来季F1昇格のバンドーン、最終レース優勝でスーパーフォーミュラを卒業…「いい一年だった」

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SF最終戦のレース2で優勝した#41 バンドーン。
SF最終戦のレース2で優勝した#41 バンドーン。 全 8 枚 拡大写真

10月29~30日に鈴鹿サーキットで開催された今季のスーパーフォーミュラ(SF)最終戦。来季はF1マクラーレン・ホンダの正ドライバーに昇格するストフェル・バンドーンは、最終戦の「レース2」で今季2勝目を挙げ、SF卒業に自ら花を添えた。

ベルギー出身、24歳の大器バンドーンは、今季のSFにホンダ勢の強豪「DOCOMO TEAM DANDELION RACING」(ダンディライアン)から初参戦。昨季GP2王者で、マクラーレンの秘蔵っ子、近い将来のF1フル参戦が確実視される彼にとって、SF参戦は当初から1年限りの日本留学という見方が強かった。

コーナーによってはF1に匹敵するスピードを有し、ハイレベルなドライバーが僅差で競るSFは、確かにF1本格デビューに向けて格好の勉強の場となり得る。だが、簡単に好成績を残せるほど甘くないため、ヘタをするとキャリアと評価に傷をつけることにもなりかねない。ある意味でSF留学は、バンドーンにとってリスキーな挑戦ともいえた。

しかし、F1にもリザーブドライバーとしてアテンドしつつ、バーレーンGPでは代走も務めて本戦デビュー(10位入賞)も果たすなどの忙しい日程下、初めての日本のレース、日本のコースというなかでも、やはりこの男はモノが違ったようだ。最終戦のレース1の時点までタイトル獲得の可能性を残し、シーズン2勝、ポールポジション1回、最終ランキング4位は立派な成績である。

ワンメイクタイヤがヨコハマに変わった今季は、ベテラン有力勢の経験値がゼロに帰した部分も少なくはなく、考えようによってはマイナスに転じたところさえあった。その意味ではバンドーンら初参戦の選手には相対的に有利という部分もあったわけだが、それを差し引いても見事な結果であり、それ以上に存在感が際立った印象だった。

バンドーン自身は、今季を振りかえってこう語る。

「いい一年だったと思う。ポジティブにとらえているよ。SFには才能があって優秀なプロフェショナルドライバーがたくさんいるし、僕にはいろいろと勉強しなければならないこともあり、難しい状況ではあったわけだけれども、すごくいい経験を積むことができたと感じている」

仮に、の話にはなるが、もし来季も今季と同じ体制でSFに臨むとしたら、今度はチャンピオン獲りに本格的に挑めるくらいの手応えがあるのだろうか。

「クルマやコースをイチから学ばねばならなかった今季を経て、また同じ体制で戦えるのなら、より良いチャンスがきっとあるだろうとは思う。もちろん、僕は来年はF1に参戦するので、それは叶わないけどね」。

今季をバンドーンとともに過ごしたダンディライアンのチームスタッフにとっても、彼のようなドライバーと仕事をすることで、得難い経験がたくさんあったようだ。レース2の優勝会見で村岡潔監督がその旨を語っていたし、予選日の朝、ピット前でスタッフが交互にバンドーンと記念撮影をしていたシーンからは、彼が短い期間でチームに良く溶け込んでいたことも感じられた。

今季、バンドーンの担当を務めた杉崎公俊エンジニアに印象を聞くと、「もちろんマクラーレンで受けている教育という部分もあるでしょうけど、本人の能力として、データとドライビングをリンクさせていくのが器用だなと感じました。データがアタマに入っても、それをドライビングに転化できなければ意味がないわけですが、彼はそのへんのバランスが優秀でしたね」との話。そして杉崎エンジニアも、もし来年もバンドーンと戦えるなら王座本格狙いへの手応えを充分に感じている。

既に来季のマクラーレン・ホンダ正ドライバー昇格も正式決定し、SF最終戦鈴鹿ではもともと高かったバンドーン人気がさらに上向いた印象だった。そして卒業レースを優勝で締め、彼は日本の期待も背負う存在へと昇華し、本当の意味でF1へと巣立つことになったわけだが、バンドーン自身の日本のファンへの思いもまた、一層高まったようである。

「僕は今季、マクラーレン・ホンダのドライバーとはいえリザーブの立場だったのに、日本のファンは最初からものすごく応援してくれた。日本のF1ファン(モータースポーツファン)は世界的にも独特で、面白い帽子をつくって応援してくれたりもするんだよね。ここは、また(F1ドライバーとして)帰ってきたくなる国だ」

2017年はマクラーレン・ホンダでフェルナンド・アロンソと組んでF1を戦うバンドーン。約一年後、彼にとって第2のホームレース(鈴鹿での日本GP)に帰ってくるのが、観る側にとっても今から楽しみである。

《遠藤俊幸》

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