自動運転にベストなコンポーネントの組み合わせは?…デンソー技術開発説明会

自動車 テクノロジー ITS
デンソー ADAS推進部長 松ケ谷和沖氏
デンソー ADAS推進部長 松ケ谷和沖氏 全 8 枚 拡大写真

高度運転支援、自動運転、自律走行など、広義の自動運転を意味する言葉はいくつかあるが、これらの境界の定義は難しい。自動化の範囲によってレベル0から4までの分類があるが、抽象的な表現のため、特定の車両がどこまでを実現しているものかもわかりづらい。

個々の技術に至っては、それらは高度運転支援から完全自律走行車を構成するための要素(技術)でしかないので、例えば、カメラで画像認識を行っているからといって、自動運転レベルの特定はできない。しかし、用途や目標とする機能が明確ならば、有効な技術やその組み合わせはある程度規定できる。

デンソー ADAS推進部長 松ケ谷和沖氏によれば、現状の衝突軽減ブレーキシステム、緊急自動ブレーキシステムには、ミリ波レーダーとカメラの組み合わせがベストだとする。これにアクセル(走る)操作、ステアリング操作(曲がる)といった自動運転の機能を追加しようと思ったら、さらにLIDARと呼ばれる赤外線3Dレーザースキャナーも必要となるいう。

衝突回避のための自動ブレーキに必要な機能は、前方の走行車両や歩行者、障害物の検知と、どのような状況で衝突すると判断するかの判断ロジックだ。カメラと画像処理技術を組み合わせれば、車両、歩行者、障害物の認識は可能だ。その対象までの距離についても、画像解析で計算することは不可能ではないが、デンソーとしてはミリ波レーダーによる計測をベストとする。

デンソーはミリ波レーダーについてトランジスタやICを自製するほど、この分野は古くから取り組んでいる(1996年~)。そして、MUSIC(Multiple Signal Classification)という技術により、前方に並走する車両を区別することも可能だという。

ステアリングやアクセルなど、さらに高度な運転支援を行うには、ブレーキ操作の対象となり得る物以外、周辺環境の立体的な把握、計測が必要となる。LIDARは赤外線レーザーパルスをスキャンするように照射し、前方の物体の形、距離を測ることができる。

デンソーが複数の技術を組み合わせるのは、堅牢性を考えてのポリシーだ。カメラとレーダーの併用なら、片方が故障しても、もう片方のセンサーでシステムを縮退運転させることもできる。ミリ波レーダーとLIDARの組み合わせは冗長と言う考え方も(グーグルカーのプロトタイプはレーザースキャナーによって周辺認知を行っていた)あるが、レーザースキャナー(LIDAR)は、雨など天候の変化に弱い。ミリ波レーダーと併用していれば、前方障害物の検知は可能だ。

センシングを単純にすれば、コストも抑えられ製品実装の展開もスピーディに行えるが、可用性、堅牢性の面では、複合システムに劣る場合がある。デンソーのこの戦略は、製品の堅牢性をあげるためと、カメラやセンサーのデバイスメーカーではなく、自社コンポーネントを組み合わせて付加価値の高い製品を提供できるサプライヤーとしての戦略でもある。

《中尾真二》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. FJクルーザー が復活へ…トヨタ『ランドクルーザーFJ』最終デザインはこれだ!
  2. スズキ『スペーシア』など6740台…4月のリコール記事まとめ
  3. 30年で25台のスバル車を購入、26台目に新型『フォレスター』を選んだ英国スバリストの愛
  4. なぜ今「ダウンサス」? 車高調より安くて“扱いやすい”注目チューンの実力~カスタムHOW TO~
  5. ポイ活主婦に自動車税の納付の仕方を聞く…キャンペーンで全額還元・ポイントで0円払いもできる!
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 【学生向け】人とくるまのテクノロジー展 2025 学生向けブース訪問ツアーを開催…トヨタ、ホンダ、矢崎総業、マーレのブースを訪問
  2. 住友ゴム、タイヤ製造に水素活用…年間1000トンのCO2削減へ
  3. AI家電を車内に搭載!? 日本導入予定の新型EV『PV5』が大胆なコンセプトカーに
  4. AI導入の現状と未来、開発にどう活かすか? エンジニアの声は?…TE Connectivityの独自リポートから見えてきたもの
  5. トヨタ「GRファクトリー」の意味…モータースポーツのクルマづくりを生産現場で実現【池田直渡の着眼大局】
ランキングをもっと見る