【インタビュー】マツダ CX-5 新型のデザインは次世代への架け橋…チーフデザイナー

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マツダ CX-5 新型チーフデザイナー諌山慎一氏
マツダ CX-5 新型チーフデザイナー諌山慎一氏 全 16 枚 拡大写真

マツダ『CX-5』がモデルチェンジし2代目になった。新世代商品群が出そろって2巡目に入り、その第1弾として登場したのがこの新型CX-5だ。新型CX-5から始まる、次のマツダデザインが目指す方向について、諌山慎一チーフデザイナーにインタビューを試みた。

◆海外から日本を見ると次の目標が見えてきた

----:本題に入る前に、諌山さんがこれまでマツダでどのようなデザインをされてきたかを教えてください。

諌山チーフデザイナー(以下諌山):主にエクステリアデザインが多く、最近ではアジアで販売している『マツダ2セダン』(デミオのセダン。日本未導入)や、その前は先代『アテンザ』をリードデザイナーとして担当しました。その間にドイツとアメリカの拠点に駐在しました。

----:海外駐在を経て、日本にお戻りになったとき、デザイナーとして感じたことはありましたか。

諌山:実は子供の頃からデザイナーになりたかったのです。格好いいクルマをデザインしたいと憧れていました。その頃の日本のカーデザインは、アメリカ車やヨーロピアンを追いかけていた時代です。いま、マツダが狙おうと思っていることは、もっと我々らしいデザインを作りたいということです。そのデザインにおいて、歴史あるプレミアムブランドと比べたときに何が足りないんだろうと考えたのですが、これは、ずっと(日本車が)追いかける側だった、ということがあると思ったのです。そこから芯の強さとしての物足りなさをなんとなく感じてしまったのです。

私は海外に出て、日本を外から見るという経験が出来ました。そのときに、日本の素晴らしいものづくり文化や、歴史の重みから来るものづくりにもっと光を当てて、その良さと自動車デザインというものをうまく融合させることで、日本らしいカーデザインの在り方を提案していく。そういうスタンスこそが、産業の活性化にもつながり、我々の存在意義みたいなものにもつながるのではないかと感じました。

◆引き算の美とCX-5

----:新型CX-5のデザインでは、シンプルでありながら味わいのあるテイストで作り込み磨き上げた、“引き算の美”に通じるような美しさを感じてほしいと述べられています。これはヨーロッパ、とくにイタリアのカロッツェリアではいかに削り取って無駄のないデザインにするかというところに通じるような印象を得たのですが、いかがでしょう。

諌山:はい、ヨーロッパでは石膏を削り取る、というイメージが強いですね。ですが、我々がいう引き算の美とは手法的な意味合いではなく、要素を減らして研ぎ澄ませていく、減らすというよりも磨き上げていくことで、ピュアなもの、純粋なものにしていきたいということです。“シンカ”という言葉も使っていますが、これは進化ではなくて“深化”。真理みたいなものに向かって、どんどん堀下げて、深いところに落ちていく。そこには究極の何かがあると思っています。そして、これは探しに行くものではなく、たぶん自分たちの中にあるもの。だからこそ深く掘り下げていけるものではないかと思っています。

その観点で、足していくデザインや、キャッチーな目新しさを求めるようなデザインの方向性ではなく、我々はもっとピュアな美しさや、どうありたいのかという方向に向かって、真理を探求していくことが、いま我々がやりたいと思っていることなのです。

----:では、そういう観点で新型CX-5を見るとどうでしょうか。

諌山:初代CX-5は魂動デザインの先頭バッターでした。そして今回の新型はデザイン的には次の世代につなぐ重要な架け橋という位置づけです。昨年の東京モーターショーで次世代の究極の姿のひとつとして『RX-VISION』を紹介しました。これからのマツダデザインは、魂動デザインの哲学は不変で守り続けながら、新たに“CAR AS ART”というテーマを掲げて、クルマのデザインをアートピースのように美しい存在へ高めていくという取り組みを進めていきます。このCX-5が新しい一歩を踏み出す最初のクルマなのです。

この取り組みによって、昔のクルマたちが持っていた、見た瞬間にあっというようなクルマを、いまの技術といまのクルマで作りたいのです。そういう思いを持って次なるステップに向かう第一歩のクルマがこのCX-5なのです。

◆ワクワクするデザインを子供たちに見せたい

----:話は変わりますが、諌山さんの好きなクルマは何ですか。

諌山:僕はスーパーカー世代なので、スーパーカーは全部好きです(笑)。あえて1台を選べといわれたらフェラーリ『288GTO』でしょうか。このクルマはきれいでありながら迫力のあるデザインです。しかし、この頃のスーパーカーに対する憧れが強く、この1台にすごく愛着があるというよりは、クルマの写真を見てすごくワクワクしていたという、その時代そのものが思い出なのです。そういう時代にもう一回、子供たちを連れて行ってあげたいという気持ちがいま強くあります。

----:そういう意味ではマツダには「RX-VISION」がありますね。

諌山:それもひとつの姿です。これまで以上にもっと大きく確実に深化させていきます。単に形が違うとかではなく、もっとデザインのレベルを商品ごとに上げていきたいと思っています。その究極のゴールがRX-VISIONのような美しいクルマになるのです。美しさに磨きをかけていきたいし、造形のセンスも磨いていきたい。ぱっと見たときの魅力という意味で、もっともっと「あぁいいね」といってもらえるような、心をときめかせる造形を極めていきたいという思いです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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