【ホンダ オデッセイハイブリッド 試乗】悩ましいのは価格設定と費用対効果…中村孝仁

試乗記 国産車
ホンダ オデッセイハイブリッド
ホンダ オデッセイハイブリッド 全 10 枚 拡大写真

ホンダ『オデッセイ』のハイブリッド仕様のモデルが追加投入された。で、早速ガソリン仕様のモデルと比較試乗してみた。

i-MMDという2リットルアトキンソンサイクルの4気筒エンジンと2モーターを組み合わせたこのシステム、基本的には現行『アコード』に使用されているものと同じだが、新たに小型化したモーターを搭載するなど、改良が加えられ、重量のあるミニバンに対処したものとなっている。

このハイブリッドシステム。基本的にはパラレル方式だが、ほとんどの領域ではシリーズハイブリッドとして機能する。つまり、多くの状況でエンジンは発電用のジェネレーターとして機能しているということだ。

そしてエンジンが駆動力として機能するのは、高速クルージング時のごく限られた状況のみで、発進から加速に至る状況は常にEVもしくはハイブリッドモードで走行する。だから、例えば乱暴なアクセル操作でグッと踏み込むと、エンジンはかなりの唸りを伴うが、この状況はジェネレーターとしてフルに電力を作り出している状況なのである。走り出しは基本EV。そしてエンジンはバッテリーの残存エネルギーの状態にもよるが、試乗車の場合は比較的すぐにかかり、発電をしていた。

エンジン音の高まりと加速の相関関係は、まさしく程度の良くないCVTのそれと同じで、エンジンは最大ノイズで唸っているものの、加速はおっとり後からついて来るという印象で、かなり違和感がある。

一方で静々と走ってやれば、静粛性を享受できるわけだが、確かにそれはガソリン車から比べたら静かというだけで、使用状況全体を見た時に相対的に静かかと言われるとまあ、普通に走るという前提が必要になる。走りの力強さという点では個人的に2.4リットルガソリン仕様に軍配を上げる。如何にモーターアシストがあると言っても、パーシャル領域からの加速感は、2.4リットルガソリン仕様と大差ない。それにそこから踏んだ時の音の高まりと加速感の追従性ははるかにガソリン仕様が人間の感性には合っている。

燃費はどうか。一律の比較はできないが、結構高速で全開加速を試したり、一般道でも全開の発進加速を試したりしたので、大した数値にはならないし、走行ルートも同じではなかったからあくまでも目安だが、ガソリン仕様で12km/リットル前半。ハイブリッドはほぼ15km/リットルというものだった。

確かにハイブリッド仕様の方が燃費は優れる。しかし、こちらも大まかな比較ではあるが、ガソリン仕様とハイブリッド仕様の価格差はざっくり50万円だそうである。燃費の差だけで50万円を取り返すのは相当な距離を走らないと難しい。だから、あとは街中レベルの走りにおける静粛性の高さをどう評価するかによって、ハイブリッド車の価値が決まってくる。

今回嬉しい驚きは、乗り心地がかなりのレベルにまで煮詰め上げられていたことだ。基本的に乗り心地は1列目から順番で一番悪いのが3列目ということになる。ホイールベースの長いクルマで、しかも巨大な空間を支えなくてはならないモデルでは、不可避的にホイールベースの真ん中に乗る2列目に微振動が入り易い。オデッセイも例外ではないが、このクルマは非常に良く抑え込まれたクルマだと思った。そして3列目も極端な入力が入らない限りは、変な言い方だがシートの快適性も含め、まともだと感じられた。

試乗したハイブリッド仕様は、ホンダセンシングをはじめとした複数のオプションを含め、450万円越え。つまり乗り出しはほぼ500万円だ。サイズ的に敢えて競合を出すとしたら、トヨタの『エスティマ』が俎上に上がるだろうが、恐らく比較する人はいまい。むしろサイズの大きな『アルファード』、『ベルファイア』がライバルになる。勿論ハイブリッドではなく普通の、それもグレードでは中間以下のモデル。というわけで、オデッセイハイブリッドの価格設定は、かなり悩ましいところにいる。それにガソリン車と比較した時の費用対効果も…だ。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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