現時点で「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」を確実に見ることができる唯一の場所。それが名古屋空港だ。MRJの機体を製造する三菱重工業・小牧南工場が隣接しており、ゆえにMRJの試験飛行も名古屋空港を拠点に実施している。
2月に試験飛行が再開され、それ以前よりは飛ぶ機会も増えたMRJだが、実は毎日飛んでいるというわけではない。飛行スケジュールも公開されていないが、それでも「飛ぶ可能性が高い日」というのは過去の実績からある程度の予測がつけられる。
試験飛行を実施する可能性が高いのは「名古屋周辺の天気が晴れで、周辺を含めたエリアの風が弱い平日」だ。天気がどんなに良くとも、風が強い場合には中止の判断が下されることも珍しくない。
試験の初期段階では随伴する小型機(チェイス機)を飛ばし、外部から機体の様子を監視する必要がある。風が強いと上空での接近が難しくなり、ゆえに「試験実施に不適当」と判断されるようだ。このため晴れが続くときは連日のように飛ぶこともあれば、天候が悪いときは1週間近く飛ばないときもある。現時点で試験飛行を行っている1号機(JA21MJ)については、22日に初めてチェイス機なしでのフライトを実施しており、今後は風についての条件が今より緩和される可能性も考えられる。
また、MRJが試験飛行のために名古屋空港を離陸するのは「午前9時30分ごろ」というケースが最も多かったが、最近では「午後0時30分ごろ」の離陸も多くなってきた。1回あたりの飛行時間は2時間程度。テストパイロットを含め、従事しているスタッフは三菱航空機や三菱重工業に所属するサラリーマンであり、試験も平日が中心となる。ゆえに「休日に飛ぶことは基本的にない」と考えた方がよいだろう。
試験飛行の準備は午前6時ごろには開始され、「飛ぶ可能性が高い日」には駐機場に留置され、離陸に向けた準備が進められていくMRJを空港の展望デッキからも確認できる。逆に言うと「展望デッキからMRJの姿が確認できない場合、その日の試験飛行は計画されていない」ということでもある。
飛行準備が進められていたとしても、天候の急変で風が強まった場合には準備が中止されてしまう。さらなる変化で天候が回復傾向にある場合、随伴機を先に飛ばして試験エリアの天候調査を実施することもあり、ここで「飛べる」と判断された場合は準備が再開して出発に至ったケースもあるので、MRJの姿が確認できる場合は昼過ぎまで粘ってみることをお勧めしたい。「飛べる」と決まったなら30分程度で準備は完了してしまうし、「今日はもう飛ばさない」となったら機体は早々に格納されてしまう。
MRJが飛ばずとも、名古屋空港にはいろいろな航空機が飛び交っているので決して飽きることはないだろう。1機ごとに異なるカラフルな塗装のフジドリームエアラインズ(FDA)のエンブラエルE170/175をはじめ、小牧基地に所在する自衛隊機、各種ヘリコプターを見ることができる。三菱重工で定期点検中の戦闘機がテスト飛行を実施することもある。