【プジョー 308 ディーゼル 試乗】ディーゼルスポーツの新しい楽しみ方…中村孝仁

試乗記 輸入車
プジョー 308GT ブルーHDi
プジョー 308GT ブルーHDi 全 4 枚 拡大写真

『308ディーゼル』を以前紹介した時、敢えて1.6リットルと2リットルを分けて考える必要がある、と書いた。それはエンジンの構造によるものだったが、今回は1.6リットルで触れなかったこのクルマの楽しさについて書こうと思う。

構造の問題とは、1.6リットルのブルーHDiが前方排気であるのに対し、2リットルの方は後方排気であることだ。音源が室内に近い分、音処理的には不利である。だからどちらが静粛性が高いかと言われると、やはり1.6リットルに軍配が上がる。しかし、その性能差は顕著。

1.6リットルが120ps、300Nmであるのに対し、2リットルは180ps、400Nmと圧倒する。ライバルの性能と比較した時このエンジン性能は突出したものではない。しかし、同じ2リットル直4ディーゼルを積むハッチバック、BMW『118d』と比較すれば性能的にはこちらが上だし、車重の差も30kgこちらが重い。一方ボルボ『V40 D4』と比べると、トルクは一緒だがパワー向こうが少し上回り(190ps)、車重は向こうが30kg(キティックというグレード)重いから、まあ性能的にはドングリの背比べといったところか。

話を戻してプジョーの乗り比ベであるが、やはり性能差はかなり大きく、2リットルはこれならホットハッチとしても楽しめるのではないかというレベルに達している。猫脚は相変わらずだが、やはり1.6リットルと比べるとだいぶ硬い印象を受ける。そのくらい締め上げておかないとダメということなのかもしれないが、とりあえずNVHの抑え込みに関してはそれでも最良の部類に入る。

このエンジンのいいところは1.6リットルも共通だが、アイドリングストップの再始動にオルタネーター方式を用いているところ。このため、エンジンがかかるのをほとんど気づかないレベルにまでスムーズにしているから、泣き所の一つが消えているというわけだ。とりわけ圧縮比の高いエンジンで再始動すれば、ブルンと大きく揺れて不快な印象が拭えないのだが、コイツはまったくもってスムーズである。トランスミッションは6ATであるが、8ATのBMWやボルボと比較してそれほど遜色あるかといえば、それは感じられなかった。もっと高速を多用すると多少差が出るかもしれないが、これは長距離を乗ってみないと分からない。

さて本題に入ろう。ディーゼルスポーツの新しい楽しみ方とタイトルを打ったが、このクルマには他にはないある大きな特徴がある。それは走りのモードでスポーツを設定した時、特別な変化があるのだ。

この種のシステムを装備するモデルではハンドルの重さが変わったり、シフトプログラムが変わったり、あるいはスロットルレスポンスを変えてスポーティーな走りを演出してくれる。スポーティーなクルマを走らせて楽しいのは、こうした生き生き感が操る楽しみを醸成し、助長してくれるからだと思うのだが、最近のクルマ、特にディーゼルに欠けているのはエンジンサウンドというか、排気音である。元々カラカラと味気ない音がして、これだと正直飛ばす気をなくすような印象。ルマンなどでディーゼルレーシングカーの音を聞いた友人に言わせてもNGだし、かつてセアトディーゼルのツーリングカーレースを見た時もやはり味もそっけもないものだった。

スポーツモデルは五感のすべてに訴えかけて欲しいと願うのが僕の気持ち。そこへ行くとプジョーディーゼルは見事にそれを実現してくれている。それはスポーツモードに入れるとエンジンサウンドが変わるから。カラカラではなくて、コロコロというかドロドロに変わる。聞きようによってはV8サウンドにも聞こえる。からくりは簡単で疑似音をスピーカーから出してやっているのだ。だから、車外で聞いても音には何ら変化はない。室内だけいい音になる。良い音かどうかは賛否が分かれ、また疑似音を出すこと自体にも賛否があるが、最近ではレクサス『GS-F』、BMW『i8』 、そしてプジョーは『GTi』でもこのフェイク音を出してエンジンサウンドを変化させている。この種の技術を使えば、たとえば今日はV12の音がいいなぁとか、今日はアルファサウンド、明日はフェラーリサウンド等々、その気になればいかようにもチューニング出来るわけで、無粋な音を立てるディーゼルにあっては一つの愉しみ方として、あっても良いのではないかと僕は思うわけである。

そして、正直なところほぼ8割をドイツ車が占める日本の輸入車市場にあって、プジョーはメジャーとは言えない存在であるわけだから、これは一つのポジティブなアイテムとして訴求しても良いと感じるのである。残念ながらこのアナウンスはカタログやネットを見ても載っていない。この疑似音、1.6リットルでも楽しむことが出来る。ディーゼルをスポーティーに楽しむことが出来ると考えれば大いにありだと思うのだが…

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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