【ニューヨークモーターショー16】プリウス PHV 新型、新技術を取り入れてさらにモダンなデザインに

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トヨタ プリウスPHV 新型(米国名:プリウス プライム)
トヨタ プリウスPHV 新型(米国名:プリウス プライム) 全 15 枚 拡大写真

ニューヨークモーターショー16でトヨタが発表したプラグインハイブリッド(PHV)の『プリウス プライム』。日本では新型『プリウス PHV』と呼ばれることになるというが、デザインを見れば、これがたんなる現行『プリウス』のPHV版ではないのは明らかだ。

「実は現行プリウスの開発当初から、PHVはデザインを違えようという企画があった」と告げるのは、プロジェクトチーフデザイナー(=PCD)の児玉修作氏。現行プリウスのコンセプト段階からデザインのまとめ役を務めてきたデザイナーだ。

まずフロントは、ボンネットやフェンダーを含めてPHV専用の顔をデザインした。「より先進的なイメージを持たせると共に、トヨタの先進環境車のラインナップを意識した顔付きにした」と児玉PCD。バンパーの両サイドを三角形にデザインしたのは、燃料電池車『MIRAI(ミライ)』の弟分として位置付けるためだ。

リヤについては、「新技術を取り入れた」のがポイントだ。児玉PCDによれば、「テールゲートをカーボンファイバー製にすることで骨を細くでき、後方視界が広がった。バックウインドウにはダブルバブル形状を採用して、空力性能を向上させた」という。視界や空力は現行プリウスのデザイン開発でもこだわったところだが、今回のPHVではそれをさらに改善したのだ。

ダブルバブルのバックウインドウはセンターの凹面がミソ。凹面にすることでルーフから降りてきた風の流速が上がり、キャビン側面の気流がそこに吸い寄せられて空気抵抗が減る。もともと現行プリウスではキャビン後部を強く絞り込むことで側面流をバックウインドウのセンターに導いていたのだが、それをより確実にするのがダブルバブルの凹面なのである。

ただし、ガラスをダブルバブル形状に成形するのは簡単ではなかった。「開発当初からガラスメーカーと一緒に検討を進めてきた」と児玉PCD。「当初はガラスを通した視界が歪む問題が出たが、最終的にほとんど歪みがわからないレベルに仕上がった」とのことだ。それで空力効果があるなら、PHVではない普通のプリウスもダブルバブルにできないか? 児玉PCDは「そうですね。将来的には考えたいと思っています」と答えてくれた。

インテリアで目立つのは、センタークラスターの縦長ディスプレイだ。現行プリウスのセンタークラスターは上からエアベント、ナビ画面、ヒーコンというレイアウトだが、今回のPHVは11.6インチの縦長ディスプレイの両脇にエアベントを配置。縦長ディスプレイを地図表示だけにすれば進行方向が広く表示されてわかりやすいし、上下2画面に分ければ、上に地図を表示しながら、下の画面は空調、オーディオ、PHVのエネルギーモニターなどに切り替えることができる。

もうひとつ普通のプリウスと違うのが後席で、カップホルダーや収納を備えた立派なコンソールで仕切った二人掛けの後席空間だ。児玉PCDによれば「4座独立でゆったりしていただこう、というコンセプトでデザインした」という。当然ながらPHVは価格が高くなることを考えると、左右にセパレートされた後席が醸す上級感は巧いアイデアと言えそうだ。

ただし、ダブルバブルのバックウインドウや11.6インチの縦長ディスプレイは、プラグインでなくても欲しいアイテム。それらがいずれ普通のプリウスにも採用されるとしたら…米国トヨタは上級感を重視してプリウス プライムと命名したが、より差別感の少ないプリウスPHVが「名は体を表す」ことになる日は、案外、遠くないのかもしれない。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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