【マツダ CX-3 & ホンダ ヴェゼル】日常使いから郊外レジャーまで…4WDディーゼルと2WDハイブリッドを乗り比べ

自動車 ビジネス 国内マーケット
マツダ CX-3 & ホンダ ヴェゼル 郊外レジャーで乗り比べ
マツダ CX-3 & ホンダ ヴェゼル 郊外レジャーで乗り比べ 全 44 枚 拡大写真

日常使いでもアウトドアレジャーでも、頼もしいパートナーになってくれるのが、コンパクトカーをベースに誕生したクロスオーバーSUVである。日本の道路事情にマッチしたサイズだから扱いやすいし、経済性も高い。このクラスのクロスオーバーSUVのなかで、もっとも販売台数が多いのは、『フィット』のメカニズムを移植したホンダの『ヴェゼル』だ。これを追っているのが、2月に登場したマツダの『CX-3』である。好調に販売台数を延ばし、知名度も高まってきた。

CX-3の注目ポイントは、パワーユニットだ。『デミオ』で好評の1.5リットル4気筒ディーゼルターボ(SKYACTIV-D)を進化させ、搭載した。トランスミッションは6速ATと6速MTを設定する。

ヴェゼルの主役を務めるのは、1.5リットルの直噴4気筒エンジン+モーターのハイブリッド車(HV)だ。こちらは7速デュアルクラッチのDCTを採用する。両車とも前輪駆動の2WDに加え、電子制御のオンデマンド式4WDをラインアップした。ちなみに試乗したのは、CX-3が4WD、ヴェゼルが2WDである。

◆都心から1時間半の奥多摩へドライブ…高速走行のフィーリングを試す

試乗コースに選んだのは、東京都内から1時間半ほどで行ける行楽地、奥多摩だ。四季を通じて絶景を楽しめ、ハイキングコースやキャンプ場も多い。まずは高速道路で両車のフィーリングをチェックしてみる。クリーンディーゼルを積むCX-3は、2.8リットルクラスのガソリンエンジンと同等のトルクを1000回転台から発生し、気持ちよい加速を見せつけた。そこから上でも活気があるなど、広範囲の回転域で厚みのあるトルクを発生するのが魅力だ。

ディーゼルはターボなどの過給機と相性がよく、燃費効率も優れている。マツダ自慢のSKYACTIV-Dは、圧縮比を下げることなどによって環境性能を高めた。だからヨーロッパ勢のように複雑なNOx後処理装置なしでクリーン化が可能になったのである。圧縮比を低くしているから軽量設計が可能だし、高回転の伸びもいい。また、ディーゼル特有のガラガラ音と振動も抑えることができた。

軽やかに回り、低回転からモリモリとトルクが湧き上がるから高速道路のランプの進入では俊足を披露した。安全に本線に合流できるし、レスポンス鋭く加速するので追い越しも余裕でこなす。また、勾配のきつい登坂路でも元気な走りを見せている。魅力はそれだけではない。知らされていなければディーゼル車と分からないほどキャビンは静かだ。

1.5リットルエンジンにモーターのヴェゼルも、高速道路や市街地で活気ある走りを披露した。上質な加速フィールで、CX-3のような豊かなトルク感は望めないが、モーターの後押しによって軽快にスピードを乗せていく。とくにスポーツモードを選ぶと冴えた走りを見せる。7速DCTは応答レスポンスが鋭いので、追い越しも意のままだ。その逆にイーコンモードで丁寧なアクセルワークを心がければEVの守備範囲は広がり、燃費がいい。CX-3に差をつけるのは走行中の静粛性である。後席でも上級クラスのセダン並みに静かだった。

◆市街地を走行…ハンドリング、乗り心地の違いは?

街中では両車ともフレキシブルな走りを見せてくれる。CX-3は低回転から太いトルクを発生するし、アイドリングストップも作動するからストップ&ゴーの多い市街地でもストレスを感じない。HVのヴェゼルも低速走行をそつなくこなす。メーター内のコーチング機能も分かりやすく、穏やかな運転をすれば好燃費を期待できる。EV走行のときは驚くほど静かだ。会話が弾む。だが、道路状況によっては選択ギアを迷い、ちょっとギクシャクした動きになることがある。

ハンドリングは、どちらも軽快だ。乗り心地を損なわない範囲でスポーティ指向に振っている。CX-3のサスペンションはしなやかに動き、走るステージに関わらずコントロールしやすかった。重いディーゼルターボを積んでいるのだが、正確なハンドリングを身につけている。ワインディングロードでも背の高さを意識させない気持ちいいコーナリングを楽しめた。また、ブレーキ性能も優秀だ。

ヴェゼルも軽やかなフットワークを披露した。こちらも舵の利きがよく、素直なハンドリングだから狙ったラインに乗せやすい。高速道路での直進安定性も良好である。ただし、乗り心地はCX-3より引き締まった印象だ。路面によっては突き上げを感じた。

◆未舗装路や悪天候でも安心のCX-3、車内空間に魅力あるヴェゼル

クロスオーバーSUVの魅力のひとつ、それはオフロードや雪道での走破性能が高いことである。4WDなら、かなりのところまで踏み込むことができ、いざと言うときの安心感も絶大だ。最近はゲリラ豪雨に見舞われることも珍しくなくなっている。そんなときでも4WDなら、より安全な走りが可能だ。

CX-3は「i-ACTIV AWD」と呼ぶ電子制御4WDシステムを採用している。これは湿式多板クラッチを用い、その締結力を電子制御化したスタンバイ式の4WDシステムだ。滑りやすい路面でスリップを検知すると後輪にトルクを配分し、安定方向に導く。各種のセンサーからの情報をもとに後輪のトルクを自動制御するが、運転状況や路面状況を先読みして、瞬時に、最適に制御するのが特徴だ。燃費の悪化も防ぐことができる。ちなみにこの「i-ACTIV AWD」は『CX-5』や『デミオ』など他モデルにも搭載されており、サイズやトルクに合わせ最適化されている。

滑り出す予兆を素早く正確に感知し、瞬時に後輪にもトルク配分するCX-3の電子制御4WDシステムは賢い。雪道を走ったことがあるが、応答レスポンスが鋭く、滑りやすい路面でもコントロールしやすかった。コーナーが連続する山岳路でもアンダーステアに手を焼くことなく狙ったラインに乗せやすく、はらんだときの修正コントロールもたやすかった。ディーゼルエンジンならではの太いトルクも運転のしやすさに貢献している。ただし、最低地上高は160mmだし、対地障害角も少なめだから油断は禁物だ。

ヴェゼルは2WDだったが、ホンダの「リアルタイム4WD」の印象も書き添えておこう。ホンダとしては初めてハイブリッド車と組み合わせた。電子制御化することにより後輪へのトルク配分を緻密に行うのが特徴だ。だが、予知機能を加えたCX-3と比べると制御はちょっと甘いと感じた。

ヴェゼルはCX-3よりキャビンが広く、後席に座っても窮屈と感じない。ラゲッジルームも人数分の荷物を収納できる広さだ。買い得感のある1.5リットルのガソリンエンジン搭載車も設定するなど、子育て世代のファミリーには魅力と映る。

CX-3は広さでは一歩譲るが、ディーゼルターボならではの力強いトルクと軽快なハンドリングが魅力だ。当たりの柔らかなシートはホールド性もよく、ロングドライブで疲れを誘わない。実際の燃費もハイブリッド車のヴェゼルに迫る18.0km/リットルをマークした。ヴェゼルは18.6km/リットルを記録したが、こちらはHV、しかも2WDである。また、ガソリンより軽油のほうが燃料コストは安く済むから魅力は大きい。食わず嫌いの方も、一度、ディーゼルターボを積むCX-3のステアリングを握ってみれば、HVとは違う世界も見えてくるだろう。

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. ドライブ中の突然の曇り問題にサヨナラ! DIYでウインドウ曇り防止 ~Weeklyメンテナンス~
  2. ルノー『キャプチャー』新型、4月4日デビューへ
  3. メルセデスベンツ、新型パワートレイン搭載の「GLA180」発売…高性能モデルAMG「GLA45S」も追加
  4. 日産『エルグランド』一部仕様変更、安全装備を強化
  5. シトロエンが新型SUVクーペ『バサルト・ビジョン』を発表 南米で2024年内に発売へ
  6. 【メルセデスベンツ Eクラス 新型試乗】SUV全盛の今に、果たしてどのような人が選ぶのだろう?…河村康彦
  7. メルセデスベンツ『Gクラス』改良新型…449馬力の直6ツインターボ搭載、表情も変化
  8. 「トヨタバッテリー」へ社名変更、多様な電動車用バッテリーを提供
  9. 「フォルクスワーゲンR」、独立ブランドに…今夏新パビリオン開設へ
  10. BYDが高級ブランド デンツァ『D9』の先行受注を開始! 同じ右ハンドル市場の日本投入は?…バンコクモーターショー2024
ランキングをもっと見る