【土井正己のMove the World】米大統領選に見る「反グローバル化の波」…日本はどうする

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米大統領候補のドナルド・トランプ氏(参考画像)
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11月8日の米国の大統領まで、あと3週間余り。いよいよ大詰めを迎えているが、どちらが勝つのか予断を許さない。共和党のトランプ候補は、これまでいくつもの失言を発し、謝罪も行っているが、彼の支持層はそういうことでブレる人たちではなさそうだ。同じ状況は、英国のEU離脱投票の時にも見られた。フィナンシャル・タイムスなどの英国の代表的メディアはEUからの離脱に反対していたが、結果はそうはならなかった。「現状への不満」が大きいと新たなものに期待するのが民衆の常ということだろう。

◆世界にうごめく「反グローバル化の波」

そうした「現状への不満」の中でも、今回の選挙では「自由貿易」が大きくクローズアップされている。特に、TPPにはトランプ候補もクリントン候補も反対の意を表明しており、現在のオバマ政権が、大統領選挙後の「レイムダック議会」で批准しなければ、TPPの運命は危うくなる。世界史上に与えるインパクトとしては、TPPも英国のEU離脱と同様に大きい。

英国と米国には共通点がある。「グローバル化に仕事を奪われた」と思う人が多数いることだ。英国の場合は、移民が職を奪ったと考え、米国ではトランプ候補が、「自由貿易で米国の産業が潰された」と宣伝している。この「反グローバル化の波」はこれから世界を襲っていく可能性がある。

◆産業構造の転換が重要

では、日本はどうだろう。9月中旬に行われたFNNの世論調査では、「TPPに賛成」が50.3%と「反対」の33.0%を大きく上回っている。これは、日本は過去の歴史において、「グローバル化の波」にさらされながらも、産業構造の転換に成功してきたことが大きいと思う。1960年代に「繊維産業」から「鉄鋼、化学」へ転換、そして70年代には「自動車、電機産業」に転換、そして2000年に入ってからは「IT・通信産業」という具合だ。そして、旧産業も高度化を図りながら「グローバル化」の恩恵も受け、生き残っている。これが「グローバル化の不満」が起きなかった理由であろう。

日本は、世界第3位の経済規模となった。そして、人口減少ということを考えても、今後もグローバル化、自由貿易という基盤の上でしか成長できない。それでは、世界の「反グローバリル化」の波を鎮めるためには、日本はどうすればいいのだろうか。

◆「技術移転」は自由貿易の必要条件

日本ができることは、日本から新興国への「技術移転」ではないだろうか。日本は「質の高いインフラ」を新興国に輸出・構築することを経済政策の柱に挙げているが、こうした事業を通じて、高質な技術を移転することで、その国に新たな産業群を生み出し、産業構造の転換をサポートすることができる。産業構造の転換がスムースにできれば、「現状への不満」は大きくならない。

一方、日本のモノづくりはさらに「高み」を目指さなければならない。「技術移転」の結果、新興国の日本へのキャッチアップは、倍速でやってくるからである。「高み」とは、産業のさらなる高度化であり「イノベーション」である。自動車で言えば、従来のハイブリッド技術は、技術移転してしまい、日本は次世代ハイブリッドや燃料電池車を開発するということになる。

◆永遠に高みを目指す

米国の大統領選は、世界の歴史を左右する。そして、TPPも成立すれば歴史の大きな転換点となるだろう。一方、「反グローバル化の波」は、その中で当面続くだろう。新興国への「技術移転」と自らは「永遠に高みを目指す」ことが、「モノづくり立国日本」の生き残りの道であろう。

<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサルティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年までチェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。

《土井 正己》

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