【中田徹の沸騰アジア】アジア二輪車市場は成長鈍化、「次」の有望市場でインド系が先行

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インドネシア バイク(イメージ)
インドネシア バイク(イメージ) 全 4 枚 拡大写真

世界中で、アジアほど二輪車が生活に浸透している地域は他にない。これは気候や道路状況、所得水準、文化などの様々な要因が絡み合った結果である。ただ、最近の二輪車販売をみると、インド市場が右肩上がりの成長を続けているものの、東南アジアでは伸び悩みが目立つ。

◆世界最大の二輪市場はインド、中国は2位

二輪車の世界全体での販売台数は近年、ヤマハの資料などによると、年間5500万台(内燃車のみ)で推移しており、このうち約4300万台がアジアで売られている。経済性はもちろんだが、温暖な気候に恵まれるこの地域では、風を切って走る心地良さも二輪車の人気を支えている。また、運転しやすいスクーターのラインアップが増えていることもプラス要因だ。

現在、世界最大の二輪車市場はインドということになっている。2009年時点で中国市場(1700万台強)がインド市場(865万台)の2倍の規模だったが、2012年にインド(1382万台)が中国(1300万台弱)を上回った。2015年にはインド市場が1600万台を超えると予想される一方、中国での販売台数は1000万台を下回る可能性がある。

中国で二輪車販売が縮小している理由は、人々の移動手段が「自転車~二輪車~四輪車」の後半に差し掛かっているためだけではない。北京などの大都市では、渋滞や排ガスなどの問題を抑える目的で二輪車(内燃車)へのナンバープレートの新規発給が中止されており、代わりにナンバープレート取得の必要がない電動スクーターが増えている。電動スクーターの内需は2011年までに3000万台を超えており、これを含めると二輪需要は年間4500万台だ。

インドの二輪車市場を巡っては、将来的に3000万台に達するとの見方もあるが、当面は2000万台を目指す格好だ。こうしたなか最大手ヒーローモトコープと2位のホンダが新工場建設を相次いで発表。ヒーローが年産1120万台を視野に入れる一方、ホンダは640万台体制を整える計画だ。両社の生産能力の差は大きいが、ホンダが猛烈な勢いで追い上げており、首位攻防戦は接戦に入る見通しである。

◆インドネシア市場は大幅減に

印中に続く世界3位の二輪車市場であるインドネシア。2011年に過去最高の801万台に達した後は800万台に届かない水準で足踏みしている。2015年1~6月の販売台数は前年同期比24.5%減の317万台。通年で650万台程度になる可能性があり、2010年以降で初めて700万台割れが濃厚な状況だ。

成長に陰りが見えるのはインドネシアだけではない。ベトナム市場は2011年に356万台へ拡大したが、2014年には271万台となり、ピーク時の4分の3に縮小した。すでに普及率が高く、成長余地はあまり残っていない。四輪車の普及拡大期のタイでは、二輪車市場は200万台前後で頭打ちとなっている。また、「二輪車文化がない」とも言われるフィリピンでは、ベトナムを超える人口を持ちながら、二輪車販売が年間80万台に満たない。

◆アジアの次の有望市場でインド系が活躍

インドを除くアジア主要国の二輪車市場が既に全盛期を過ぎたとみられる一方で、二輪車メーカーはアフリカなどにも視線を向けるようになっている。特に100万台市場となったナイジェリアが有望視されている。

アフリカ市場へのアプローチでは、インドのバジャジ・オートが意欲的だ。バジャジは、インド国内の二輪車市場でシェア4位だが、輸出に限れば最大手。2015年3月期の二輪車輸出を約160万台に増やした。アフリカ向けは74万台で、このうちナイジェリア向けが50万台弱である。ナイジェリアではトップシェア42%(バジャジ推定)を握り、ウガンダや南スーダン、エチオピア、コンゴ、ケニア、アンゴラでも販売首位を誇る。

ホンダやヤマハもアフリカ市場の開拓を狙うが、今のところ苦戦している。バジャジの製品には、価格競争力の高さに加え、品質の良さが備わっているため、日系ブランドはシェアを伸ばせていない。インドの半分にも満たないアフリカ市場に対する投資意欲の差もプレゼンスの差となって現われている。アジアの「次」の有望市場を巡る競争では当面、日系がバジャジを追いかける構図が続きそうだ。

《中田徹》

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