画面を表示するなど、さまざまなデザインにそれを切り替えることができる。

ステアリングホイール上にさまざまなスイッチをレイアウトするのは、これもまたウラカンと同様だが、実際の操作性は新型R8の方が高いように思う。このあたりはデザインにおいても、少なからずの驚きが必要とされるランボルギーニと、ひたすらに機能を追求するアウディというブランドの違いとでも評するべきか。

ウラカンの「ANIMA」に相当する、「アウディドライブセレクト」で、まずは「コンフォート」モードを選択し、オンロードからテストドライブをスタートした。

最初の驚きは、一瞬で訪れた。同世代のウラカンと比較しても、そしてまた前作のR8と比較しても、新型R8の乗り心地や静粛性は、まさに画期的な進化を遂げていたのだ。

特に乗り心地に対しての満足度は高く、これは例のハイブリッド型スペースフレーム、そしてサスペンションそのものの持つ剛性が、非常に高いことを物語っている。エンジンのサウンドがコックピットの背後から響くことを除けば、そのコンフォートな感覚は、A8に象徴されるアウディの高級サルーンと変わるところはない。

混雑した市街地を抜けたところで、走行モードを「ダイナミック」に変更し、本格的に新型R8のパフォーマンスを探ってみた。

ミッドのV型10気筒エンジンは、610psの最高出力に象徴されるように、実に刺激的なパワーユニットだ。ダイナミックモードではエグゾーストサウンドもさらに官能的な響きとなり、また7速Sトロニックも、よりスポーティーなシフト制御を見せるようになる。

アクセルペダルを一気に踏み込めば、瞬時に強烈なパワーが炸裂し、そして8500rpmに設定されるレッドゾーンまで、一切のストレスを感じさせることなくタコメーターの針は駆け上がる。これこそが高性能な自然吸気エンジンの魅力だと、再確認させられた次第だ。

今回のテストドライブ・プログラムには、サーキット走行のセクションも用意されていた。ここではアウディドライブセレクトとは別の、「パフォーマンスモード」スイッチで「ドライ」モードを選択。新型R8のパフォーマンスをフルに楽しむことができた。

感動的だったのは、そのスタビリティの高さだ。まさに電光石火の如く、瞬間的に最適な前後駆動力配分を実現する4WDシステムの恩恵で、アクセルを踏み続けるかぎりは、R8は自らの制御でスピンを避け、圧巻のトラクション性能を感じさせながらコーナーから脱出するのだ。

ミッドシップスポーツは、とかく限界を超えた後の挙動がシビアになる傾向があるが、新型R8はそのような不安とは無縁なのだ。そしてやはりオプションで装備されていた、軽量なカーボンセラミックブレーキも、このサーキット走行のようなシチュエーションでは、常に素晴らしいフィールを感じさせてくれた。

高性能な「V10プラス」をドライブした後では、スタンダードな「V10」の走りはとてもジェントルなものに感じられた。とはいえそれもまた、望みさえすれば560psものパワーを発揮することのできるスーパースポーツなのだ。プラスとの違いはサスペンションのセッティングにも設けられており、例のジェントルな感覚は、それもまた大きな理由となっているのだろう。

それにしてもR8は、何と飛躍的な進化を遂げたのだろう。アウディによれば、新型R8にはこれからも、さまざまな派生モデルの誕生が計画されているという。オープン仕様の「スパイダー」、あるいはエレクトリックドライブの「e-tron」などは、その代表的な例。モータースポーツの世界では、すでに新世代GT3マシンの「LMS」も登場し、5月に開催されたニュルブルクリンク24時間レースではデビューウィンを飾っている。

新型R8は、これからもミッドシップスポーツの市場で、独自の地位を築いていくに違いない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

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