デザイン専攻学生を対象に、モーターサイクルの楽しさと魅力、デザインの奥深さを伝えるワークショップ「二輪デザイン公開講座」が、8月29~30日に開催された。
このワークショップは自動車技術会・デザイン部門委員会が2013年から開催しているもので、今年で4回目となる。会場は静岡文化芸術大学(静岡県浜松市)。2輪車事業を手がけるホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの国内4メーカーからデザイナーやモデラーが講師として参加した。
受講生は全国の4年制大学のデザインコースに在籍している1、2年生。まだ基礎課程段階で専門知識も多くない学生を対象としているのは、まずモーターサイクルそのものの魅力と、そのデザインの楽しさを体感してもらうことを最大の目的としているためだ。
幅広いジャンルを持つ工業デザイン、プロダクトデザインの世界に「モーターサイクルデザイン」というものがあることを知ってもらい、将来の2輪車産業をデザインの面からも盛り上げていこうという狙いがある。
今回の受講生は21校から集まった39人(男子24人、女子15人)。学生の顔ぶれは熱心なバイクマニアから、これまでまったく2輪車に興味を持っていなかった工業デザイナー志望者までさまざま。昨年に参加して「今年もまた参加したい」と志願してきた学生も複数いるという。
ワークショップはまず、モーターサイクルの歴史とデザインの変遷を紹介する「デザイン公開講座」と、スケッチやクレイモデルの制作、グラフィック検討などを現役スタッフが実演する「プロの技講座」を開催。このふたつのプログラムは受講生だけでなく、一般にも公開された。
その後の「デザイン基礎講座」では、モーターサイクルが「日本の特産品」と呼べる存在であることや、そのデザインプロセスを紹介。そして受講生が実際にアイデアスケッチやレンダリング、クレイモデルを作成する「デザイナーの卵 養成講座」へと続いた。
スケッチ講習ではコンセプトメイキングからはじまり、スタイリングを構想して描くという一連のデザインプロセスを体験。まだデザインを学びはじめて間もない1、2年生ということで、画材の扱い方や表現手法などを教わる光景もよく見られた。また実際にスタイリングを考える際には、各部の造形の意味を知るために実車を前にしてレクチャーを受ける学生も多かった。
クレイモデルの講習では、ホンダ『モンキー』のガソリンタンクを作成。ここでも、ツールの使い方や立体造形の捉え方といった基本を教わる風景がよく見られた。
受講生たちにとってはスキルを磨くというよりも、デザインのプロセスや「デザインすること」の楽しさと難しさという、基本的なことを教わることに大きな価値があったようだ。なにより現役のデザイナー、モデラーとのコミュニケーションで受けた刺激は大きな財産となったことだろう。