2015年から1ラウンド増えて全9戦で争われている全日本クロスカントリー選手権(JNCC)も、いよいよ折り返し地点の第5戦。
年に1度しか解放されない岐阜県の鈴蘭高原スキー場跡地を使った「ワイルドボア鈴蘭」は、御岳などを望む景観の素晴らしさもあいまって非常に人気が高い。
ここまで頂上決戦は、小池田猛と斉木達也がわけあい2勝ずつ。前戦に引き続きガレが多くテクニカルなラウンドである鈴蘭の勝負は、レース前から予想を二分するものだった。また、この鈴蘭では、かねてよりデビューする噂があったヤマハのYZ125Xが鈴木健二の手によって世界初レースの場に。前々日に発表になったばかりのニューマシンを一目見ようとする観客も。
スタートは斉木が、いつもどおりのロケットダッシュを決め、これに小池田が呼応する形。鈴木は集団に飲み込まれ、昨年のチャンピオン渡辺学は大きく出遅れて30番手前後といったところからの追い上げ。1周目から熾烈なトップ争いが斉木、小池田の間で繰り広げられ、観客を沸かせた。勢いのある斉木は、小池田にパスされてもリスクの伴うガレの下りで構わず猛チャージ、この斉木のスピードにつられて世界レベルの小池田ですら何度か転倒を喫したほどのハイレベルなチェイスが展開された。
これまでの4戦であれば、この二人のうちどちらかがミスするか、ペースをさらに上げるかでレースが動いてきたが、この第5戦では違った様相に。斉木がクラッシュで順位を下げる中、順位を上げてきたのは鈴木。特にアップダウンの多い鈴蘭で、マシンパワーで不利とされるYZ125Xがついには小池田をパスしたことは、ちょっとした事件だと言える。のちに「魅せるレースができたでしょう? でも、体はもう限界! 後半は全身攣って、走るだけで精一杯だったよ!」と鈴木は興奮気味に語り、3時間にわたる長丁場をいちかばちかの賭けに出たと独白。小池田も「まさかあんなに速いとは。このままではデビューウィンされてしまうと思いましたよ」と鈴木を評価。
結果的には、小池田がアメリカ仕込みの貫禄をみせて見事優勝。渡辺が安定したレース運びで2位につけ、総合3位に鈴木といったリザルト。アップダウンの激しいスキー場ベースのラウンドは続き、次回もほうのきスキー場での開催となる。