EVトラック Canter E-CELL の実力---シュトゥットガルト市産業廃棄物管理局が語る

エコカー EV
三菱ふそう eCanter(E-CELL)
三菱ふそう eCanter(E-CELL) 全 9 枚 拡大写真

日本国内では『Canter E-CELL』の名前で知られている三菱ふそうの100%EVトラック。EUでも、ダイムラーの『Canter E-CELL』の名前で、2015年から5万km以上のフリートテストが行われている。2016年からは、ダイムラーの本社があるシュトゥットガルト市内において、自治体や企業の実証実験が始まっている。

自治体でCanter E-CELLを導入し、業務に活用する実験を行っているのは同市の産業廃棄物管理局(AWS)だ。公園整備、建築資材の運搬、学校家具等の引き取り、市内ゴミ箱の運搬(ごみの回収ではなく、ゴミ箱を交換したり設置したりという作業)といった業務に4台のeCanterを導入して活用している。

eCanterの主な仕様は、400V・110kWの液冷モーター。出力トルクは650Nm、車両としての最大トルクは4330Nm。18度の登坂能力を持つ。普通充電なら7時間、急速充電なら1時間で充電が完了する。80%以上の充電でおよそ100km走れる。

実証実験とはいえ、EVで資材や家具などを運んで大丈夫なのだろうか。AWS事務長 トーマス・ヘス博士に聞いた。

導入の背景は次のような事情があったという。

「シュトゥットガルト市は盆地の中にあり、町中に坂があります。これは粉じんなどがたまりやすく、自動車、トラックの排ガスは深刻な問題です。盆地という地形のため、CO2だけでなくSPM(浮遊粒子状物質)も減らさなければなりません。現在AWSには1000台を超える車両を保有しています。乗用車のEV化や20~40トンの天然ガストラックを段階的に導入していますが、トラックはEV化が難しい分野でした。」

シュトゥットガルト市に限らず、EU各都市は、市内のディーゼル車の侵入規制区間、時間が設定されることが多く、排ガス規制やエンジンの種別制限も年々厳しくなっていく。技業務用車両の場合、官民問わずEV車両、トラックのニーズが高まっている。今回のeCanterによるフリートテストの実施が決まり、車両の引き渡しセレモニーはクーン市長が自ら参加するほど市は歓迎したという。

市が受け取った車両は全部4台。2台はダンプ形式。2台はテールゲートのついた箱型荷台のタイプ。仕様上のペイロードは3トンだが、荷台など架装部分を除くため、どれも積載荷重は2トン前後で運用している。市内の公園や学校、ごみ集荷所の巡回または往復する。1日の走行距離は50~90kmほどだという。

「4台のうち1台は7月に納品されたばかりでほとんど走っていませんが、5月に引き渡された3台はすでに1000km以上業務で走っており、故障やバッテリートラブルも発生していません。いまのところニーズには応えてくれています。EVのメリットとしては、静かで運転しやすいこと、ゼロエミッションなので歩行者優先の場所でも侵入が許されていることです」

充電器は、eCanterが配置されたAWSの拠点ごとに市の予算で設置された。1日走ると、夜の間に充電する運用も問題なく続いているとのこと。ドライバーは、一応訓練は行ったが、特別なスキルは必要なく普通のトラックのように運転可能だったという。ただし、アクセルの踏みすぎやブレーキのかけ方でバッテリーの消耗が変わるので、その調整が必要なとき若干の慣れが必要だそうだ。

今後の予定についても話を伺った。

「今回のフリートテストは1年間の予定で、1年後にどうするかはまだ決定していません。実験終了後、実際の業務への影響、CO2の削減効果、コストなどを精査して、市として発表する予定です。とくにランニングコストには注目しています。車両の初期投資はディーゼルより高くなりますが、燃料代、通行料、減税などを9年という車両の減価償却期間での効果を確認します。いずれにせよ、ゼロエミッション車両は必要なので車両本体が20%ほど高くなるだけなら、EVトラックを導入したいと思っています」

実際のドライバーの評価も悪くなく、加速がいい、小回りがきく、騒音や振動もないといった点を評価していた。ただしサスペンションが少し硬いという意見もあった。バッテリーや充電についても問題なしと答えてくれた。80~90kmまでの走行ならあまりバッテリーの残量を気にしなくてもいいそうだ。ほしい装備としては「クレーン」だそうだ。

《中尾真二》

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