【VW パサート 試乗】実を取るか、見栄を張るか…中村孝仁

試乗記 輸入車
VW パサート ハイライン
VW パサート ハイライン 全 7 枚 拡大写真

VW『パサート』の市場におけるライバルといえば、これまではハイエンドのモデルではなく、プジョーだったり、フォードだったり、あるいはルノーだったりしたが、今や日本市場にはプジョーしか残っていない。

【画像全7枚】

というわけで、新しいパサートがライバルとするのは必然的にさらに上級のメルセデス『Cクラス』、BMW『3シリーズ』、ジャガー『XE』、ボルボ『S60』、それに身内の食い合いとなるアウディ『A4』などになる。

だからパサート自身必然的に心してかからないとならないわけである。勿論、価格的優位性は非常に高く、下は329万円から上は460万9800円で、ライバルたちの最も安いクルマがほぼVWの最高位に匹敵する。ではこのハイエンドDセグメントのクルマとスタンダード(失礼)Dセグメントのクルマにはいったいどれほどの差が、どのようにあるのか。

まず装備関係を見ると、公平性を期すためにVWは最も装備の充実しているハイラインをチョイスするが、ほぼ対等以上ともいえる充実した装備を備えている。特に安全装備の充実は際立っていて、身内のアウディがすべてオプションとする装備をパサートは標準化している。

では走りに差があるのか。確かにすべてのモデルが1.4リットルTSIエンジンしか設定がなく、パワートレーンにチョイスがないのはライバル中アウディと共に唯一で、不満が残る点かも知れない。それに机上の性能では確実にライバルに劣る。では実際に走らせてみてどうか。少なくともパフォーマンスに関する限り日本の道路状況ではこれで十分。ハイエンドのライバルたちはこれに加えてゆとりのあるところが大きな違いか。

仕上がり感はどうか。見た目の生産クオリティーに関する限りは同等と言っても過言ではない。ただ、メルセデスやジャガーのように骨格に使う素材に凝ってはいない。室内のウッドパネルもデコラだから、ホンモノ感は希薄だ。まあ、このあたりがハイエンドとの差かもしれない。

というわけで、価格差に対する内容の差は厳然として存在するから、やはりVWの魅力は機能性の高さとサイズ感から来るゆとりの大きさにあると思う。今回はヴァリアントの「Rライン」とセダンの「ハイライン」の乗り比べをした。そこで、このクルマの乗り味がタイヤサイズによって大きな差があることを確認した。

Rラインはオプションの235/40R19タイヤを装着していたのに対し、セダンのハイラインは215/55R17という標準のタイヤを装着していたが、ワゴンとセダンというボディ形状の差を差し引いてもRラインの太く扁平率の高いタイヤが引き締まってフラット感の高い乗り味を示すのである。17インチタイヤは確かに路面からのあたりといなし具合がソフトで、常に一般道という人にはこちらの方が良いのかもしれないが、リバウンドの際にソフトさゆえのプルッとする締まりのなさが気になってしまう。それに高速に乗れば、シャキッとした様は断然19インチが上。1460kgという車重のなせる技なのかもしれないが、足元は引き締まっていた方が快適であった。というわけで、個人的にはオプションで選べる18インチの太いタイヤチョイスが正解のように思えた。

新しい1.4リットルTSIには可変気筒システムが付く。高速で無負荷の状態だとそれを知らせる2シリンダーモードという表示がメーター内に現れるが、運転している側はそれが4シリンダーか2シリンダーかを体感することはない。エンジン自体は軽快感が高く、スムーズである。

ハイラインではナビを含むインフォテイメントシステムが標準装備されるから、オプションでチョイスするとしたら、スライディングルーフとLEDヘッドライトやコーナリングライトなどのライト回り程度。つまりほぼ完全なフル装備である。後席のゆとりやトランクスペースのデカさなどは確実にハイエンドのライバルを上回る。だから委少しだけ高級感のある機能性の高いセダンが欲しければ、お安いパサートをどうぞ、ということだ。実を取るか見栄を張るか。パサートの分かれ道はそこにある。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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