【トヨタ プリウス プロトタイプ 試乗】乗れば分かる、低重心パッケージの効用…千葉匠

試乗記 国産車
トヨタ プリウス プロトタイプ
トヨタ プリウス プロトタイプ 全 8 枚 拡大写真

「低重心パッケージ」と言うけれど、全高は先代より20mm低いだけだし、フロア基準面は10mm下がっただけ。重量物であるエンジンの搭載位置も、同じくー10mmだ。その一方、前席乗員のヒップポイント地上高は59mmも低くなり、後席のヒップポイントも「30mmぐらい下げた」と聞く。乗員も重量物だから低く座らせれば重心が下がるが、運転手しか乗っていないときに、それはどれだけ効果があるのか…?

そんな疑問は、新型『プリウス』に乗ると雲散霧消してしまう。「運転して楽しいクルマ」とはまだ断言できないが、クルマと対話する密度は従来のプリウスよりずっと濃い。ウエット路面で思いのほか低いグリップに手こずりながらも、操舵とアクセル開度のバランスを自分なりに見つけて狙ったラインをトレースできたのは、先代とはひと味違うところだ。

そこにはリヤサスのマルチリンク化など多くの要素が複合的に作用しているはずだが、やはり「低重心パッケージ」の効用を思わざるを得ない。あらためて外観を眺めれば、ボンネットは先代より60mm余りも低く、ルーフラインが行き着く先のリヤスポイラーの地上高も55mm低くなった。低い着座位置に合わせて全体を低重心化しながら、全高だけは先代ー20mmにとどめたシルエットなのである。

先代は後席ヘッドクリアランスを稼ぐためにルーフの頂点をBピラーより後ろに寄せていたが、新型は前席乗員のほぼ真上。そこからリヤスポイラーへ、先代と同じ後席ヘッドクリアランスを確保しながら、空力ベストの傾斜角度で後ろ下がりのルーフラインを引いた。言い換えると、空力と後席居住性を両立させるべく、ルーフの頂点を前に寄せつつ持ち上げたのだ。そのぶん重心が多少とも上がるとはいえ、悪影響は最小と思ってよいだろう。

ただ、ひとつ気になるのが、前席の広すぎるほどの頭上空間だ。自分が乗るぶんには何の問題もないが、ハタから見ているとちょっと違和感。まるでツーリングカーレースの競技車両のように、シルエットに対してドライバーの頭の位置が低い。それを「スポーティ」と呼ぶかどうか…議論の余地が残るかもしれない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

千葉匠│デザインジャーナリスト
1954年東京生まれ。千葉大学で工業デザインを専攻。商用車メーカーのデザイナー、カーデザイン専門誌の編集部を経て88年からフリーランスのデザイン ジャーナリスト。COTY選考委員、Auto Color Award 審査委員長、東海大学非常勤講師、AJAJ理事。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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