【オーテック マーチ ボレロA30 試乗】クルマの楽しさの原点はここにある…諸星陽一

試乗記 国産車
オーテック マーチ ボレロA30
オーテック マーチ ボレロA30 全 10 枚 拡大写真

オーテックジャパンが、創立30周年を迎え、それを記念した特別なモデル『マーチ・ボレロA30』を発売。すでに完売となっているが試乗車に乗るチャンスに恵まれた。

「マーチ・ボレロA30」は、K13マーチボレロをベースに、1.6リットル自然吸気で150馬力を発生するエンジンを搭載。5MTのミッションが組み合わされる。エンジンの組み立ては職人による手作業で行われたが、コンロッドは「JUN」のブランドで知られる田中工業、クランク加工やカムシャフトはタマチ工業、マフラーは藤壺技研工業が担当。エンジンルームに装着されたオーナメントはアルテクノが行っている。

このエンジンの性能を引き出すためのシャシーには、205/45ZR16サイズのミシュラン・パイロット3をチョイス。エンケイの鍛造フル切削ホイールを介して装着されている。ショックはKYB製で筒径を約20%アップし容量を稼いでいる。

やや重めのクラッチを踏み込み、エンジンを始動する。クラッチの重みはフリクションではなくスプリングのもので、このクルマのポテンシャルを予感させる感触だ。クラッチが切れた状態でブリッピングすると、あきらかにただ者ではない乾いた音が響く。タコメーターの動きも機敏だ。クラッチをつないで走り出すと、中低速もしっかりあって運転しやすい。昔乗ったこんな感じのクラッチを使っているクルマはだいたい乗りづらいフィーリングだったが、ボレロA30はそうしたことは皆無。

マニュアルモデルではあるが、全域でトルクを発生するトルク特性なので3速に入れておけばかなりカバー範囲は広い、さらに信号で止まるときや渋滞に巻き込まれなければ市街地は3、4速を行き来する感じで運転でき、意外なほどにイージードライブが可能だ。そして、エンジンを回していったときの爽快感は特筆もの。アクセルペダルを踏んでエンジンがビュンと回っていく様子と、クルマが加速していく様子がきれいにシンクロする。許されたレブリミットは7200回転! 久しぶりにブン回して走ったが、こりゃやっぱり気持ちいい。

太いタイヤに広いトレッドだが、乗り心地はけっして悪くない。全体にシャキッと引き締まった感じを受け、段差の乗り越えなども意外なほどすっきりとこなす。もちろんノーマルのマーチのような乗り心地ではないが、クルマのいでたちを考えればかなりいい感じの仕上がりだ。そして、コーナリングやハンドリングは上手な味付けが行われている。

ベースとなったマーチのモノコックの限界を十分に理解して、その限界内でできることをやり遂げたと感じるのがマーチ・ボレロA30。わずか30台しか販売されなかったのは残念だが、それは「このクルマは誰でもが気軽に手に入るものではない」という気持ちの表れとともとれる。少なくとも、誰にで受け入れられるようなクルマではない。だけど、クルマ好きなら、思わずニヤリとしてしまう魅力にあふれているのは保証しよう。なお、すでに完売ということなので、オススメ度の★印はつけなかった。欲しくなっちゃうと困りそうだからね。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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