【アウディ TT 試乗】デートカーではない、スポーツカーなのだ。わかっているが…岩貞るみこ

試乗記 輸入車
アウディ TTクーペ 2.0TFSI クワトロ
アウディ TTクーペ 2.0TFSI クワトロ 全 17 枚 拡大写真

甘さを廃しスポーツ系への主張をする『TT』である。スタイルの表現同様、エッジの効いた走り。クワトロの4WD走行は重心が低く、さらに走行モードを変えてダイナミックに切り替えれば、地面にぴたっと張り付いたような走りになる。4つのタイヤが路面とつながるダイレクト感は、アウディならではの安心感だ。

スポーツカーゆえ、ドライバーズカーであることは言うまでもなく、後部座席は、ほぼ使えない。身長170cmの私であれば天井にアタマがあたってまっすぐ座れないし、運転席で私のドラポジにすると、後部座席は私の太いふくらはぎでは入るための十分な隙間ができない。モデルさんなら別かもしれないが。

いや、後部座席はどうでもいいのだ。カバンなりジャケットなりが置ければそれでいい。エスコートすべき人は助手席に座ってもらうのだ。しかし、ここでTTの場合、助手席に座る人とドライバーとの関係性がふつうとは少し異なる。バーチャル・コックピットの存在があるからだ。

速度計やタコメータなどを、画面上に「絵」として見せるコックピット。ついでに、そのふたつのあいだにはナビの画面がある。ドライバーズカーであれば、視線の動きも少なく、運転により集中することができる。

しかし、ナビの使い方は、前席にふたり座った場合、彼らの関係性によってそれぞれ違う。なにごとも決定権を持ち、ぐいぐい引っ張っていくタイプのドライバーであればこの位置でいいかもしれない。ただ、ナビが正確に位置情報と誘導をしたとしても、初めての道や町では、曲がる交差点が「これ」なのか「ひとつ先」なのか、迷うことがある。

このときは、助手席に座る人が画面を注視し「次、右ね。あそこのコンビニのところ」と、さりげなく教えてくれるとドライバーは助かるものだが、このバーチャル・コックピットの場合、それができないのだ。ぐいぐいタイプのドライバーなら、そんなことは気にもとめないのかもしれないが。

助手席に座るタイプが、おせっかいが好きな場合は、フラストレーションがたまる。助手席から身を乗り出してのぞきこむしかない。このスタイリッシュなクルマのなかで、なんとも慌しい状況になってしまう。かっこ悪いぞ。助手席は、あきらめてドライバーに任せればいいのだろうが、おせっかい好きは我慢できるか心配だ。ドライバーが道を間違えてケンカにならなければいいけれど。

アウディが「こう乗りこなしてほしい」という気持ちはわかる。そして、TTは、デートカーではない。スポーツカーなのだ。わかっている、わかっているのだけれど、おせっかいの塊のような私としては、ちょっともやもやが残っている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 真夏のダッシュボードが20度以上低下!? 驚きの遮熱サンシェード新時代[特選カーアクセサリー名鑑]
  2. スズキ『エブリイ』が災害時は「シェルター」に、軽キャンピングカーの新たな可能性
  3. 『アトレーRS』ベースで力強い走り! 軽キャンピングカー「HAPPY1 Turbo」585万円で発売
  4. メルセデスベンツの新型高級ミニバン『VLE』、プロトタイプの写真を公開
  5. トヨタ『ランドクルーザー』公式アイテム、2025年夏の新作発売へ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. リチウムイオン電池の寿命を2倍に、矢崎総業、バインダフリー電極材料を開発
  2. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. トヨタや京大、全固体フッ化物イオン電池開発…従来比2倍超の容量達成
  5. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
ランキングをもっと見る