長いこと研究開発を“自前主義”で貫いてきたトヨタが、そのスピードアップを図るべく車を軸としたアイデアを外部から募集する『TOYOTA NEXT』を立ち上げた。内外で増えているオープンイノベーションプログラムの一環で、その取り組みに注目が集まる。
7日の説明会では冒頭、「自動運転や人工知能、Iotなどによって、クルマ社会は大きく変化。トヨタがこれまで80年間続けてきたビジネスモデルだけでは通用しない時代に入ろうとしている」(村上秀一常務役員)と今回のプロジェクトを立ち上げた背景を説明した。現在の日本社会は少子高齢化や過疎化など複雑な問題を抱えており、一社では簡単に解決できないことも多い。外部と協業することで開発スピードを速めていくという。
募集するテーマは、(1)全ての人の移動の不安を払拭する安全・安心サービス、(2)もっと快適で楽しい移動を提供するクルマの利用促進サービス、(3)オーナーのロイヤルティを高める愛車化サービス、(4)トヨタの保有するデータを活用したONE to ONE サービス、(5)全国のトヨタ販売店を通じて提供するディーラーサービス、の5つ。
応募期間は発表当日の12月7日より2017年2月20日まで。その後、書類審査や3回にわたる選考を経て、7月下旬に選定企業・団体を決定する。応募資格は企業だけでなく、大学や個人など、日本語ができれば年齢を問わない。
見逃せないのは、トヨタが用意した『アセット』だ。トヨタは2020年までに国内で販売するほぼすべての乗用車に通信端末を搭載する方針を決定済みで、開発に当たってはその車両から得る膨大なビッグデータを利用可能とする。全国約5200店舗に及ぶディーラーネットワークも提供し、トヨタがこれまで蓄積してきた資産をすべて活用できるようにすることになっている。
また、スマートフォンで鍵の開閉などを制御できるスマートキーボックスや車載ナビ「T-Connect」などを活用する際の開発費用も負担するという。これらは開発者にとっては大きな魅力となるだろう。
そんな中、説明会後に行われた質疑応答では、このプロジェクトが日本国内に限ったことに対する質問が多く出た。オープンイノベーションを目指すのであれば、海外も対象にすべきではないのかという疑問が出たのだ。そのため、「GoogleやAppleが応募してきたらどうするのか」という質問も飛びだしたほど。
これに村上氏は「条件が合えばもちろん受ける」とする一方で「日本社会の構造課題に一番早く対応するため、まずは国内で挑戦していきたい」と回答。説明会で村上氏は「外部からどんどん学ぶことが重要」としながらも、募集は日本限定にとどめることを強調する。TOYOTA NEXTによって、トヨタが育んできた創業以来の“自前主義”から脱却できるか、ひとつの試金石となりそうだ。