サミットをチャンスに! 三重県・アンテナショップの挑戦

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日本橋にあるアンテナショップ「三重テラス」
日本橋にあるアンテナショップ「三重テラス」 全 5 枚 拡大写真

 2015年6月5日、安部首相が伊勢志摩サミットの開催を発表。その第一報に沸き立つ三重県県庁で、三重県雇用経済部に所属する安保雅司氏は急ぎの電話をかけていた。相手は東京・日本橋にあるアンテナショップ「三重テラス」。サミット開催のニュースをいち早く伝えたい、その思いからの行動だった。

 それから、わずか数日の間に三重テラスはマスコミから注目を集め、多くの人で賑わうことになる。仕掛け人は首都圏営業拠点運営総括監として東京に駐在する安保氏。サミット開催決定から数日の間に一体何があったのか、話を聞いてみた。

■初動の速さでチャンスをつかむ

 三重テラスは日本橋三越にほど近い好立地で、観光客はもちろん、地元の老夫婦やオフィス街に勤めるビジネスマンなどが集まるスポット。扱う品物は土地のものが中心で、「松坂牛ローストビーフ」や「伊勢うどん」、「なが餅」などが人気だ。

 その他にも伊勢海老や真珠、伊賀忍者といったキラりと光る観光資源を抱える三重県。ただ、その一方で県に対する印象の薄さが、三重テラスをはじめ多くの県民にとっての悩みだという。現在、三重県が行っている観光キャンペーンも、名前は「実はそれ、ぜんぶ三重なんです!」。観光資源をいかに三重の物だと分かってもらうための取り組みだ。

「三重県というのは透明なビニール袋のようなものなんです。松坂牛や伊勢海老が注目されても、三重県そのものに存在感がない。売り場でサミットに関する展示をしても、『伊勢志摩って三重だったんだ』という声を聞きました」

 だからこそ、サミットの開催は三重をPRする上で、絶好の機会になると安保氏は考えていた。開催発表は金曜日に行われたが、その日のうちに三重テラスのスタッフに、キャンペーンの開催を打診。準備できたのは簡単なノベルティだったが、それを職員が週末を丸ごと使って用意した。台紙をノベルティと一緒に袋に入れて、その上からサミット開催を告げるシールを貼って……。月曜日にはプレスリリースとともに、何とか2014個のノベルティが準備できた。

 県の取り組みよりも、何よりも早くサミット開催をPRする。その安保氏の狙いは見事にあたった。すぐに、メディアが駆けつけると、サミット開催のニュースとともに、三重テラスを紹介。その視点はノベルティから売り場へと広がり、「面白い商品がある」とサミットに関係ない記事や番組でも、三重テラスが相次いで取り上げられた。これに合わせて、三重テラスでもサミットがらみのキャンペーンを、絶やすことなく実施。結果として15年6月以降、対前年を上回る売り上げを伸ばし続けている。

■日本橋で三重ファンを集める

 サミットに向けたキャンペーンの中でも、一際大々的に行われたのが「三重ウィークin日本橋」だった。開催に向けて三重テラスでは、周囲の企業に協力を要請したが、その対応はいずれも好意的だったという。

 その背景には日本橋が伊勢商人たちの成功した土地だったという歴史にある。三越をはじめ、小津和紙、鰹節専門店のにんべん、酒類・食品の卸を営む国分。いずれも三重に起源をもつ企業達はその歴史を大事にしており、県のPRに前向きに協力してくれたという。

 三重テラスではオープン以来、“コアな三重ファン”を作ることをテーマの一つに挙げてきた。一昔前の高速道路のSAみたいな店構えではなく、土地の資源を生かし、本物を追及した品ぞろえ。2階のイベントスペースは90%を超える稼働率を誇り、常に目新しいイベントを開催している。

 こうしたイベントや新商品情報などは、「三重の応援団」というメールマガジンで配信されている。その登録者は約3200人。これら日本橋に生まれた三重ファンの中には、毎週のように三重テラスを訪れる常連客も少なくない。

 その上で、次のターゲットとして安保氏が注目しているのが外国人観光客だ。16年5月には伊勢志摩サミットという名前が、世界中のメディアに取り上げられる。その時に起きるインバウンド需要の予兆を、今まさに感じているようだ。

「日本橋は銀座と秋葉原に挟まれる立地。これらの街にはブランド品や家電を求めて、多くの外国人観光客が訪れています。しかし、この方達もいずれ日本の伝統的な魅力を求めるようになる。その時に注目を集めるのが日本橋であって、サミットがそのきっかけになればいいと考えています」

 サミットのように突如降ってわいたトピックス。それを、どのようにビジネスチャンスに変えるか、伊勢志摩サミットはそのヒントを見つける一つの機会になりそうだ。

《丸田鉄平/H14》

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