単なる「修復」にあらず! クラシック・ロールスロイス/ベントレーを蘇らせる「Wakui Museum Bespoke」

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単なる修復ではない、オリジナルの志に触れる復元。「WAKUI MUSEUM Bespoke」
単なる修復ではない、オリジナルの志に触れる復元。「WAKUI MUSEUM Bespoke」 全 10 枚 拡大写真
先に開催されたオートモビル カウンシル 2016のワクイ・ミュージアムブースに、非常に素晴らしいコンディションのロールスロイス『シルヴァー・シャドウ』が展示された。

なんでもこのほどリフレッシュ・プログラムを発足させるとのこと。そのいわばローンチ・ワークのクルマだったのだ。じっくりとクルマを見せていただき、お話を伺うことができたので、少しご紹介したい。

ワクイミュージアムは埼玉県加須市にある、ショップファクトリー併設型のヴィンテージカーのスペシャルショップだ。特にベントレー/ロールス・ロイスのオールドモデルに関しては歴史の生き証人のような由緒正しいモデルを多数収蔵。オートモビル・カウンシル2016の会場でも吉田茂の所有していたフーパーのスポーツサルーンなど、おなじみのコレクションが展示され、来場者の注目を集めていた。

そんなワクイミュージアムがスタートするという「ワクイミュージアム・ビスポーク」とはいったいどのようなものなのか。広報を担当されている武田さんにお話を伺った。

「シルヴァー・シャドウ系はかつてロールスロイスの技術革新を図った歴史的傑作と言えるモデルですが、にもかかわらずクラシックカー・マーケットでの評価は低すぎるといっても過言ではないかもしれません。一方、相当メカニズムがテクニカルであるため、現存する個体の多くはその本来のすばらしさを味わうことができる状態にないと言えます。そこで、私どもでベース車をお探しし、お客様とコーディネーションや仕様を考証に基づいて決定をしたのち、ワクイミュージアム・ファクトリーで修復作業を執り行うというものです」

会場に置かれていたシャドウを覗かせていただいた。まずドアを開けると、経年による旧弊な“やれ”のようなものは影すら見えず、密度の濃い、重厚だがしかし変な力を入れなくともそのまま的確に開閉し、そのブレのない開閉音はまるでオーケストラの太鼓のよう。ボンネットの開閉音なども、正しく取り付けられ、しっかりと張りのあるパッキンなどの恩恵もあって、「和音を伴ってきれいな音がするところをぜひ聞いてほしい」と武田さんが開閉してくださった。その通りである。

運転席に座ると、正しい向きに、しかるべき弾性を伴ったスプリングの効いた大ぶりな革シート。今までに座った同モデルのいかなる個体でも味わったことのないコンディションだ。「そういうところから、機関系の挙動に至るまで、おそらく、味わったことのない乗り味。まさに鏡の上を走るようなさまを今味わえるようになるのです」と武田さん。夏場でも全く問題ないのだと言いう。

会場に置かれていたクルマはすでにオーダーを受けて制作した個体。外装色は「象牙の風化した色」で、色名はとくにないのだとか。イメージで選んだ色で、オリジナルのペイントにもないからなのだそうだ。イエローがかったベージュ、グリーンのような色目も少しあるという、日本の風土になじむ色だ。内装はオーナーの所有する別のクルマの内装色とほぼ同じなのだとか。内外装色、コーチワークラインについても色などすべて打ち合わせの上で決定する。

ベースとなるモデルはロールスロイス・シルヴァー・シャドウとそのベントレー版である『T』、さらに一つ古い『シルヴァー・クラウド』とベントレー『Sタイプ』も対象になる。

およそ現在の中古車相場の3倍から4倍程度するそうだが、クラシックなロールスロイスが現代の環境でも使え、何より当時のつくりの良さ、さらには設計思想の志の高さに触れることができることを想えば、むしろ高くはないのかもしれない、とワクイミュージアムでは話す。

何より、これで本来シルヴァー・シャドウがもつ素晴らしさを正しく味わうことができるという点で、一人でも多くの方にこの価値を知ってほしいと武田さんは語る。

姿かたちだけを並べて「○○」というクルマだ、という羅列するばかりでなく、本来の姿を正しく知ってもらうという活動。これも博物館としての尊い活動に他ならない。

《中込健太郎》

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