ムヒディン・ヤシン副首相の更迭で党内の不協和音が強まっている与党第一党・統一マレー国民組織(UMNO)だが、後任のアハマド・ザヒド・ハミディ副首相の「ある党幹部が野党と組んで政府転覆を企んでいる」との発言が波紋を呼んでいる。
ザヒド副首相は、15日に開催されたアンパン支部会議に出席。信頼できる筋からの情報だとして「あるUMNO幹部が87人の野党議員と共に政府打倒のために動いている」と言明。自身では名前は明かさないが、そのうち誰なのか明らかになるだろうと述べた。その上でこうした陰謀は許さないと強調した。
ザヒド副首相によると、謀反を企てているとされるUMNO幹部が与党連合・国民戦線(BN)系の議員37人をそそのかし、野党議員87人、無所属議員1人と語らって、10月開会の国会で内閣不信任案を提出する計画だという。
これに対してムヒディン氏は、そのような企てに加わっておらずザヒド副首相が指摘する人物は自分ではないと強調。1987年に起きたUMNO分裂騒動の主役であるラザレイ・ハムザ議員(元財務相)も関与を否定した。ラザレイ氏は先に、ナジブ首相批判の急先鋒であるマハティール・モハマド元首相と会っていたが、これについては「私的な用件だった」と説明している。
一方、ザヒド副首相は、謀反を企てているとされるUMNO幹部が16日にナジブ首相公邸を訪れると示唆したが、当日には該当するような人物の出入りはなかった。また同副首相は、当該人物がムヒディン氏ではないとも明らかにした。
ザヒド副首相が詳細を伏せていることも発言の真意を疑わせることとなり、野党などからはザヒド副首相による作り話だとする声も上がっている。