富士通研究所、世界最高速度で周波数変調可能な車載レーダー向けミリ波CMOS回路を開発

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ミリ波CMOSチップ、ミリ波信号源回路(左)と4チャンネル送信回路
ミリ波CMOSチップ、ミリ波信号源回路(左)と4チャンネル送信回路 全 3 枚 拡大写真
富士通研究所は10月13日、世界最高速度で周波数変調可能な車載レーダー向けミリ波CMOS回路を開発したと発表した。

従来、ミリ波レーダーは、ミリ波信号の周波数の速度を周期的に変調させるFMCW方式が主流だったが、歩行者と自転車など、速度の異なるターゲットが近接すると、片方を見落としてしまう問題があった。このような誤検知をなくすために、近年、ミリ波信号の周波数について、変調速度を高めることで距離分解能や対象物の速度の検知範囲を広げることができるFCM方式が注目されている。

ミリ波信号の周波数を制御する信号源回路は、ミリ波信号のパルスを常時読み込んでカウントし、カウント数に応じた電圧を周波数制御部に印加し周波数を変調する。しかし、従来のCMOS信号源回路では、温度上昇に伴って内部信号が遅延しカウント数を誤るため変調速度を速くすることができず、検知できる相対速度は時速50km程度が限界だった。

今回、富士通研究所が開発した技術では、これまでに蓄積してきたミリ波CMOSの設計技術を駆使して、信号源回路の中でカウント動作に大きく影響を及ぼすブロックを特定。このブロックに温度変化による遅延を補正する機能を搭載し、高温下でも正確に動作する時間補完型パルスカウンターを新たに開発した。同回路では、ミリ波信号を80GHzにおいて1μsあたり2GHzとなる世界最高速度で周波数変調でき、レーダーとして要求される最大検知相対速度(時速200km)を達成する。

また、今回、変調されたミリ波信号の位相を1度以内の精度で計測・制御してミリ波信号のビームを任意の方向へ照射できる4チャンネル送信回路を併せて開発。これにより、10m圏内を5cm間隔といったようにレーダーの周辺を電子的に細かくスキャンする周辺監視も可能になる。

開発技術により、速度の異なるターゲットを見落とすことなく、また、時速100kmで対向した場合(相対速度時速200km)においても相手の距離と速度を検知できる。これにより、市街地における周辺監視とともに、高速道路など高速走行時の前後方監視を可能にするレーダーの実現が期待できる。

富士通研究所は今後、車載レーダーの多機能化を実現するための高機能な演算を行うプロセッサなどを集積した、ミリ波CMOSレーダーチップの開発など、さらなる高機能化を進め、2020年以降の実用化を目指す。

《纐纈敏也@DAYS》

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