子ども同士が学校で大ゲンカ…治療費・慰謝料は誰が払う?

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弁護士 篠田恵里香氏
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 「学校で子どもが怪我」というトラブルはよくあることだろう。怪我となれば、当然、治療費や慰謝料の話になり、怪我をさせた子どもやその親の責任、学校側の責任などが問題になる。家庭の問題はもちろん、ご近所トラブルにも詳しいアディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士に学校での子ども同士の怪我について聞いた。

子ども同士がケンカして怪我、責任を負うのは誰?

 子ども同士のケンカで怪我となった場合、子ども自身に「自己の行為や責任を理解できる能力(12歳程度が目安)」があれば子ども自身が責任を負います。ただ、子どもには通常支払い能力がありませんので、親が「子どもの監督義務を果たしていない」ことを理由に、子どもに代わって責任を負う流れとなります。

 学校側は「生徒が安全に過ごせるよう配慮する義務」を負っていますので、この内容として、生徒たちが怪我をしないよう配慮する義務も負うと考えられます。過去の裁判例では、「ケンカや暴行をしたことのある生徒について指導監督しなかった場合は学校側も責任を負う」趣旨を判決で示したものがあります。たとえ現場に教師がいなかったとしても、ケンカや暴行の可能性を把握しながら適切な措置をとらなかったような場合は、学校側も責任を負うと考えられます。

大怪我で手術…治療費や慰謝料は請求できる?

 大怪我となるケースでは、純粋な治療費以外に、歯が欠けた場合のセラミック代や傷跡を修復するための縫合手術代(形成外科代)などが相手方に請求できるかも気になるところです。

 基本的には、「なるべく元通りに戻す」のが賠償責任の基本なので、医師の判断により、「セラミックで元の歯に近づけます」「傷跡が改善します」ということであれば、通常は「治療のために必要な費用」として、賠償請求が可能です。また、車での送迎が必要となった場合は、症状回復までに必要な費用として、タクシー代や親の付添費等の賠償が認められる可能性もあります。

 子どもの怪我となると親御さんも怒り心頭で、直接相手の自宅に怒鳴り込むなどのトラブルも多いようです。ここで学校側が仲裁に入るべきかですが、学校側は、学校教育の場において適切な配慮をすべき義務はありますが、学校外の親同士の喧嘩の仲裁に入るべき法的義務まではないといえるでしょう。ただ、事実上、当事者同士では感情的になりやすいため、学校側が仲裁的な立場で説明することが効果的な場合は多くあると思われます。

一般的には「菓子折りを持ってお見舞い」で解決…保険も視野に入れて

 一般的には、子ども同士の間で怪我が発生した場合、「治療費と見舞金、多くとも数万円程度」で話を済ませるケースや、「菓子折りを持ってお見舞いに行く」ことで解決することも多いようです。ただ、法的な考え方は、たとえば慰謝料については、「1か月の通院で20~30万円程度」となりますし、大きな傷が残ったケースでは、「数百万~数千万円の賠償」の話になる可能性は十分あります。

 今後のお付き合いを考えて大ごとにはしないというのもひとつのやり方ですが、裁判などの話になった時は、相当大きな賠償額になることも考えられます。万が一の時のために賠償責任保険などに加入しておくことも視野に入りますね。

 学校でのトラブルは「大事な子どものこと」、「目に見えない場所で起きる」といった特殊事情から、感情的になりやすく、法的にも責任の所在が複雑になっています。もしお困りの場合は、専門家である弁護士等に相談し、間に入ってもらうのもひとつの方法ですね。
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篠田恵里香(弁護士)
 東京弁護士会所属。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。夫婦カウンセラー(JADP認定)資格保有。独自に考案した勉強法をまとめた「ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法」(あさ出版)の執筆ほか、「Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ」(テレビ朝日)などメディア出演も多い。

学校での怪我…治療費は慰謝料は誰が払う?弁護士に聞く子どものトラブル

《編集部》

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