【中田徹の沸騰アジア】低成長に悩むインドネシア経済…ルピア安直撃で自動車市場は2割減に

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インドネシア国際モーターショー(IIMS)2015
インドネシア国際モーターショー(IIMS)2015 全 4 枚 拡大写真

今年8月24日、筆者がインドネシア・バンドン地区の自動車部品メーカーを訪問した時のこと。「1万4000…」。為替ニュースを聞いた、ため息混じりの日本人社長の言葉には、現状の深刻さと将来への不安が滲んでいた。

◆通貨安が経済を直撃

インドネシア経済が停滞している。8月5日に発表された4~6月期のGDP成長率は4.67%となり、1~3月期の4.72%からさらに低下。2009年以来の低い伸び率に沈んでいる。経済停滞の主因のひとつが政府予算の執行の遅れで、インフラ投資強化を掲げるジョコ・ウィドド大統領の経済政策が進んでいないことが指摘される。グローバル経済の減速を背景とした輸出減少もマイナス要因だ。「新常態」と呼ばれる中国経済の失速の影響がインドネシアにも及んでいる。

こうした中、特に深刻なのが通貨安だ。年初時点で1万2500ルピアだった対ドルレートは、米利上げ観測の高まりを受けて8月24日に1万4000ルピア台に下落した。さらに9月29日までに1万4700ルピア前後に下げる中で、インドネシア中央銀行は9月30日に為替安定政策パッケージを発表。これによりルピア安の流れは一服したが、10月20日時点で1万3600ルピア前後と、1998年以来17年ぶりの安値圏にとどまっていることに変わりない。

話が少し脱線するが、原油・石油の純輸入国のインドネシアではこれまで慢性的な貿易赤字が通貨安の主な原因となっていた。しかし、最近は様子が異なる。資源価格の下落の影響でオイル・ガスセクターの貿易赤字が縮小しているほか、プラスチックや自動車・部品、鋼材などの輸入が減少している。輸出縮小も続いているが、輸入額の減少と比べると少ないため、2014年12月以降においては貿易黒字となっている。

通貨安に話を戻すと、原材料・部品や完成品を輸入する企業の経営環境は過酷だ。一方で、輸出産品が限られていることや現地調達率が高くないことから、通貨安による輸出競争力向上の恩恵を受けている企業は少ないようだ。裾野産業が薄いため為替変動に対応しきれておらず、この点でインドネシア経済・産業が抱える構造的な悩みはとても深い。

◆自動車市場も後退、2015年は2割減に

景気悪化の影響は自動車市場にも及ぶ。四輪車販売は2014年9月以降、前年同月比でマイナスが続いており、2015年1~9月では前年同期比18.1%減の76.5万台となった。現地自動車工業会GAIKINDOは2015年の四輪市場が「前年並みの120万台になる」と年初時点で予測していたが、ルピア安などの影響による需要低迷を受けて下方修正を迫られ、10月半ば時点で「前年比2割減の95万~100万台」と見込んでいる。

消費活性化を狙う中銀は6月23日に自動車ローンの頭金規制を5%引き下げると発表(乗用車:30%から25%)。また、8月半ばにはインドネシア最量販車の小型多目的車、トヨタ『アバンザ』が大幅改良された。新型アバンザについては、1000万~1400万ルピア値上げされた影響が注視されるが、需要喚起が期待される。

さらに2016年にはホンダ『BR-V』、トヨタ『シエンタ』などが発売される予定だ。2015年の新車市場は100万台に後退するものの、新車効果が追い風となって2016年前半には需要回復に転じると予想される。

《中田徹》

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