【メルセデスベンツ Vクラス 試乗】商用車感覚の残る走りは国産ミニバンに及ばず…松下宏

試乗記 輸入車
メルセデスベンツ Vクラス
メルセデスベンツ Vクラス 全 18 枚 拡大写真

『Vクラス』は商用車をベースに作られた乗用車登録のミニバンだ。従来のモデルは商用車的な感覚を丸出しにした乗り心地やハンドリング、操縦安定性などに閉口させられたものだが、今回のモデルは一定の進化を遂げ、多少は乗用車的な感覚を強めてきた。

といっても基本プラットホームは従来のモデルからキャリーオーバーされたもので、走りは全体に商用車的な感覚を色濃く残している。日本の高級ミニバンには及ばない印象だ。

搭載エンジンは直列4気筒2142ccのコモンレール直噴ディーゼルターボだ。パワー&トルクは120kW/380N・mを発生する。従来のモデルに搭載されていたV型6気筒3500ccのガソリンエンジンに比べると、パワーは大幅にダウンしているがディーゼルの特性を生かしてトルクでは上回っている。

1400回転の段階で最大トルクに達するので、低速域からとても力強い走りを示すとともに、電子制御可変ターボが高回転域でもパワフルな走りを実現する。高回転といってもディーゼルなので4200回転でレッドゾーンに達するのだが。

回転の上限が限られていることを除けば、普通に走らせていてディーゼルを意識させられることはない。これは走行中の室内騒音が良く抑えられていることにもよる。

組み合わされる7Gトロニックは最新の乗用車用ATに比べるとひと世代前のものといった感じになるものの、変速フィールに特に不満は感じない。そもそもトルクフルなエンジンには、本当はたくさんの段数のATは必要ないのだ。

走りがトラック感覚というか、商用車的な感覚を与えるのは、ちょっとした段差を越えるときなどだ。フラットな直線路を走っているときには、どっしりした安定を感じさせるものの、段差のあるシーンなどでは乗用車とは違う振動が入ってくる。

走行状態に応じて減衰力を調整するセレクティブ・ダンピング・システムを採用しているので、従来のモデルに比べたら良くなっているが、まだまだ商用車的な走りである。

ステアリングの操舵(そうだ)フィールなどは、従来のモデルに比べると格段に良くなった印象があるが、シャシー系全体の商用車的感覚はぬぐいきれていない。走りの快適性を考えたら、『アルファード/ヴェルファイア』を選んだ方がずっと良いと思う。

2列目、3列目の後席にはしっかりしたシートが用意されていて、2列目を後ろ向きにするなどのアレンジが可能だが、かなりしっかりしたシートであるために重量が重く、一人ではとても操作できない。まあ最も多い使い方に合わせるしかないだろう。

試乗車は新車価格が730万円の「V220dアバンギャルド・エクストラロング」だったので、レーダー・セーフティ・パッケージが標準装備されていたが、ほかのグレードでは約20万円のオプション設定である。安全装備を全車標準にしないのは何ともメルセデスベンツらしからぬところである。

■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★
オススメ度:★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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