【ジャガー XF ディーゼル 試乗】高級車にディーゼルは当たり前の時代に…中村孝仁

試乗記 輸入車
ジャガー XF 20d
ジャガー XF 20d 全 11 枚 拡大写真

ボディの75%をアルミ製とした新しいジャガー『XF』。そのおかげか、旧型と比較して最大190kgの軽量化に成功しているそうである。

従来XFの4気筒エンジンといえば、ガソリンユニットだけだったが、ニューモデルから最新のジャガー自製インジニウム4気筒ターボディーゼルが、新たに投入された。ちょっとした問題を抱えているアウディを除けば、メルセデス、BMW、ボルボなどヨーロッパ製ハイエンドEセグメントは、すべてディーゼルを投入する時代。さらに言えば、およそディーゼルと無縁と思えるマセラティまでディーゼエルを投入してきているのだから、日本の高級車マーケットにディーゼルは当たり前の時代になった。

では何故ディーゼルなのか…である。勿論理由の一つは、高級車といえども多少は燃費を抑えたい。幸いなことに日本は軽油が安い言わば軽油天国だから、ハイブリッドをチョイスするよりもディーゼルの方がトータル燃費は安くつく可能性が高いのだ。

そしてもう一つは、ディーゼルが持つ低速からの強大なトルクである。高々2リットルのターボディーゼルだが、その最大トルクは430Nm。3リットルV6スーパーチャージャーガソリンユニットの最大トルクが450Nmだから、ほぼこれに匹敵する。だから、高速などのパーシャルから追い越しをかけた時など、恐らく多くの人はその加速の鋭さに驚くはずだ。それをコンパクトな4気筒で達成して、燃費も3リットルV6スーパーチャージャーと比較したらJC08燃費でも圧倒的な差がつく。因みにディーゼルが16.7km/リットルであるのに対し、3リットルV6は10.6km/リットルだ。お金持ちは燃費なんて気にしない…いやいや、お金持ちほど気にする…のである。

さて、アルミボディとディーゼルエンジンの組み合わせが実現したXF。実はこのエンジン、ご存知の方も多いだろうが既に先行してXEに搭載されている(もっとも試乗は同時となったが)。同じエンジン同士で車重を比較すると、XFの方がピタリ100kg重い。このため0-100km/h加速ではXEの7.8秒に対し、XFは8.1秒と0.3秒の差がつく。実はこれ、実際に高速などの追い越しでは顕著に体感できる差となって表れていた。やはりXFの加速はXEに比べたらマイルドである。

では、かったるいか?そんなことは全くない。それにこのインジニウムディーゼルユニット、なかなか軽快なハミングを奏でてくれる。さすがにV6ガソリンユニットと比べたら、音、振動、スムーズさなどの点で敵うはずもなく、軍配は正直言えば圧倒的にあちらに上がるのだが、高速を長距離で乗るようなユーザーにとっては定常走行で走る限り、ほとんどその差がないと言って過言ではなく、差がつくのは加速時や市街地などでの走行で感じられるだけ。まだ日本ではディーゼル乗用車が市民権を得たと言い難いから、乗り比べると多くの人は不満を持つかもしれないが、実際にディーゼルを使ってしまうと、その魅力に取りつかれること請け合いである。(はい、私すでに3台のディーゼル乗用車を乗り継いでいます)

外観は旧型とほぼ瓜二つ。大きな変化はない。内装はだいぶモダンになった。しかしである。世界市場はともかく、日本においてはまだこの新しいジャガーのデザインが浸透していない。個性もこれまでジャガーが連綿と築き上げてきたものからは個人的には及んでいないと感じる。クーペライクのエクステリア・デザインも、他ブランドならフォーマルセダンとクーペ風4ドアを作り分けてくるところだが、規模から言ってジャガーだとそこまでは無理だから、いわゆる折衷案で落ち着いているが、エクステリアに関してはより強いジャガーネスを感じさせて欲しいものだ。

一方で乗り心地やハンドリングに関しては、新世代以前のジャガーと比較した時、格段に進歩した。というより高速に対応したといった方が良いかもしれない。旧世代のジャガーは、本当の意味で猫足を持ち、静々と走ってその真価を感じさせたが、新世代はグローバルマーケットのニーズに応え、高速からワインディングまでハイペースを維持して快適さを保つセッティングにされている。それがまたジャガーらしさを失ったと言われればそれまでだが、市場のニーズに合わせたクルマ作りをしなかった旧世代から今、必死にキャッチアップしている。それが今のジャガーだと理解している。まさにジャガーはこれからが楽しみなクルマになった。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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